米中貿易交渉の「第1段階の合意」によって、中国の景気は上向くのか

中原圭介

2020.01.24.(金)

米中両国は昨年12月の貿易交渉における「第1段階の合意」に関して、1月15日にホワイトハウスで合意文書に署名しました。

米中貿易交渉合意の内容は?

その合意内容とは、米国は対中制裁関税・第4弾(残りの1,600億ドル分)を見送り、実施済みの追加関税については第4弾(9月に先行して発動した1,200億ドル分)の関税率を15%から7.5%に引き下げるということです。第1弾~第3弾(2,500億ドル分)の関税率は25%の水準を維持したままにするといいます。

その一方で、中国は対米輸入(農産品や工業製品、サービスなど)を今後2年間で2,000億ドル増やすということです。輸入拡大をする規模の内訳は、工業品が777億ドル、液化天然ガスなどエネルギーが524億ドル、農畜産品が320億ドルの順になっています。それに加えて、知的財産権の保護や技術移転の強要禁止も約束させられました。

米中貿易交渉は大統領選後に激化すると考えられる理由

非常に油断ができないのは、米中貿易交渉は一時的な休戦をしたにすぎず、大統領選後に再び激化する見通しにあるということです。今後も両国は高官による協議を月1回のペースで開くといいますが、トランプ政権は「中国が合意内容を守らなければ、制裁関税を再び発動する」としているからです。

昨年の第1段階の協議では、米大統領選が翌年に迫っていることもあり、トランプ政権もある程度の妥協をして合意を急がざるをえない状況にありました。【「米中貿易摩擦は来年まで引っ張れば、中国のほうが有利になる」(2019年9月24日)参照】

トランプ大統領は「第2段階の協議をすぐに始める」と表明しているものの、11月の大統領選を前にして本格的に協議を始める可能性は低いと思われます。第1段階の合意を自らの手柄として大統領選を戦いたいトランプ大統領からすれば、激しい対立が再燃することで手柄がなくなってしまうことは避けたいでしょう。

仮にトランプ大統領が再選すれば、第2段階以降の協議では合意のハードルが上がり、中国にさらに厳しい対応で臨むことは容易に想像できます。中国もそのことは承知していて、2020年の経済運営方針を決める経済工作会議では、積極的な財政政策と緩和的な金融政策で景気の下支えを続けるという方針を示し、長期戦に備える態勢を整えているようです。

ぬぐいきれない世界経済減速の懸念

今回の合意の署名を受けて、世界の景気が上向くのではないかという楽観的な意見が聞かれますが、決して世界経済の減速懸念を大幅に和らげるものではありません。現実には、米中が相互にかける関税の多くが残っているので、今年もその悪影響が継続することに変わりがないからです。

世界の企業にとって貿易問題の不透明感が払拭されたとはいえず、製造業を中心に景況感が劇的に改善するという見通しは立てられません。今年も世界経済は減速への懸念にさいなまれる展開が予想されるというわけです。

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中原圭介

経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析しており、その予測の正確さには定評がある。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、ファンも多い。 主な著書に『AI×人口減少』『これから日本で起こること』(ともに東洋経済新報社)、『ビジネスで使える 経済予測入門』『シェール革命後の世界勢力図』(ともにダイヤモンド社)、『日本の国難』『お金の神様』(講談社)などがある。東洋経済オンラインで『中原圭介の未来予想図』、マネー現代で『経済ニュースの正しい読み方』、ヤフーで『経済の視点で日本の将来を考える』を好評連載中。

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