米中貿易摩擦は来年まで引っ張れば、中国のほうが有利になる

中原圭介

2019.09.24.(火)

アメリカ大統領選の歴史を振り返ってみると、勝利の方程式はやはり経済が好調であるということです。2020年11月の大統領選までのスケジュールから判断すれば、トランプ大統領は遅くとも直前の2020年7-9月期のGDP(速報値は10月末頃の発表予定)で3.0%以上の成長を達成し、経済が好調であることをアピールしたいところです。そこから逆算すると、6月がタイムリミットになります。

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米中貿易摩擦は最終的には沈静化する

中国の強気でアメリカ経済はどうなる?

しかし、私は中国の戦略を見誤っていたようです。中国は来年の6月まで交渉が長引いた場合、交渉が決裂してもいいと考えているからです。というのも、交渉が決裂したまま大統領選に突入すれば、習近平国家主席が強烈に不信感を抱くトランプ大統領の再選は極めて難しくなるからです。

アメリカのここ数カ月の経済指標を見ていると、米中貿易摩擦の悪影響が及んでいるため、農業が大打撃を受けているばかりか、製造業の雇用までもが減少してきています。前回の大統領選で勝敗のカギを握ったラストベルトの各州では、とりわけ製造業の雇用が落ち込みを見せ始めています。農業の従事者とラストベルトの工場労働者の双方は、トランプ大統領の支持基盤と重なっています。

そのうえ、アメリカによる制裁関税・第4弾が中国に対して12月に実施されれば、中国への輸入依存度が高く代替調達が難しい消費財が全体の4割を占めているため、中国から商品を輸入して事業が成り立っている企業は、廃業を強いられるケースが相次いでくるでしょう。これらの企業の経営者の多くも、トランプ大統領の支持基盤と重なっています。

長期戦になれば大統領選挙を控えたトランプは不利

トランプ大統領は当初から、米中貿易摩擦を来年の前半までに休戦または収束へ向かわせる必要があると考えていたようですが、交渉がまとまらなければ支持基盤である農業や製造業などに従事する人々から見放され、大統領選に敗れる可能性が高まっていくでしょう。トランプ大統領は再選ができなければ、FBIからロシア疑惑の隠ぺい工作で訴追される可能性が指摘されているので、何が何でも大統領選には勝たなければならないのです。

これまではアメリカが一切の妥協をせずに中国を強く攻め立てていましたが、中国があと数カ月も我慢すれば、トランプ大統領のほうが合意を急がなければならない状況に追い込まれてくるでしょう。米中貿易摩擦は輸出が多い中国のほうが不利だと言われてきたなかで、来年になればアメリカのほうが大きな妥協をしてでも、合意をしなければならないのではないでしょうか。

米中貿易摩擦は年内に収束するか?に注目

そうならないためには、トランプ大統領は年内のうちに休戦または収束への道筋をつけなければなりません。現時点でトランプ政権が考える最善のシナリオは、今年すでに0.50%の利下げしているFRBに年内にあと0.25%利下げさせたうえで、それと併行して米中貿易交渉も一気に進めてしまおうというものです。時間が経つにつれて中国が強気に出てくる見通しのなかで、今後のトランプ大統領の焦りは募っていくばかりでしょう。

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中原圭介

経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析しており、その予測の正確さには定評がある。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、ファンも多い。 主な著書に『AI×人口減少』『これから日本で起こること』(ともに東洋経済新報社)、『ビジネスで使える 経済予測入門』『シェール革命後の世界勢力図』(ともにダイヤモンド社)、『日本の国難』『お金の神様』(講談社)などがある。東洋経済オンラインで『中原圭介の未来予想図』、マネー現代で『経済ニュースの正しい読み方』、ヤフーで『経済の視点で日本の将来を考える』を好評連載中。

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