相続税だけではない、全員が必要となる相続後の手続き

栗本 大介

2018.05.12.(土)

相続と聞くと、「自分の家にはそれほど資産が無いから関係ない話だ」と思われている方が少なくありません。ただ、実際には亡くなった方名義の財産が多いか少ないかに関係なく、相続の際には様々な手続きが必要になります。終活という言葉は広がっているものの、親族が亡くなった際に必要となる手続きについて、家族間で情報を共有している世帯はまだまだ少数です。無用なトラブルやストレスを避けるために知っておきたい相続発生後の手続きの概要について確認しましょう。

相続税がかかるのは全体の8.1%

国税庁の発表によると、2016年(平成28年)の年間死亡者数1,307,748人に対して、相続税の申告書の提出に係る被相続人数は105,880人。つまり、相続税の納税が必要となる方は全体の8.1%に過ぎません。

そもそも相続税は、亡くなった人の財産評価額が一定金額を超えた場合にだけ課せられます。この一定金額を基礎控除といい、現在は「3,000万円+600万円×法定相続人数」となっています。仮に夫婦と子ども2人の4人家族で夫が亡くなった場合、法定相続人は3人ですから、「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」が基礎控除額です。

例えば、自宅不動産の評価額や預貯金などの金融資産残高、ゴルフ会員権や車などのその他の財産をすべて合計した財産額が4,500万円だとすると、相続税はかかりませんし、申告書の提出も必要ありません。さらに、財産評価額が基礎控除額を超えたとしても、配偶者が引き継いだ財産には大幅な軽減措置があるほか、要件を満たした自宅等の土地評価額は少なく計算できる特例があるため、多くの人は相続税とは無縁なのです。

相続後の手続きが必要な人は100%

しかし、相続の際に重要なのは相続税だけではありません。相続税の納税が必要となる人が全体の8.1%なのに対して、亡くなった方名義の財産を相続人が引き継ぐための手続きは全員、つまり100%の人に必要です。そして、この手続きに手間取ることで大きなストレスを抱えたり、親族間のトラブルに発展したりするケースが少なくないのです。相続発生時に必要となる主な手続きには次のようなものがあります。

   1) 銀行や証券会社など、金融機関の口座の名義変更または解約
   2) 保険金や共済金の請求
   3) 自宅不動産の名義変更(火災保険、火災共済などの契約変更も)
   4) 運転免許証の返還と、車の名義変更(自動車保険、自動車共済などの契約変更も)
   5) 各種クレジットカードや会員証の返還、それに付随している保険等の請求
   6) 老齢年金の停止や遺族年金の請求など
   7) 健康保険などへの給付金の申請と保険証の返還など

これらはあくまでも一例ですが、手続きを進めるための書類には「相続人全員の署名と実印による押印」が必要となることがほとんどです。また、相続人全員が揃った署名であることを証明するためには、「被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの連続した戸籍」が必要となるため、戸籍の収集も欠かせません。

戸籍は、1人に1つではなく、婚姻や本籍地の変更、法律の改正によって新たに作られるため、1人の戸籍が何通にも渡ることが一般的です。戸籍の取得は、その当時の本籍地の市区町村役場に対する申請が必要なので、すべてを揃える作業には相応の時間と手間がかかります。

なお、2017年(平成29年)5月29日から全国の法務局(登記所)において「法定相続情報証明制度」の取り扱いが始まりました。これは、登記所(法務局)に戸籍謄本等の一式と、相続関係図(法定相続情報一覧図)を提出すれば、登記官がその相続関係図に認証文を付した写しを無料で交付してくれるものです。この制度を利用することで、相続手続きを行う各窓口で戸籍内容をチェックするプロセスが省けるようになります。最初に戸籍を収集する作業は必要なものの、手続きの際の負担が軽減されますので、ぜひ覚えておいてください

コミュニケーションを取り、財産一覧表を作る

相続発生時には、全員が何らかの手続きを必要とします。これらの手続きをスムーズに進めるために大切なことは、「相続人となる人同士の連絡先を確認しておくこと」と「財産の一覧表を作成しておくこと」でしょう。

自分の親族の中で最近全く連絡を取っていない人があるならば、まずは年賀状や暑中見舞い等で近況を確認しておくと、いざという時に連絡が取りやすくなります。また、財産の一覧表があれば、手続きのために行くべき窓口がわかり、「他にも口座を持っていた金融機関があるのではないか?」という疑問を払拭できます。

これを機会に、相続は誰にでも関係のある話であることを認識し、ご自身やご家族の財産の整理とともに、家族間でのコミュニケーションのあり方を見直してみるのはいかがでしょうか。

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栗本 大介

株式会社エフピーオアシス代表取締役
CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、金融知力普及協会認定シニアインストラクター
1971年滋賀県生まれ。立命館大学卒業後、個人的な興味から、大手資格スクール在職中の1995年にFP資格を取得。生命保険会社を経て2001年にFPとして独立。
現在は、共済団体や労働組合、金融機関、大学等を中心に年間100回を超える講演を行うほか、コミュニケーション手法を取り入れた相談実務研修の講師も行っている。18年に及ぶFP講座の講師経験を生かした資格取得のための受験対策講座にも定評があり、「国民総FP化」を目指し、FP知識の普及、啓蒙活動に力を入れている。
また、専門家プロファイルの相談員やメールマガジンの配信を行うほか、テレビやラジオでも活躍中。FPの学習法を中心とした書籍も4冊出版。日経マネーDIGITAL等の専門誌・業界紙でのコラム執筆多数。2010年「金融知識普及功績者」として金融庁と日本銀行から表彰を受けている。
http://fpoasis.jp/

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