法律改正による自筆証書遺言のデメリットのカバー

栗本 大介

2020.01.20.(月)

2018年の1年間に全国で作成された遺言公正証書は110,471件で、この10年間で約1.41倍に増加。家庭裁判所が行った自筆証書遺言の検認件数は17,487件で、こちらも10年前から約1.35倍となっています。亡くなる人全体からみると、まだまだ少数派ではありますが、年間死亡者数が増え続ける中、相続法の改正もあって遺言書の作成を意識する人は増える傾向にあります。今回は、自分一人で気軽に作成できる自筆証書遺言についてご案内します。

遺言を作成する理由

遺言とは、死亡した人(遺言者)が生きている間に示す最終の意思表示のことです。遺言書を作成する理由は人それぞれですが、自分の財産をどのようにして欲しいかという希望とともに、亡くなった後に相続人同士が争わないで欲しいという願いも込められていることが一般的です。気持ちや想いを伝えたいだけならば、エンディングノートでも十分ですが、そこに法的な効力を生じさせるためには形式を守った遺言書の作成が欠かせません。

民法上、遺言書には「普通の方式」と「特別の方式」が定められていますが、一般的に利用される普通方式遺言には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、実際に利用が多いのは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」でしょう。

今回取り上げる自筆証書遺言は、遺言の全文を自書し、日付と名前を書いて押印するものです。特に決まった形式がないため、ネット上で検索できる見本を参考にすれば、今すぐにでも作ることが可能です。もちろん、書いたことの全てが認められるわけではないのですが、法律上意味のないことだとしても、「ああ、こんな風に考えていたんだな…」というように、相続人に対して想いを伝えることになりますから、気になったことは書いておくといいでしょう。

自筆証書遺言では曖昧な表現を避けましょう

さて、自筆証書遺言を書く際に気を付けたいのは曖昧な表現を避けることです。そもそも、自分でこっそり書いて保管する人が多いため、客観的にチェックする機能がありません。曖昧な内容は時に余計な混乱をもたらします。
例えば「きょうだい仲良く、いつものように分けてください」と書かれていたらどうでしょう?「いつものように」という表現が曖昧なため、相続人それぞれが自分の都合の良いように解釈する可能性があります。また「預貯金は二女に相続させる」と書いていた場合、この預貯金は「普通預金」だけを指しているのか「定期預金」や「外貨預金」も含むのかといった点が曖昧なため、やはり争いの原因になりかねません。いずれの場合も、相続人全員が納得すれば何も問題ないのですが、親族の中で意見が

食い違うとやっかいです。
預貯金のケースだと、金融機関名や支店名はもちろん、預金の種類や口座番号のように「誰が見ても財産が特定できる書き方」が大切だといえるでしょう。

貸金庫での保管は避けましょう

また、自筆証書遺言は、遺言の存在を見つけてもらえないことや、意図的に破棄される危険があります。誰にも知られないようにこっそりと書いて保管していると、相続発生後に見つけてもらえないかもしれません。ですから、「遺言書を書いた事実」は相続人にちゃんと伝えておくべきですし、信頼のおける友人などに託しておくことも有効かもしれません。
ちなみに、遺言書を保管場所として避けたいのが銀行の貸金庫です。遺言書を貸金庫に保管している場合、契約者である遺言者が亡くなってから貸金庫を開けるためには、所定の用紙に相続人全員の実印を押印し、印鑑証明書を提出しなければならないケースが一般的だからです。なかなか連絡のつかない相続人や、同意してくれない相続人がいると、遺言書を見ることすらできなくなってしまうことに気を付けてください。

自筆証書遺言のデメリットをカバーする法律改正

こうした心配を防ぐためには公正証書遺言が適しています。公証人という専門家が作成してくれる上に、「原本」は公証役場に保管されますから、偽造や変造、紛失の恐れがありません。ただし、証人2人を連れて公証役場で作成する必要があるほか、一定の費用が掛かることもあり、敬遠する人が少なくありません。

そこで注目したいのが、今回の法律改正です。
まず「自筆証書遺言」は、自分が思い立った時にすぐに書ける手軽さがある一方、遺言者が遺言の全文、日付、氏名等を自書し、押印しなければ、法的な効力が生じません。ただ、法律改正によって2019年1月13日以降に作成する遺言からは要件が緩和され、遺言のうち「財産目録」の部分についてはパソコン等で作成するなど自書以外でもよいことになっています。また、2020年7月10日からは自筆証書遺言を法務局で保管する制度が始まる予定です。自筆証書遺言のデメリットである紛失や偽造のリスクがなくなるだけでなく、法務局に保管された自筆証書遺言は検認手続きが不要となるため、自筆証書遺言のメリットが大きくなるのです。

ちなみに、遺言書は、何度でも書き直すことができますので、環境や状況が変わったり、気持ちが変わったりした時には書き直すことも忘れないようにしましょう。

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栗本 大介

株式会社エフピーオアシス代表取締役
CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、金融知力普及協会認定シニアインストラクター
1971年滋賀県生まれ。立命館大学卒業後、個人的な興味から、大手資格スクール在職中の1995年にFP資格を取得。生命保険会社を経て2001年にFPとして独立。
現在は、共済団体や労働組合、金融機関、大学等を中心に年間100回を超える講演を行うほか、コミュニケーション手法を取り入れた相談実務研修の講師も行っている。18年に及ぶFP講座の講師経験を生かした資格取得のための受験対策講座にも定評があり、「国民総FP化」を目指し、FP知識の普及、啓蒙活動に力を入れている。
また、専門家プロファイルの相談員やメールマガジンの配信を行うほか、テレビやラジオでも活躍中。FPの学習法を中心とした書籍も4冊出版。日経マネーDIGITAL等の専門誌・業界紙でのコラム執筆多数。2010年「金融知識普及功績者」として金融庁と日本銀行から表彰を受けている。
http://fpoasis.jp/

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