実際の決算書を読もう「ビックカメラ」

野瀬大樹

2020.02.18.(火)

世界中のニュースは中国の新型肺炎の件で溢れています。マスクを作っている企業を中心に株価は暴騰しており、逆に中国市場がメインだった企業やインバウンドでここしばらく儲けていた企業の株価は軒並み大幅ダウンしているようです。
個人的には半年ほどすれば、この騒動は落ち着くと思っていて、ある意味「買いたかったけど高値で手が出なった銘柄」を買う機会ともとらえることはできます。

ただそうは言うものの、この手の騒動は事前に予想することは100%不可能で、やはり我々としては客観的な「数字≒決算書」を通じた分析でまず投資方針を固めたいですね。

今日はいつもと趣向を変えて特定の「勘定科目」に的を絞って決算書を見ていきたいと思います。その会社は「ビックカメラ 3048」です。

参照:ビッグカメラ「直近年度末の決算短信(2019年8月期 10月10日発表)」

業績自体は「比較的好調」

とりあえずは1ページ目を見てみましょう。

今期利益は少々伸び悩んでいるもの、来期予想では利益も回復する予定です。「絶好調!」とまでは言えないまでも安定した利益が出続けることが予想されます。

加えてキャッシュ・フローも確認してみましょう。

営業利益が落ち込んでいる本年度は当然営業キャッシュ・フローも落ち込んでいることがわかります。ただ、昨年大きく営業キャッシュ・フローが稼げたタイミングでしっかり借金の返済を行うことで金利負担を下げる努力をしており「稼げる範囲内で打てる手を打つ」というポリシーが見て取れます。

経営成績等の概況から「ビックカメラの今」を見る

ビックカメラというと皆さんもどんなビジネスかすぐにイメージが湧くと思いますが一応読んでおきましょう。概要は以下の通りです。
・家電は可もなく不可もなく
・今度はネット販売に力を入れたい
・お酒やスポーツ用品などの家電以外が延びているのでここを重点分野とする
あたりでしょうか。
PLやキャッシュ・フローから見えるように業績は悪くはないが、AmazonなどのECに押されて爆発的な伸びは期待できない…そんな現状が見て取れます。
株価はここ半年上昇傾向ですが、2020年1月31日時点でPERも13程度にとどまっており、日系平均が23000円もあることを考えても、世間はこのビックカメラという会社に少し慎重になっているようです。

そんなビックカメラですが、今日はそのビックカメラの「引当金」について勉強したいと思います。

BSの「ポイント引当金」とは

ビックカメラの貸借対照表BSを見ると「ポイント引当金」という項目が目に入ります。
引当金については以前もこのコラムで勉強しましたが、復習のためにお話すると
・何か明確な契約書が存在しなくとも
・将来支払いまたは負担の可能性が高いもの
に関しては「引当金」という名目で「負債」としてBSに載せる…という考え方です。

ポイント引当金の上にある「賞与引当金」がまさにこれですね。賞与、つまりボーナスは業績や支払日の人員数により支払金額は未確定だが、払うこと自体やその金額については概ね予測が可能なので、こういったより広い範囲の「借金」はBSに計上しようという考え方でした。
今回の「ポイント引当金」はこの引当金の考え方を「ポイント」にも当てはめたものです。

例えば皆さんがビックカメラで1000円のものを購入したとします。簡素化のために消費税ななしで考えます。この際に皆さんは10%分、つまり100円分の「ポイント」も同時に入手します。
さて、この「ポイント」はビックカメラにとってはどういった性質のものなのでしょうか?皆さんがポイントを使うケースをじっくり考えてみましょう。

翌週にまた皆さんがビックカメラに来店してまた1000円のものを購入したとします。その際に前回と異なりこの「ポイント」を利用した場合、支払いは900円で済むことになります。

商品価格1,000円-ポイント100円=実際の支払い900円

ここまでは理解できると思いますが、今回はビックカメラのBSを見ているので、ビックカメラの視点で考えてみましょうか。
ビックカメラの立場だと「本来もらえるハズの1,000円が900円しかもらえなくなった」と考えることができるので、このポイント100円というのは「将来もらえるハズのお金を100円減らす効果があるもの」となります。「本来もらえるお金を取り上げられる≒目の前からお金が消える」…と考えるとこれは広い意味で「借金」をしているのと同じ効果があるわけです。

そのため、このポイントを付与するタイミングでビックカメラのBSには負債として「ポイント引当金」が載ることになるわけです。

しかし、この「ポイント」という制度の性質がビックカメラが皆さんから借りている借金という性質を考えると、ある意味皆さんが無利息でビックカメラにお金を貸している状態とも言えます。そう考えると、ポイントは「貯め」ではなくその場その場でどんどん使っているのが正解と言えます。使ったポイントで浮いた現金を、定期預金にしておけば利息が付く…と言えばわかりやすいでしょうか。

このように会計の考え方で物事をとらえると、とるべき合理的行動も分かります。

「ポイント引当金」は発行済のポイントと同額???

そうなると、BSに載っているこのポイント引当金の金額が、ビックカメラが私たちに付与したポイント全額か?と思うのですが実際はそうではありません。
この引当金の性質を思い出してください。

・何か明確な契約書が存在しなくとも
・将来支払いまたは負担の可能性が高いもの

ここにははっきり「可能性が高いもの」とあります。
例えばポイントを付与したとしても、中には全くそのポイントのことを忘れてしまい、ポイントカードすら紛失してしまったり、また期限切れになってしまったりする人も少なくないと思います。ここはあくまで「可能性が高いもの」だけを載せて良いことになりますので、将来使用されないポイントはここに含めてはいけないのです。

では「将来使用されるポイント」と「使用されないポイント」はどうやって、ビックカメラは判断しているのでしょうか?
それは簡単です。
ビックカメラには過去の「使用されないポイント」の履歴が残っています。この過去の実績から、ビックカメラは今あるポイントのうち「将来に使用されない部分」を見積もり計算するのです。
つまりこの決算短信のBSにある、12,922百万円のポイント引当金は、2019年8月31日時点における「将来お客さんが使用する見込みのポイント残高」ということになるのです。

引当金は非常に面白く、会計を理解するうえで大切な項目ですのでまた折を見て説明をしたいと思います。

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野瀬大樹

公認会計士・税理士。大手監査法人にて会計監査 、株式公開支援、財務調査、内部統制構築業務にかかわる。会計のプロとしての視点から家計のリストラに着手し、支出を1年で50%減らす。さらに自身の労働時間を年間1000時間減らす中で、所得の増加にも成功している。公認会計士協会主催の講習の講師も務め、小中学生に会計とお金の話をわかりやすく伝える授業には定評がある。著書に「20代、お金と仕事について今こそ真剣に考えないとやばいですよ!」(クロスメディア・パブリッシング) 、「自分でできる 個人事業主のための青色申告と節税がわかる本」(ソーテック社)などがある。

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