高齢期の医療費準備はハイブリッドで

栗本 大介

2018.07.11.(水)

加齢とともに負担が多くなりがちな医療費。

厚生労働省が発表した2016年度の概算医療費は41.3兆円と、14年ぶりに前年比でマイナスに転じた一方で、75歳以上の医療費は、前年比1.2%増となっています。

公的医療保険制度が充実している日本ですが、高齢者を中心に自己負担割合は増える傾向にあります。個人差の大きい医療費ですが、目安としてどのくらいの準備を考えておくべきなのか、その概算をお伝えします。

医療費の自己負担は増える傾向

75歳以上の人の1人当たり医療費は93万円で、75歳未満の21.8万円と比較すると4倍以上の水準です。将来を考えたとき、75歳以降に医療費負担は大きくなることを想定しておく必要があるといえます。

公的医療保険には高額療養費制度があるため、短期間に集中して医療費がかかった場合には、自己負担を大きく軽減できます。またこの制度は世帯内の自己負担額を合算することも可能なため、まずはこうした公的医療保険制度の理解がとても大切となります。

ただし、高齢者人口の増加が見込まれる今後は、自己負担割合の増加や、高額療養費制度によってカバーされる範囲が縮小される可能性も考えておく必要がありそうです。

実際、健康保険における70歳以上の方の自己負担割合は、平成26年4月以降に70歳となる方から、それまでの1割負担が2割負担に引き上げられました。

これは、病院で1万円の医療費がかかった場合の自己負担額が、1,000円から2,000円になったことを意味しますから、金額は少ないとはいえ「2倍」です。なお、財務大臣の諮問機関である「財政制度等審議会」においては、現在1割負担となっている75歳以上の後期高齢者医療制度の自己負担割合を2割に引き上げることが提案されています。

医療費に備える手段

医療費に備える手段としてわかりやすいのは、民間保険会社や共済制度が提供する医療保障への加入です。終身タイプの医療保障に加入していれば、入院時や手術時の保障が一生続くため安心感もあるでしょう。ただし、医療保障の商品には「1入院あたりの保障限度日数」が定められている点は注意が必要です。

例えば「1入院あたりの保障限度日数が60日」の医療保障商品の場合、60日までの入院であれば、1日当たりに定めた給付金を受けることができますが、61日目以降は保障されません。一生涯の保障といっても、入院している限りずっと保障されるわけではないのです。また、多くの商品では入院を伴わない通院治療などは支払い対象外です。入院日数は短期化の傾向がありますから、この点でも従来型の医療保障ではカバーしきれない面が出る可能性があるのです。

いくら準備しておけば安心なのか?

このように、医療保障商品だけですべての医療費を賄うことは難しいため、高齢期の医療費については、貯蓄等による準備も併せて考える必要があります。ではいくらあれば大丈夫なのでしょう。ここでは少し極端に、前述の1人あたり医療費93万円が「すべて医療保障商品の給付対象外だった場合」を考えてみましょう。

将来、自己負担割合が引き上げられる可能性はありますが、とりあえずは現在の基準である1割で考えると、単純計算した自己負担額は93,000円です。75歳時点の平均余命は、男性が12.14年で女性が15.76年なので、15年間分を考えるとして、総額は1,395,000円。

つまり、75歳時点で準備しておくべき医療費の1つの目安は140万円といえそうです。

この数字はあくまでも平均ですから、ご自身の状況に応じて医療費が平均より大きく膨らむ可能性は考慮すべきでしょう。

ただし、実際には入院等の費用のいくらかは医療保障商品の準備で賄える可能性があります。大切なのは、公的医療保険で賄えない高齢期の医療費について「医療保障商品と現金のどちらで準備するべきか?」という二者択一論ではないということです。

日常的な医療費を賄えるだけの金融資産を用意した上で、長期の入院や手術などにかかる医療費については医療保障商品で補完する体制をとっておく。このようなハイブリッド型の準備を意識が大切です。

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栗本 大介

株式会社エフピーオアシス代表取締役
CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、金融知力普及協会認定シニアインストラクター
1971年滋賀県生まれ。立命館大学卒業後、個人的な興味から、大手資格スクール在職中の1995年にFP資格を取得。生命保険会社を経て2001年にFPとして独立。
現在は、共済団体や労働組合、金融機関、大学等を中心に年間100回を超える講演を行うほか、コミュニケーション手法を取り入れた相談実務研修の講師も行っている。18年に及ぶFP講座の講師経験を生かした資格取得のための受験対策講座にも定評があり、「国民総FP化」を目指し、FP知識の普及、啓蒙活動に力を入れている。
また、専門家プロファイルの相談員やメールマガジンの配信を行うほか、テレビやラジオでも活躍中。FPの学習法を中心とした書籍も4冊出版。日経マネーDIGITAL等の専門誌・業界紙でのコラム執筆多数。2010年「金融知識普及功績者」として金融庁と日本銀行から表彰を受けている。
http://fpoasis.jp/

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