トランプ大統領が再選すれば、新たに米欧貿易摩擦が激化する

中原圭介

2020.02.11.(火)

米中貿易摩擦では第1段階の合意でひとまず事態の悪化は食い止めたものの(前回の記事を参照)、トランプ大統領が今年11月の大統領選で再選すれば、米中だけでなく米欧の貿易摩擦も激化する展開が予想されます。

トランプ大統領の次のターゲットは欧州

トランプ大統領はことあるごとに、EUやメルケル首相、マクロン大統領などを批判してきました。彼はEU各国が国防費の支出増を渋っていること、対米黒字の縮小に消極的なこと、5Gに絡む中国企業を排除していないことなどへの苛立ちが募って、「EUは中国より悪辣だ」と怒りを露わにしているのです。

その一方で、昨年12月に開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議では、フランスのマクロン大統領が「NATOは脳死を起こしている」と語りましたが、米中貿易交渉に関する多くの報道の陰に隠れて、米欧では安全保障と貿易の双方の分野で軋轢のマグマが溜まってきています。

米欧貿易摩擦の火種「デジタル課税」のゆくえ

実のところ、今年は米国とフランスが年初から貿易の分野で激しい戦いを始めようとしていました。これまで大きく報道では取り上げられていませんが、トランプ政権はフランスのデジタル課税への報復として、今年の1月下旬にも報復関税を発動すると表明していたのです。

ところが、両国はその1月下旬に、米国がフランスへの報復関税をしばらく見送る一方で、フランスもデジタル税の課税を今年末まで見送るという内容で合意しています。米国は大統領選、フランスは年金改革を控え、景気の下押し圧力になる争いは先送りしたいという思惑で一致をしたわけです。

OECDが2020年末までに世界各国によるデジタル課税の合意を目指しているなかで、実際に米国とフランスが納得できる解決策を示すのは困難を極めるでしょう。フランスに続いてイタリアでデジタル課税の導入が1月に決まり、英国も4月に導入する予定を公表しています。米国と欧州の火種は、これから増すばかりです。

大統領選後、貿易摩擦は激化する

そのうえ、トランプ大統領はEUとの貿易交渉を大統領選までに合意したいと述べ、再び自動車関税を取り引き材料に使おうとしています。おそらくトランプ大統領の本意では、大統領選までEUとの対立は中国と同様に先送りするつもりなのでしょうが、EUへの批判を繰り返すことで支持層へのアピールは続けていくことになるでしょう。

トランプ大統領が再選すれば、彼は中国との貿易摩擦と併行して、新たにEUとの貿易摩擦を激化させていくでしょう。米国では大統領の3選はないので、安易な妥協や先送りをする必要がなくなるからです。

そういった意味では、米大統領選後も世界経済の減速や後退に対する懸念はなかなか消えそうにありません。来年にはFRBが再び利下げに追い込まれる可能性も否定できないというわけです。

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中原圭介

経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析しており、その予測の正確さには定評がある。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、ファンも多い。 主な著書に『AI×人口減少』『これから日本で起こること』(ともに東洋経済新報社)、『ビジネスで使える 経済予測入門』『シェール革命後の世界勢力図』(ともにダイヤモンド社)、『日本の国難』『お金の神様』(講談社)などがある。東洋経済オンラインで『中原圭介の未来予想図』、マネー現代で『経済ニュースの正しい読み方』、ヤフーで『経済の視点で日本の将来を考える』を好評連載中。

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