母の分の所得控除。父より子が受ける方が節税効果大となりがちな3つの理由

所得税の確定申告。
最近は税務署に出向いて手続きするよりも、
スマホやパソコンで手続きをしようと考える人が増えているようです。
現役で働いており、両親も健在である人も多いと思います。
親が働いているうちは、父が母の配偶者控除の適用を受けるのはごく普通でしたが、
親がリタイアした後は、最近の税制改正の影響もあり、現役で働く子が母の扶養控除の適用を受ける方が税務上有利なケースが多くなりました。
今回は所得税の配偶者控除と扶養控除の違いと、配偶者控除より扶養控除の適用を受ける方が有利になりがちな3つの理由を解説します。
所得が高いほど、節税効果も加速的に増える
給与、公的年金等の所得金額から差し引くことができる金額を所得控除といい、多く差し引くことができるほど、所得税の負担が軽減されます。所得税は「所得金額-所得控除」により求めた課税所得に対して、税率を乗じて求めますが、課税所得金額が高くなるほど税率が高くなります。
たとえば、
課税所得100万円から、さらに38万円の所得控除を差し引くと38万円×5%=1.9万円
課税所得300万円から、さらに38万円の所得控除を差し引くと38万円×10%=3.8万円
課税所得500万円から、さらに38万円の所得控除を差し引くと38万円×20%=7.6万円
の所得税が軽減されます。
1年だけの話なら小さい節税効果ですが、一生涯にわたると考えると、
5年分なら5倍、10年分なら10倍の節税効果となり、大きな差が出てきます。
一般に現役の子の所得金額が多く、現役を退いている父の所得金額は少ないケースが多く、この場合、所得が少ない父が配偶者控除を受けるより、所得が高い子が扶養控除を受ける方が節税効果は大きくなります。
配偶者控除は納税者本人の合計所得金額1,000万円以下の場合のみ適用、扶養控除は納税者本人の合計所得金額を問わない
2020年以降、所得税の配偶者控除と扶養控除は、対象となる配偶者、扶養親族が納税者本人と生計を一にしており、配偶者、扶養親族の合計所得金額が48万円以下である場合に適用を受けることができます(2019年までの所得税では合計所得金額38万円以下であることが要件)。
しかし、配偶者控除は納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下であることが適用要件となっていますが、扶養控除は、納税者本人の合計所得金額の要件がありません。
前述のとおり、通常は課税所得が高いほうが節税効果が高くなりますが、不動産賃貸や会社経営等により、父の合計所得金額が高い(1,000万円を超える)場合、配偶者控除の適用はないため、節税効果はゼロとなってしまいます。
一方、子が母の扶養控除の適用を受ける場合は子の合計所得金額は問われません。
配偶者控除は納税者本人の合計所得金額が900万円超になると段階的に控除が減少する
配偶者控除は納税者本人の合計所得金額が900万円を超えると段階的に控除額が少なくなり、1,000万円を超えると控除はなくなります。
一方、扶養控除の金額は納税者本人の所得金額を問わず同額です。
つまり、配偶者控除は納税者本人の合計所得金額が高くなると、控除額が少なくなるため、節税効果も小さくなりますが、扶養控除の控除額は変わらないため、納税者本人の合計所得金額が高くなるにつれて、節税効果が大きくなります。
さらに、70歳以上の同居の親の扶養控除(58万円)は別居の親の扶養控除(48万円)に比べて多いため、さらに扶養控除のほうが有利となります。
※所得金額が同じである場合、網がけ部分のほうが有利
配偶者控除も扶養控除も、生計を一にしていることが要件であるため、別居で仕送り関係もないなど、生計別であれば適用できませんが、生活資金を定期的に仕送りしている等、
生計を一にしている要件を満たしているのであれば、配偶者控除、扶養控除の選択について、親子で話し合い、家族全体で見た税負担を小さくすることを検討してみてはいかがでしょうか?
最新記事・限定情報はTwitterで配信中♪
Follow @moneylabo_fa

益山真一
ファイナンシャルアカデミー認定講師。「お金の教養スクール」で教壇にたつ。家計改善を得意とするファイナンシャルプランナー。國學院大學経済学部の非常勤講師も勤め、研修・セミナーの実績も多数。経済、景気等への感度が高く、株式投資では18ヶ月連続増益の経験もある。