被災した後にかかった医療費はどうなるの?

毎年、12月から3月にかけて流行するインフルエンザが、今年は異例の早さで患者を増やしているようです。そして、10月に発生した台風第19号の被災地では、いまだ避難所での生活が続く被災者の方々もいらっしゃいます。
狭い避難所での生活は、集団生活で疲労もたまりやすく、手洗いが十分できないなど衛生状態が悪くなりがち。インフルエンザ以外にも肺炎やノロウイルスといった感染症、エコノミークラス症候群などの健康被害が起こりやすくなっています。また、高齢者など、持病を抱えている方も少なくないでしょう。
そこで今回は、災害時の医療費についてまとめてみました。
災害で被災された方の医療費はかからない!
通常、医療機関などを受診する場合、窓口で健康保険証を提示して、診察や治療を受けた後、1~3割の自己負担分(一部負担金)を支払いますよね?
それが、先日の台風第19号のように、「災害救助法」が適用になった地域にお住まいで被災した方が、診療を受けた場合、窓口での支払いは不要になります。
法律上は、「猶予・減免」という表現がとられていますが、実質的に無料だと考えて差支えありません。ただ、最終的な判断は、加入先の医療保険に任せられていて、若干対応が異なります。随時更新される厚生労働省のHPで確認することをお勧めします。
対象となるのは、診療時の一部負担金のほか、訪問看護や調剤費です。要介護の方が公的介護保険のサービスを利用した際の利用料なども含まれます。
なお、災害救助法とは、1946年の南海地震を機に、1947年に制定された法律で、国や自治体が災害にどのように対応するかを定めています。災害関連の法律の中でも、比較的よく耳にされるのではないでしょうか。
被災地であっても全員が対象となるわけではない!
台風第19号は、被害が広範囲にわたったことも特徴的ですが、被災地となった地域にお住まいのすべての方が対象となるわけではありません。次の1~5のいずれかに該当する方で、その旨を申告すればOKです。
また、被災したため、他府県に移動(転出)された方が、その地域の医療機関で受けた治療等も対象になります。
1.住家の全半壊、全半焼、床上浸水又はこれに準ずる被災をした
※罹災証明書の提示は必要なく、窓口での口頭申告で構いません。
2.主たる生計維持者が死亡し又は重篤な傷病を負った
3.主たる生計維持者の行方が不明である
4.主たる生計維持者が事業を廃止し、又は休止した
5.主たる生計維持者が失職し、現在収入がない
※出所:厚生労働省HP
保険証の提示は不要!
被災された方の中には、着の身着のままで、保険証を紛失あるいは自宅に残して避難しているケースもあります。
これらの事情を考慮して、保険証がなくても診察などを受けられますが、その際は、伝えるべき情報は以下の4つです。
・氏名
・生年月日
・連絡先(電話番号等)
・加入している医療保険者が分かる情報(※)
※被用者保険の場合は事業所名、国民健康保険の場合は住所または組合名、後期高齢者医療制度の場合は住所
受診した医療機関では、これらの情報を元に、請求すべき保険者(審査支払機関)を調べて、患者さんの負担分を含めて、診療に要する費用の全額を直接請求することになっています。
無料の適用が受けられるのはいつまで?
今のところ、免除の措置の適用は、令和2年1月末までです。
ただし、これまでも、災害の復興の状況に応じて、適用期限の延長が行われてきましたので、変更になる可能性もあります。
また、医療機関等に対して、厚生労働省から、このような特別措置についての通知が送られて周知されているはずですが、内容を知らずに患者さんに医療費を請求しているケースもあったようです。
自然災害が多い日本に住む限り、いつ、自分も被災することになるかはわかりません。イザというときのために自分や家族の命を守る情報は知っておきましょう。
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黒田尚子
ファイナンシャル・プランナー/消費生活専門相談員資格/乳がん体験者コーディネーター。1998年FPとして独立。2009年末に乳がん告知を受け、「がんとお金の本」(Bkc)を上梓。自らの体験から、がんなど病気に対するおカネ・ココロ・カラダの備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力している。著書に「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実」(セールス手帖社)など多数。黒田尚子FP事務所 http://www.naoko-kuroda.com/