「順張り」と「逆張り」チャンスのパターンとその理由

トウシル

2020.02.14.(金)

※この記事は2020年2月11日にトウシルサイトで公開されたものです。

二つのプレイ・スタイル

相場の世界には「順張り」と「逆張り」の二つのプレイ・スタイルが存在する。

近い過去から現在までの間に、相場が上がっている時に買い、下がっている時に売るやり方が「順張り」で、上がっている時に売って、下がっている時に買うのが「逆張り」だ。将来の相場を見通すことができれば、その見通しに対して順張りすればいいのだが、残念ながら、そのように好都合なことができる人はいない(いたら、世界の富の相当部分を一人で握っているはずだ!)。

順張りを採用するか、逆張りを採用するかは、もちろん市場参加者の自由なので、いつでも自由に変えることができる。

とはいっても、個人によって好き嫌いがあることが多い。

だが、経験的にいっても、理屈で考えるとしても、一方のパターンが常に有効であり続けることはない。

理論的には、順張り・逆張りを気にする必要はないというのが一つの結論だが、自分の得意のパターンが有効だと思う時に相場に参加すればいい、というのがもう一つの結論だ。相場への参加の仕方は一通りでなくてもいい。

ファイナンス理論の世界の理屈で考えるなら、順張りが有利か、逆張りが有利かについては、結論が出ることはない。

仮に、一方が有利だという結論が出るとすれば、過去の価格の動きを見るだけで他人よりも有利にゲームをプレイすることができることになってしまう。

株式のようなリスク資産への投資であれば、理論的にいえるのは、投資家が適切に負ったリスクに対する収益が期待できるということだけだ。

他方、外国為替のような基本的にゼロサム・ゲームの世界でリスクを取る投機の世界では、順張り・逆張りのどちらにリスクを取っても、リスクテイクへの基本的な報酬はゼロだ。

株式や債券に投資する場合のような「投資のリスク」と、FX(外国為替証拠金取引)などを含むゼロサム・ゲーム的な外国為替のリスクを取る「投機のリスク」について、両者の違いが十分に理解されていない場合があるが、お金の運用を考える場合に、これらを適切に区別することは重要だ。ただし、順張り・逆張りという観点にあっては、一方が有利だという固定的な結論が出ない点では、投資も投機も同じである。

しゃくし定規な理論の世界からアドバイスするなら、「順張りか、逆張りかを意識することに意味はない。効率の良いポートフォリオを持って、自分に最適な大きさのリスクを取っていなさい」というのが正しい答えになる。

順張り・逆張りにも「背景」がある

とはいえ、前記のようなアドバイスだけでは、理屈としては正しくても、読者にとって面白くないのではないだろうか。実は、筆者にとっても退屈だ。

とはいっても、どちらか一つが正しいという訳ではないので、順張り、逆張り双方での「チャンスのパターン」をご紹介しよう。

アンダー・リアクション後の順張り

株式投資にあっては、比較的短期(典型的には数カ月位)の銘柄選択にあって、順張り的なアプローチが有効だと報告されるケースが比較的多い。いわゆるモメンタム投資が有効だとする報告だ。

ただし、この現象は常に有効だと言えるほど安定したものではない。単純な順張りでは勝率も悪いし、投資成果は安定しない。

順張りが有効に機能する場合の背景を考えると、たとえば、企業の業績予想が上方修正された時に、当初の株価の反応が、この上方修正の情報としてのインパクトを十分に織り込んでいない場合に、ある程度上昇した株価を見てからこの銘柄を買っても更に株価が上昇する形で順張りが有効になる。

情報に対する反応の遅れ(アンダー・リアクション)が見つかった場合にこうなるし、そうなる有力な理由の一つは、上方修正自体が一回目では十分に業績の改善を織り込むことが出来ずに、再上方修正が続く可能性が過小評価されやすいからだ。同方向の修正が続きやすい傾向は、業績予想修正のトレンド効果などと呼ばれるものだが、こうした可能性を含めて、投資家が上方修正を過小評価してアンダー・リアクションが発生した場合に、「結果的に」順張りが有効に働く場合がある。

結局、順張りそのものが有効だというのではなく、背景にある情報の解釈が重要だということになる。チャートのパターンなどを研究するのではなく、「何が起こっていて、株価が上昇しているのか」に関する見極めに時間を割く方が有効だ。

オーバー・リアクション後の逆張り

アンダー・リアクション後に順張りが有効なら、オーバー・リアクション後に逆張りが有効だろうと考えるのは筋が通っている。もっとも、これらは、アンダー・リアクション、あるいはオーバー・リアクションという言葉の意味に含まれている論理なので、具体的にどんな手段があるのかが問題だ。

