成年後見人について知っておきたいこと

栗本 大介

2018.09.14.(金)

加齢に伴う判断能力の衰えは、多くの人にとって避けがたい現実です。

厚生労働省が2015年1月に公表した全国の認知症患者数は、2012年時点で約462万人となっており、今後も増加が予想されています。判断能力を失った人の権利を守るために成年後見制度があるものの、実際の選任の際には注意が必要です。

今回のコラムでは、成年後見制度について最低限知っておきたい基礎知識を整理しましょう。

成年後見人とは

日本では20歳未満を未成年と呼び、十分な判断能力が無いとして、親をはじめとした保護者がその権利を守ることになっています。

成人した後は、自分の行動には自分で責任を負うようになりますが、一方で、70歳、80歳、90歳…と歳を重ねていくと、認知症等によって十分な判断能力が無くなるケースもでてきます。

そこで、こうした成年を守る制度として成年後見制度があり、保護者としての「後見人 」をつけることができるようになっています。文字通り、判断能力を欠いた本人を「後ろから見守る人」です。

法定後見と任意後見

実際に判断能力を欠く状態となった際、誰が保護者である後見人になるのでしょうか?これを理解するために、まずは「法定後見制度」と「任意後見制度」を知る必要があります。

法定後見制度は、精神上の障害等により本人の判断能力が不十分となった場合に、親族などの一定の申立権者が、後見人の選任を家庭裁判所に申し立てる制度です。判断能力の程度に応じて、後見、保佐、補助の3種類があり、それぞれ後見人、保佐人、補助人が選任されます。

つまり、法定後見制度のポイントは、
①本人はすでに判断能力が不十分な状態である
②後見人は家庭裁判所が決める
という点です。「家族の私が後見人になる」と思っていても、家庭裁判所が認めなければ後見人にはなれないのです。

[1] 民法の改正により、2022年4月1日からは成人年齢が18歳となる
[2] 成年後見制度には、判断能力の程度などに応じて、「後見」のほかに「保佐」と「補助」の制度が定められており、それぞれ保佐人、補助人がつく

一方の任意後見制度は、将来自分の判断能力が不十分になった時に備えて、あらかじめ契約によって代理人となる人(=任意後見人)を選んでおく制度です。

後見人としての効力が発するのは、家庭裁判所によって任意後見監督人が選任された後となります。

こちらは、
①本人が元気なうちに将来に備えて後見人を決めておく
②後見人になる人を自由に選べる
という制度です。なお、任意後見契約は必ず公正証書で締結する必要があり、後見人をチェックするための「後見監督人」は、家庭裁判所が選任します。

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相続の際の後見人選任には注意が必要

では、実際に後見人を立てるケースはどのくらいあるのでしょうか?

最高裁判所事務総局家庭局がまとめた、「成年後見関係事件の概況」によると、2016年の成年後見の申し立て件数は35,737件。これは前年比4.3%の増加です。

ちなみに、後見人の申し立て動機として一番多いのは「預貯金等の管理・解約」です。動機は1つとは限らないとはいえ、申し立て全体の約82%を占めているため、「財産管理」がきっかけになっている様子がうかがえます。

また、相続が発生した時は、後見人の申し立てが不可欠となります。認知症や知的障害、精神障害等により意思判断能力のない相続人は、そのままの状態では遺産分割協議に参加できないからです。

その時に困るのは、成年後見人の選任には時間がかかるという現実です。実際の審理期間をみますと、1ヶ月以内が47.2%で一番多いものの、1ヶ月超2ヶ月以内が31.7%で、3ヶ月超のケースも9.7%あります。

全体の1.6%は、成年後見人選任までに6ヶ月超の期間を要しているのです。

ちなみに、日常生活のサポートという点で、子を中心とした親族が後見人になるケースがありますが、相続の際には後見人として行動できません。

例えば、父が死亡し、認知症の母とその後見人である子が相続人の場合、母と子が利益相反の関係となるからです。

この場合、相続手続きのための「特別代理人」の選任が別途必要となります。

成年後見制度の利用者数は累計210,290人で、前年から3.3%の増加となっているものの、認知症患者数から見るとまだまだ少ないと言えそうです。

いざという時に困らないように、まずは制度の概要をしっかり押さえておきましょう。

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栗本 大介

株式会社エフピーオアシス代表取締役
CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、金融知力普及協会認定シニアインストラクター
1971年滋賀県生まれ。立命館大学卒業後、個人的な興味から、大手資格スクール在職中の1995年にFP資格を取得。生命保険会社を経て2001年にFPとして独立。
現在は、共済団体や労働組合、金融機関、大学等を中心に年間100回を超える講演を行うほか、コミュニケーション手法を取り入れた相談実務研修の講師も行っている。18年に及ぶFP講座の講師経験を生かした資格取得のための受験対策講座にも定評があり、「国民総FP化」を目指し、FP知識の普及、啓蒙活動に力を入れている。
また、専門家プロファイルの相談員やメールマガジンの配信を行うほか、テレビやラジオでも活躍中。FPの学習法を中心とした書籍も4冊出版。日経マネーDIGITAL等の専門誌・業界紙でのコラム執筆多数。2010年「金融知識普及功績者」として金融庁と日本銀行から表彰を受けている。
http://fpoasis.jp/

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