介護は突然やってくる!介護破綻しないために知っておきたいお金の知識

山本麗子

2019.10.22.(火)

「老後のお金が心配」という相談者は53歳の会社員。相談者が目下、心配しているのは親の介護の負担についてのようです。介護破綻に陥らないためにどんな対策があるのでしょうか。創立17年のお金の学校「ファイナンシャルアカデミー」の講師山本麗子先生が定年前後の設計方法をわかりやすく指南します。

読者代表:吉田正史さん(仮名・53歳)
新卒で入った中小企業で営業として勤続31年。高校生の長女と中学生の長男を育てる2児の父だ。年収は650万円で、マイホームは35歳の時に35年ローンで購入したが、目下の不安は退職後のお金のやりくり。

親の財産を把握していますか?していないなら危険です

吉田さん:今心配なのは、親の介護なんですよ。前回の「老後破綻の6パターン」の表の中に、病気・介護破綻とあったのが気になって。やはりお金がかかるものなんでしょうか。

山本先生:そうですね、介護や医療に関しては、どこまで望むかによってかかるお金も千差万別です。ちなみに、ご両親ともにご健在ですか。

吉田さん:はい、気になりつつ、何もしていないんですが。

山本先生:介護状態になる前だからやっておきたいことはたくさんあります。介護が始まったらノンストップなので。

吉田さん:例えば、どんなことでしょうか

山本先生:一番大切なのは、親の経済状況を把握しておくことです。

吉田さん:ええっ、いくら親子でも「いくら貯めてる?」なんて聞けないですよ。

山本先生:そうですね。でも、親にお金があるとわかるだけでも、安心できますよね。なければ、どうするか考えなければならないですし。

吉田さん:それは、まぁ……。でも聞きにくいなあ。

山本先生:「最近、友人の親が突然倒れて介護することになったんだけど、資産状況がわからなくて困ったといってたんだよね。うちは、なにか備えているの?」など、ソフトに切り出してみるといいかもしれません。

吉田さん:うーん、しかしうちは兄もいるし…。

山本先生:ではお兄さんと二人そろって、ご両親に相談してはどうですか? 縁起でもないことですが、遺産相続の場合には全部オープンになるわけですから、生前でもよいのではないでしょうか。

吉田さん:そうですねぇ…。でも兄とは疎遠ぎみというか…。

山本先生:そうなると、ますます生前の方がよいですね。親の目があるうちの方が、私利私欲をむき出しにしにくいものです。

吉田さん:うーん、そうか…。

山本先生:親の財産で施設に入るお金もあって、どうやら余剰がありそうだとなれば、生前贈与という形で受け取れるかもしれませんよ。暦年贈与といって、1年間110万円まででしたら、贈与税はかかりません。また「教育資金の贈与税の特例」を活用すれば、孫などへの教育資金としての贈与は、孫など1人につき1,500万円まで無税です。

吉田さん:それは素晴らしいですが…まあ聞いてみるか。

介護費用は数百万かかる!? 有料老人ホームなんて無理?

吉田さん:それにしても、介護ってどのくらいお金がかかるんでしょうか。

山本先生:介護期間にもよります。生命保険文化センターの調査によれば、4〜10年未満かかったという人の割合が最も多いのです。介護に要した費用は、公的介護保険サービスの自己負担費用を含めると、一時的な費用の合計が69万円、月々は平均7.8万円となっています。仮に月10万で8年間介護を続けた場合は960万円がかかる計算ですね。地域や介護方法によって違ってくるので、数百万は覚悟しておくべきでしょう。

吉田さん:数百万!? そんなにかかるんですか! そんなお金は出せない…親も持っているかどうか…。

山本先生:落ち着いて。生きているかぎり支給され続ける年金も使えるわけですから、そこまで焦らなくて大丈夫です。

吉田さん:あ、そうですね。たしかに、全部用意しておかなければならないわけではないですね。よかった…。

山本先生:それに、介護保険制度があります。介護サービスを利用する際の自己負担割合は収入に応じて変わりますが、単身者の場合で、年金収入等280万円未満(合計所得金額160万円未満)の人で1割、280万円以上(合計所得金額160万円以上)で2割、340万円以上(合計所得金額220万円以上)で3割となっています。夫婦世帯の場合は年金収入等が346万円以上で2割、463万円以上で3割です。

