借金より広い考え方、引当金の概念とは

野瀬大樹

2019.09.16.(月)

前回は「負債」とは何なのか?についてざっくりお話しました。
今日は前回も予告したようにその中でも特徴的な「金をとられる可能性が高い」ものについてお話しましょう。

お金をとられる「可能性が高い」だけでそれは立派な「借金」?

前回はこの「可能性が高い」ものについて、例として「残業代」や「退職金」「ボーナス」という例を出しました。「残業代」については、まだわかりやすいかと思います。前の月に実際働いた時間×時給が会社の「借金」と考える考え方はしっくりくる人が多いでしょう。

少しむつかしいのが「退職金」や「ボーナス」だと思います。

退職金やボーナスはある意味、支払うことが「確定」していないものです。例えば最低3年は勤めないと退職金をもらえる資格は得られないのに3年以内に辞める人もいるでしょう。また勤続年数によって退職金は違うので、定年まで勤める人、途中で辞める人、中途入社の人でそれぞれの退職金の金額は違うはずです。ボーナスも同じです。ボーナスは基本的にその支給日に会社に在籍していることがそれを得る条件になっているハズです。たとえ今会社に在籍していても、ボーナス支給日までに退職する可能性はゼロではないハズで、そのあたり「借金」と考えるには少々抵抗があります。

しかし、この退職金やボーナス、払う可能性が高いか低いか…で考えるとかなりの確率で払うことになるでしょう。ある日突然ボーナス前に退職する人は少ないですし、日本の場合まだまだ一つの会社で長く働く人が多いからです。
またその金額もある程度予測し計算することも可能です。ボーナスは毎年ある程度の金額に決まっている会社が多いですし、退職金についても過去の離職率や勤続年数のデータをとれば統計上その予測は可能となります。

引当金の概念

そうかんがえると、会計の世界では通常私たちが考える「借金」よりもより広く
将来発生する支払い
その支払いの原因は今にある
発生する可能性が高い
その金額をある程度予測できる
場合は、それも「借金」として認識するのです。
これが「引当金」という会計独特の借金の概念です。

これには退職金、ボーナス以外にもいろんなものが含まれます。
たとえばメーカーなどが行う「無料修理」もこれにあたるでしょう。人間が作るものに100%はありませんので、結果として①から④の要件をすべて満たすからです。金額も過去の統計より導くことができるでしょう。

原発などの「廃炉」コストもこれに該当します。将来廃炉による支払いの原因は「今」まさに原発を稼働していることが原因であるため、この将来の支払を借金として今認識する必要があるのです。これも①から④の条件をすべて満たすことになります。
私も会計スクールでよく使っているたとえなのですが、この「引当金」の考え方、例えるなら「子どもが生まれた瞬間に皆さん自身の帳簿に『借金3000万』と書き込む」ようなものですとお話しています。

子どもが生まれたら食費・学費などで将来お金がかかります(①)。どうしてその支払いが必要かというとそれは今子どもが生まれたからです(②)。そして日本は子どもの死亡率も低いですからその支払いはかなりの確率で必要になります(③)。最後にその金額は統計上おおむね3000万ということも分かっています。
ですから、将来の支払いがもうある程度予測できるのであれば、それが確定していなくても早め早めに借金として認識しましょうということになるのです。

この引当金の考え方は非常に面白いので、皆さん興味のある会社の決算書がありましたらどんな引当金があるか見てみるのも良いかもしれません。

次回からは、今までの会計の基礎の話を抑えて、少し実際の決算書や株価の話を始めたいと思います。

【前回の記事はこちら】
負債の定義とは?借金との違いを解説

短期間で会計のポイントを学ぶ!

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野瀬大樹

公認会計士・税理士。大手監査法人にて会計監査 、株式公開支援、財務調査、内部統制構築業務にかかわる。会計のプロとしての視点から家計のリストラに着手し、支出を1年で50%減らす。さらに自身の労働時間を年間1000時間減らす中で、所得の増加にも成功している。公認会計士協会主催の講習の講師も務め、小中学生に会計とお金の話をわかりやすく伝える授業には定評がある。著書に「20代、お金と仕事について今こそ真剣に考えないとやばいですよ!」(クロスメディア・パブリッシング) 、「自分でできる 個人事業主のための青色申告と節税がわかる本」(ソーテック社)などがある。

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