米国ハイテク株の動向に注目

渋谷 豊

2019.08.29.(木)

サマーバケーションに入り世界の株価と為替相場が乱高下を繰り返しています。乱高下を繰り返しながら徐々に株安、ドル安に水準を切り下げる中、未だ強気派と弱気派の数は拮抗しているようにみえます。私達はどのように考えるべきなのでしょうか。

強気派の意見は

相場見通しが二極化した場合、どう判断すればいいのか。頭を悩ましている個人投資家が多いのではないかと思います。多くの個人投資家は、アナリストやストラテジストの肩書を持たない、つまり金融の専門家ではありません。そのため、経済や相場の見通しを日々細かく分析するすることは正直なかなか困難です。

そこで、比較的簡単に個人投資家が実践できるおすすめの分析手法をお伝えしたいと思います。それは、現在の相場の大きな流れの順張り「派」、つまり今であれば強気派の主軸としているメインシナリオや主張を抜き出し経過観測を行い、その主張が崩れたときに相場が反転すると予測判断する手法です。

現在の相場強気派の主なシナリオは以下の通りです。ここ数年、世界の株式市場は急落を迎えてきましたが、米国ハイテク、プラットフォーム企業はこれらの難局をヒョイヒョイと乗り越えてきており、今後も相場を牽引するであろうという米国ハイテク株牽引シナリオです。米国のハイテク企業はROEも高く効率的に稼ぐことができ財務基盤もしっかりしています。しかも、時価総額が大きいので資産効果が高い。

さらに、ハイテク株の影響は米国株全体にも資金流入を促しており、日本株にくらべ米国株がオーバーパフォームしているのはハイテク株の構成比率が高く全体を牽引しているから、しかも、ハイテク企業は、中国やイランへの依存度も低く今後の混乱の影響を受けにくいというもの。それに加えFRBが政策転換をしたことさらなるプラスの材料というもの。10年ぶりにFRBは予防的に政策金利の利下げを行いました。

しかも、今後の経済動向いかんでは利下げを辞さないであろうし、また、トランプ大統領が威圧的に利下げを催促するであろうということから、今後金融政策はマーケットフレンドリーになることから株価の下支えになるというパウエルプットシナリオです。このパウエルプットは、現在業績が下降し始めているオールドエコノミー企業にとっては大幅なプラスになることから、米国の株は総じて強いというものです。

シナリオの崩壊を警戒する

さて、この主張の論拠を少し詳しく見ていきましょう。

その論拠の根底には、ここ数年米国株が世界株をリードしてきたというものです。例えば、過去10年間、米国S&P500の上昇率は日本のTOPIXの約3倍であるとか、2018年の乱高下相場開始以降、米国ナスダックはプラスに推移している、しかし米国S&P500とダウ工業平均はほぼトントン、一方で日本株や中国株に関しては大幅にマイナスであるなど。

つまり、米国の株が好調というよりもハイテク株がリードしていることが今後の見通しを明るくしているというものです。これらハイテク企業は、オールドエコノミーと異なり、世界中から利益を上げる構造ができており、さらに、EPS成長率も高いことから株価の上長率は引き続き高いとしています。これ自体は事実であり正しい主張といえるでしょう。

では、もし仮にこのシナリオが崩れたらどうなるのでしょうか。世界株を牽引するハイテク企業の業績が悪化した場合、投資家はポートフォリオの見直しを迫られます。時価総額の大きなFANGを始めとハイテク企業の株価下落は、米国株全体への株価寄与率が高いことから米国株以外の株式ポーションの引き下げが世界的に起こることを意味します。

さらに、グローバリゼーションの変革を受けて業績の見通しが明るくない製造業への資金シフトはもちろん避けされるでしょうから株式以外への資金のシフト、つまり、アセットクラスのポーション変更が意識されるようになります。

しかし、世界的な金融緩和により歪められた債券価格への資金シフトにはある程度限界があるでしょうから、資金は他の先に逃げ込むかもしれません。しかし、金利自体は定位安定しているため、仮にREITへ過度の資金流入が続くようであるとREIT利回りと米国債券とのイールドスプレッドが縮まることでいずれREIT価格すら歪められる可能性があります。そうなると不動産への資金シフトも限界が訪れる可能性があります。

そうなると資金の逃げ場は、オルタナティブ、特に金などになるわけですが、その前に投資資金の収縮に見舞われる可能性があります。このように、米国ハイテク企業の株価が株式市場平均をオーバーパフォームできなくなった時は、強気派のシナリオが大きく崩れる可能性が高いということです。ちなみにハイテク株の変調を読み解く鍵は、ROEが低下傾向になることや営業利益率の低下、EPS成長率が過去平均を下回るなど、これ以外にも数多くのシグナルがあります。このシグナルをできるだけ多く身につけることが大きなポイントになります。

判断基準は?

このように、米国ハイテク企業の株価が株式市場平均をオーバーパフォームできなくなった時は、強気派のシナリオが大きく崩れる可能性が高いということです。

では、どのようにしてハイテク株の変調を読み解くのでしょうか。鍵は、ハイテクセクターのROEが低下傾向になること、営業利益率が低下すること、EPS成長率が過去平均を下回るなどが挙げられます。これ以外にも数多くのシグナルがありますが、四半期ごとに発表される決算も当然チェックが必要ですが、それ以上に今後の見通しを示す「ガイダンス」にヒントが隠れています。ぜひ、次回チェックをしてみましょう。

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渋谷 豊

ファイナンシャルアカデミー総研代表 、ファイナンシャルアカデミー取締役
シティバンク、ソシエテ・ジェネラルのプライベートバンク部門で約13年に渡り富裕層向けサービスを経験し、独立系の資産運用会社で約2年間、資産運用業務に携わる。現在は、ファイナンシャルアカデミーで取締役を務める傍ら、富裕層向けサービスと海外勤務の経験などを活かした、グルーバル経済に関する分析・情報の発信や様々なコンサルティング・アドバイスを行っている。慶応義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。
ファイナンシャルアカデミーグループ総研 http://fagri.jp/
ファイナンシャルアカデミー http://www.f-academy.jp/

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