吉田さん:私がいま支払っているやつですね。

山本先生:そうです。いずれは、恩恵を受けられます。

吉田さん:遠方だから、老人ホームに入ってもらえたらその方がいいんですが。

山本先生:特別擁護老人ホームに入れれば、格安ですが、いまは施設がいっぱいで待機が出ている状況です。有料老人ホームも視野に入れておきたいですね。

吉田さん:有料老人ホームはどのくらいするのでしょう?

山本先生:入所料金にもよると思うのですが、月々は20万〜25万程度のところが多いようです。

吉田さん:やっぱり高いですね!

山本先生:ただ、この中には、食費や光熱費も含まれているんですよ。内訳としては、住居にかかる家賃、光熱費、通信費は10〜11万、食費に5〜6万、介護費用として5〜6万、洗濯代や散髪代などで0〜2万円程度。そう思うと、そんなに高くないような気がしませんか?

吉田さん:確かに…。少し調べて、両親に話してみようかな。そのついでに財産のことも聞けるかもしれませんね。

山本先生:要介護度によって費用もかわってきます。ご両親そろって入居できる有料老人ホームもあるようです。

認知症の備えに「家族信託」を検討してみよう

吉田さん:実家を売ったりすればなんとかなるかも…。

山本先生:そうですね、ただ、認知症になったりするとご本人の意志確認ができないので、不動産は動かせなくなります。それこそ、お亡くなりになるまで凍結されてしまいますね。

吉田さん:じゃあ、やっぱり当面資金は子どもが用意しておかなくちゃいけないんですね。

山本先生:それを回避するために、本人に判断能力がなくなると成年後見制度を勧められます。でもこの制度は、制約が多く、不動産の売却や資産運用はできません。そこで、最近では、家族信託が注目されています。

吉田さん:家族信託と成年後見制度はどう違うんですか?

山本先生:家族信託は受託者となった家族や親族の意志で、不動産の売却や投資などもできるのが特徴です。受益者が認知症になって施設に入ることになったら不動産を売ることもできます。しかも二次相続の指定までできるということで、注目が集まっていますね。

吉田さん:そうなると、子どもの負担が軽くなりますね。どこに相談すればいいんですか? 信託銀行ですか?

山本先生:信託銀行にも「家族信託」と銘打った商品があるかもしれませんが、金融商品を預かるだけのものが多いのです。家族信託に精通した司法書士などに依頼するか、司法書士がパッケージされたイオン銀行などの家族信託を利用してみてください。

吉田さん:「信託」とつくと、なんでも一緒に見えますが違うんですね。わかりました。

山本先生:親の世代の方が経済的には恵まれているので、ある資産は有効に活用したいですよね。介護費用は基本的に親が負担する前提で考えましょう。

ファイナンシャルアカデミー
お金の教養を身につけるための総合マネースクールとして2002年に創立。東京校・大阪校・ニューヨーク校・WEB受講を通じて17年間で延べ約50万人が、貯蓄や家計管理といった身近なお金から、資産運用、社会を豊かにするお金の使い方までを学習。初心者向けの定番「お金の教養講座」「投資信託入門セミナー」「定年後設計スクール」などを開催する

2,000万円貯めるために必要な知識が最短3カ月で完全取得できる「定年後設計スクール」はこちら

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山本麗子

ファイナンシャルアカデミー認定講師・ファイナンシャルプランナー・企業年金総合プランナー。FP事務所に勤務後、より多くの人に「お金の教養」の大切さを伝えるためファイナンシャルアカデミーに入社。講師として、企業・個人・女性向けなど様々な講演を行うほか、幅広い層に対する家計コンサルも行う家計改善、金融経済教育のプロフェッショナル。

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