判断能力が低下した老親の財産管理

栗本 大介

2018.04.12.(木)

厚生労働省が発表した2016年の日本人の平均寿命は女性87.14歳、男性80.98歳。個人差が大きいものの、およそ100年前の日本人の平均寿命が男女ともに44歳ぐらいだった事実から考えると、生まれてから亡くなるまでの期間は2倍近くになっているわけです。その中で課題となっているのが、体力の衰えとともに進む判断能力の衰え。特に財産管理をいかに行うかは、子世代にとっても避けて通れない問題です。

高齢者の財産管理の必要性

高齢になると、日常生活費の引き出しや買い物、家電製品の購入、医療費の支払いなど、お金の管理そのものを煩わしく感じる方は少なくありません。また、本人や周りの家族が気付かないうちに認知症が発症し、必要のない買い物を繰り返すことや、訪問販売のセールスをそのまま受け入れて高額な契約をしてしまうケースも発生します。

高齢化への対応を追求する学問であるジェロントロジー(Gerontology)が注目されていますが、思いがけない財産の減少や契約を巡るトラブル等により、本人の生活はもちろん、その後の介護や相続を通じて子世代の生活にも大きな影響を及ぼす可能性があるため、財産を守るための対策を早い段階で考えておくことが重要といえるでしょう。

財産管理の具体的な手段

高齢の親の財産管理や日常生活をサポートする具体的な手段として、今回は財産管理委任契約と日常生活自立支援事業をご紹介します。

財産管理委任契約とは、自分の財産管理や生活上の事務の全部または一部について、代理権を与える人を選び、具体的な管理内容を決めて委任する民法上の委任契約の一種です。当事者間の合意のみで効力が生じるため、内容は自由に定めることができ、その内容を記載した財産管理委任契約書を作成します。

成年後見制度とは違い、判断能力の減退がなくても利用できるため、本人が希望する時期からすぐに管理を始めることができるのが特徴です。

財産を管理する受任者が家族の場合は無償であることが多いものの、弁護士や司法書士、行政書士といった専門職に依頼した場合は、月額1~5万円程度の報酬の支払いが必要となります。もちろん、親族が受任者となった場合でも、当事者間の合意によって報酬を定めることは問題ありません。家族間で話し合ったうえで、負担の程度に応じた報酬を受け取る方が、親からも頼みやすくなるかもしれません。なお、金融機関等では、こうした委任契約を元にした窓口対応が難しく、会社独自の委任状等への署名・押印を求められるケースもあります。ご利用されている金融機関等に事前に相談するとよいでしょう。

一方の日常生活自立支援事業とは、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち、判断能力が不十分な方が地域において自立した生活が送れるよう、利用者との契約に基づき、日常的な金銭管理や福祉サービスの利用援助等を行うものです。

実施主体は各都道府県・指定都市社会福祉協議会で、サービスを利用するためには、社会福祉協議会との契約が必要です。利用料金は実施主体ごとに異なりますが、訪問1回当たりの平均利用料は1,200円程度となっています。成年後見制度の利用までは必要ないけれど、比較的安い費用で、日常生活にかかるサポートを受けたい方には向いています。

財産管理における注意点

こうした制度の利用に際し、大切になるのは現在の財産状況の正しい把握と、親の希望の確認です。また、財産管理を託された人による財産の横領などが新たな問題となっています。財産管理を任されている親族に対して不審な点があると、相続の際に揉める原因ともなりかねません。また、成年後見制度も含め、専門職による財産の私的流用も多発しているため、契約内容や管理状況についての正確な記録はもちろん、周りからのチェック体制を確立しておくことが欠かせません。

最後に、たとえ親族であっても、自分の財産管理を人に委ねることに対して抵抗のある方は少なくありません。ただ、本人の判断能力が衰えてしまってからでは、取り得るべき対応が限られてしまいます。身近で発生した事例や、ニュースなどをきっかけに家族間で話題に上げ、早い段階で今後の方針を決めることが望ましいという意識の共有が大切なのです。

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栗本 大介

株式会社エフピーオアシス代表取締役
CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、金融知力普及協会認定シニアインストラクター
1971年滋賀県生まれ。立命館大学卒業後、個人的な興味から、大手資格スクール在職中の1995年にFP資格を取得。生命保険会社を経て2001年にFPとして独立。
現在は、共済団体や労働組合、金融機関、大学等を中心に年間100回を超える講演を行うほか、コミュニケーション手法を取り入れた相談実務研修の講師も行っている。18年に及ぶFP講座の講師経験を生かした資格取得のための受験対策講座にも定評があり、「国民総FP化」を目指し、FP知識の普及、啓蒙活動に力を入れている。
また、専門家プロファイルの相談員やメールマガジンの配信を行うほか、テレビやラジオでも活躍中。FPの学習法を中心とした書籍も4冊出版。日経マネーDIGITAL等の専門誌・業界紙でのコラム執筆多数。2010年「金融知識普及功績者」として金融庁と日本銀行から表彰を受けている。
http://fpoasis.jp/

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