銘柄選択に関する逆張りのリサーチで有名なものは、各種のリターン・リバーサル現象に関するものだ。リターン・リバーサルについては、短期では1日あるいはそれ以内、長期では5年程度の期間のリターンに関わるものがあるし、リターン観測の方法にも幾つかの方法がある(たとえば、β値やマルチファクター・モデルのファクターに帰属するリターンを除いたリターンに関する逆張りを行うようなアプローチがある)。

リターン・リバーサルを利用した投資やトレーディングには、大規模な資金とデータ、分析ツール、さらにはトレーディング・システムなどが必要になることが多く、一般投資家には実現が難しいかもしれない。

個人投資家が応用可能な「逆張りが有効になるパターン」の一つは、純粋な投資判断以外の理由で生じた売り買いによる価格の「行き過ぎ」を捕まえる方法だ。

例えば、ある企業に、不祥事や工場の事故、製品の不良など、業績と評判にダメージを負う事態が発生したとしよう。投資家がこの銘柄を持つことを嫌った場合、株価の判断に関係なくこの企業の株式を売却することがある(運用会社が顧客の目を意識して保有銘柄を売却するような場合が典型的だ)。こうしたケースでは、企業の実態よりも売られた株価が戻る過程で逆張り投資家が利益を得る。

最近の例で分かりやすいのは、昨年、不祥事で上場廃止が懸念されたオリンパスだろう。上場廃止を恐れて機関投資家が同社株を処分した時に付けた株価は、当時、一般的な分析方法で、同社の事業価値(たとえば医療機器ビジネスの価値)を考えると、大幅に割安だったように思う(注:筆者は、現時点で、今後の同社の価値について「十分高いはずだ」と述べている訳ではないことに注意されたい)。

こうした、「企業価値と株価の評価に起因するのではない売買」は株価の行き過ぎをもたらすことがある。

株価が高すぎるケースでは、たとえばかつて、インデックスとの裁定取引に絡む需要で市場に流通する株数が少ない銘柄が割高に買われたようなケースがあった。

一般投資家にとって、チャンスを見つけて参加しやすいのは、企業の事故や不祥事のケースだろう。新製品発表のような効果が曖昧なニュースよりも、事故や不祥事のような悪いニュースの方にそのインパクトを割合正確に見積もることのできるチャンスが多い。企業にとってネガティブなニュースと株価の動きをよく見るといい。

順張り・逆張りに関する結論とよくある誤解

結論を先にいうと、順張りにせよ、逆張りにせよ、株価(や為替レートなど)の動きを見るだけでなく、背景にある情報を評価することが重要だということだ。価格の動きだけで背景にある情報は解釈できない。

解釈にあっては、他の投資家がいかに間違えて、アンダー・リアクションないしオーバー・リアクションに陥る可能性があるかを考えることが急所だ。

最後に、プロ・アマを含めて運用の初心者や証券マンが誤解しやすいポイントを2つ挙げておく。

一つは、「短期は順張りが有効だ」と考える先入観だ。1年以内の短期間の運用では、「ここまでに上がってきた株」を買いたくなる人が多い。その方が手っ取り早く、かつ安全に見えるようだが、これは錯覚だ。

もう一つは、「逆張りは危険だ」というものだ。逆張りも、順張りも、リスクに大差はない。株価が十分下落している場合に参加するなら、逆張りの方が相対的に安全だと言える場合も少なくない。株式投資でいえば、高すぎる株価以上に危険なものはないと心得ておくくらいでちょうどいい。

【補足】

順張り・逆張りは古くから論じられているテーマだ。しかし、多くのものが、テクニカル分析に基づく検討価値の乏しいものだ。特に短期のトレードに応用しようとする戦略は、AI(人工知能)と高速取引を相手にする市場にあっては、敵の方が、パターンの発見も取引ルールの適用も修正も早くて正確だし、言うまでもなく取引の手も速いので、有効性が乏しい。個人投資家は、判断材料を増やし、期間を長く取るゲームプランを持つべきだろう。本稿は順張り・逆張りが有効な場合のそれぞれの背後にある経済的状況について考えている。ゲームプランを作る際の参考にしてほしい。

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<この記事の著者プロフィール>

【山崎 元】
楽天証券経済研究所  客員研究員
1958年、北海道生まれ。東京大学経済学部卒業。三菱商事→野村投信→住友生命→同信託→シュローダー投信→バーラ→メリルリンチ証券→パリバ証券→山一證券→DKA→明治生命→UFJ総研と12回の転職を経て2005年より現職。

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