年金法改正でパートの社会保険適用拡大か? 素朴な疑問にお答えします

浜田裕也

2019.12.07.(土)

2020年の通常国会で年金改革関連法案が提出される予定です。その中のひとつに、パートで働く人たちのより多くが社会保険に加入できるように要件を緩和しよう、というものがあります。

皆さんの中にも、今後の法改正で社会保険に加入することになる人がいるかもしせんね。
前回の法改正は2016年10月。その前後で筆者は色々な質問を受けることになりました。そこで今回は、社会保険に加入することになった2016年当時の皆さんが抱いた素朴な疑問についてお話しをしようと思います。

パートでも社会保険に加入することになる要件とは?

短時間労働者、いわゆるパートなどで働く人にも社会保険に加入してもらって手厚い保障を受けてもらおう、という考えのもと2016年10月に法改正がありました。
次の①から⑤の要件をすべて満たした場合、パートの人でも社会保険に加入することになりました。

要件⑤をみると、従業員数が501人以上の会社とあります。
501人以上の会社とは、かなり大きな会社ですね。
ざっくりしたイメージでいうと、大手のスーパーや飲食店などでパートで働いている人も要件を満たせば社会保険に加入することになった、ということです。

しかし、この⑤の人数要件が変更になる可能性が出てきました。
2022年10月に101人以上、2024年10月に51人以上と段階的に人数要件の緩和を検討していくようです。
仮に51人以上の会社まで対象を拡大すると、中小企業でパートとして働いている多くの人も社会保険に加入することになりそうです。その数は65万人になるとの試算もあります。

社会保険に加入することになった人が抱いた素朴な疑問あれこれ

2016年10月に法改正がありましたが、対象となる職場ではその数カ月前から動きがありました。
それは何かというと、職場から「あなたも今度から社会保険に加入することになりますよ」と言われる人が多くいたということです。

そのため、法改正の数カ月前から筆者は色々なご質問を受けることになりました。
特に多かったのは、社会保険に加入することのメリットとデメリットです。
筆者としても「メリットとデメリットの質問は増えるだろうなぁ」とは思っていたのですが、それ以外にも素朴な疑問を投げかけられることが多くありました。
中には「なるほど。それは当たり前のことだと思っていたので気がつかなかった」というような質問もありました。
皆様の中にも、今後の法改正で社会保険に加入することになった場合、色々な疑問を抱くことがあるかもしれませんね。
そこで、メリットデメリットは別の機会でご紹介するとして、今回はそれ以外で多かった素朴な疑問をいくつかご紹介したいと思います。

片方だけ加入することはできないのか?

加入要件を満たした場合、厚生年金保険に加入すると同時に健康保険にも加入することになります。
そうなると、厚生年金保険料と健康保険料をそれぞれ支払うことになるので、手取りが減ってしまいます。
支出を少しでも抑えようと考えてか「厚生年金保険だけ加入して、健康保険は夫の会社の方に入れないのか? 」という質問をされる人がいました。

結論から言うと、それはダメです。
厚生年金保険と健康保険はセットで加入しなければならないからです。

加入要件を満たしたまま、社会保険の加入を拒否して働くことはできないのか?

結論から言うと、これもダメです。
要件を満たした人は自分で加入するしないを選ぶことはできず、必ず加入しなければなりません。
なお、会社は要件を満たしている人を社会保険に加入させる義務があります。
この義務を果たさないと会社は罰せられてしまいます。
ですので、要件を満たしているのに「私は社会保険に入りたくないので加入の手続きはしなくてよいです」のようなことを職場に相談するのはあまり好ましくないでしょう。
会社としても困ってしまいますからね。

何歳まで加入することになるのか?

2019年度の法律では、原則として、厚生年金保険は最長70歳まで、健康保険は最長75歳になるまで加入することになっています。

つまり、給料から保険料が天引きされるのは、厚生年金保険では70歳まで、健康保険では75歳になるまでということです。
75歳以降は後期高齢者医療保険に加入することになり、その保険料は原則公的年金から天引きされます。

今ある職場で社会保険に加入しないまま働くためにはどうすればよいのか?

結論から言うと、加入要件を満たさないように労働条件を変更する必要があります。
最も手っ取り早い方法は、働く時間や日数を減らし、週20時間未満に抑えてしまうということでしょうか。

ただし、労働条件は本人と会社との約束事です。一方的に変えることはできませんから、あらかじめ職場の上司に相談することになります。
また、働く時間や日数を減らすということは、シフトの調整で周囲に影響を与えてしまったり、収入が減ってしまったりするので注意が必要です。

まとめ

相談を受けていて気付いたことは、素朴な疑問の背景には「できれば社会保険に加入したくない」という気持ちがあるのではないか、ということでした。

社会保険に加入すると保険料が天引きされるので手取りは減ってしまいます。
そのため「加入したくない」という気持ちになってしまうのも分かります。

しかし、社会保険に加入しないようにするためには、働く日数や時間を減らす、または、社会保険に加入しなくてもよい小さな会社に移る(職場を変える)ということになります。
これはこれで大変そうですね。
そのため、前回の2016年10月の法改正では、なんだかんだ言っても今ある職場で社会保険に加入して働き続ける人が多かったように思われます。

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浜田裕也

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー。社会保険労務士会の業務委託で年金相談の実務にも携わるようになり、その相談件数は年間1,000件を超える。複雑な年金制度の解説や具体的な申請の仕方のアドバイスには定評がある。著書に「日本でいちばん簡単な年金の本」(洋泉社 第3章監修)、「転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話」(SB新書 監修)がある。

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