親よりも先に亡くなってしまったら、親はどこに住む?

高橋禎美

2020.03.08.(日)

ある男性の話です。
男性は、神奈川県に住むサラリーマンで50代です。子供が2人(18歳、16歳)いますが10年ほど前に離婚。子供たちは前妻の実家のある大阪で前妻と暮らしています。男性は子供が不自由なく暮らせるよう養育費を渡していて、子供たちは中学から私立校に通っています。また、前妻の実家は資産家で裕福であり、前妻と子供たちは生活に困っていませんが、前妻は何かにつけて子供にかかった費用を男性に請求してくるそう。

男性の両親は、県内の田舎の実家で暮らしていました。2人とも健康ですが、老夫婦2人だけの生活が心配だったため、父が80歳になったのを機に実家は売却し、男性の家で同居をはじめて5年ほど経ちました。

ふと、こんな疑問がわいてきたそうです。「親よりも先に俺が亡くなったら、親はこの家に住み続けることができるのだろうか」

子供の財産は、親は貰えないのだろうか

もしも、いま男性が亡くなったとしたら、どうなるのかを考えてみましょう。男性の持つ財産を誰が相続するのかというと、子供2人です。妻は離婚しているのでもう他人です。男性の財産はすべて子供2人で分けるということになります。

しかし、男性は両親を呼び寄せて一緒に住んでいます。この家まで相続財産として取り上げられてしまうと、老いた両親は住処を奪われてしまいます。どうすればよいのでしょうか。

親も子供も、自分からみたらどちらも1親等です。同じ強さの血縁関係であるのに親は子供の財産を受け取る権利はないのでしょうか。実は相続は、上から下に流れていくのがルールです。今回、男性が亡くなったことによって、法定相続人になるのは2人の子供だけで、親には相続する権利がありません(子供がいない場合は親が法定相続人になります)。ですので、男性が亡くなったら家の明け渡しを要求されても不思議ではありません。子供側からすれば、親の財産を受け取る権利があります。

それでは、男性が亡くなった後、男性の両親は男性の名義である家を立ち退かなければいけないのでしょうか。これについては、男性の家に数年に渡って同居していた事実があって、普段利用している部屋や、キッチンなどの共用部分において利用することを持ち主の男性から認められていた、と言えますので、「このまま男性の家に居住していく権利」を主張していくことはできると思います。

遺言に書かれたことは、法律での定めよりも優先される

しかし、実際にこんな権利主張をしていくことには、大変な労力が必要です。老年になれば、余計にそうでしょう。しかも、前妻は細かくお金を請求してきていることも考えると、両親に向かってあれこれと無理なことを要求してくるかもしれません。両親が、このような煩わしいことに巻き込まれないようにするために、男性がまず出来ることは「男性が遺言を残しておく」ことです。

「男性の家には、男性が亡くなったとしても両親が亡くなるまで住み続ける」という旨を明記しておくようにしてください。遺言は、亡くなった人の気持ちが込められたもので、記載された内容は、法律で定められた相続の権利(法定相続分)よりも優先されます。この男性の相続の場合は、両親が存命の間は、両親が安心して暮らすことができる環境を担保することがなによりも大切になります。両親が亡くなったあとには、この家を売却するなどして子供2人で分ける、と進んでいくことでしょう。

遺言には3種類の方法がある

公正証書遺言、秘密証書遺言、自筆証書遺言の3種類の遺言の方法があります。このうち、自筆証書遺言については、H31年1月から記載ルールが改正され、取りかかりやすくなりました。今までは、遺言書の全文、日付、氏名を自署し、これに印を押すことになっていました。改正されて、相続財産の目録はパソコンなどを用いて作成したものを添付する、ということが可能になりました。預貯金や株式等の有価証券などの財産は、変動していきます。そのたびに全文を自書で書き直すのは大変骨を折るものでした。詳しくは法務省HPで確認しましょう。

参考:法務省自筆証書遺言の改正」

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高橋禎美

ファイナンシャルプランナー/ 一種証券外務員/ パーソナルカラーアドバイザー

大手アパレルメーカーを退職後、FPとして独立。個人FP相談や投資初心者の女性に向けた「はじめての投資」セミナーを開催中。お金とファッションに興味のある30代以上の女性に支持されている

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