おひとり様の老後だからこそ特に大切な資金面以外の準備

栗本 大介

2019.08.26.(月)

国民生活基礎調査による高齢者世帯の内訳をみると、夫婦のみの世帯48.7%に対して単独世帯47.4%となっています。おひとり様というと生涯独身をイメージする人が多いかもしれませんが、離別や死別によって単独世帯になるケースもあるため、多くの人が意識しておかなければなりません。おひとり様の場合、関心の高い資金面の準備はもちろん、健康面や人間関係の構築等、資金面の準備以外にも特に目を向けておくことが大切といえます。

資金面から見たおひとり様のコスト

まず収入について、家計調査(2017年)の統計を確認すると、高齢者世帯の平均所得額は年間318.6万円。そのうち66.3%にあたる211.2万円が公的年金、22.3%にあたる70.9万円が稼働所得となっています。仕事をいつまで続けるかは人それぞれですが、老齢年金の受給開始年齢となる65歳以降は、収入に対する公的年金の割合が大きくなるのは一目瞭然です。なお、高齢無職世帯の場合、実収入の約9割が公的年金となります。

一方の支出をみてみましょう。同じく家計調査(2017年)による高齢無職世帯の家計支出は、消費支出235,477円と非消費支出(税金や社会保険料)28,240円を合わせて月額263,717円。月額の実収入209,198円に対して、毎月54,519円のマイナスとなっています。

これに対して、高齢無職単身世帯の家計支出は、消費支出142,198円と非消費支出(税金や社会保険料)12,544円を合わせて月額154,742円。実収入の合計である114,027円に対して、毎月40,715円のマイナスとなっています。ここで意識していただきたいのは、世帯人数が半分だからといって、消費支出が半分になるわけではないという点です。
夫婦世帯の支出総額263,717円の2分の1は、131,859円。単身世帯の支出総額154,742円との差額22,884円が、いわばおひとり様のコストと言えるかもしれません。

ただし、ここでご紹介したのはあくまでも統計に基づく平均値。年金受給額は退職までの公的年金加入状況によって人それぞれですし、生活に必要なお金も大きく異なります。ご自身のねんきん定期便で具体的な数字を確認しておくことや、退職後の生活費に対する具体的なイメージを早めの段階で持っておくことが大切です。

イベント費用を事前の備えで抑えるようにする

また、日常生活費以外にも、住宅リフォームや車の買換え、旅行といったイベント費用、医療や介護にかかる費用などの支出があります。ただし、こうした支出は、日頃からの努力や準備によって節約できるものです。健康に気を付けて医療費を抑えたり、車や家電製品のメンテナンスを適切に行い長持ちさせたりすることも、大切なリタイアメントプランの一つと言えるでしょう。

なお、万一の際の備えについて、病気やケガといった身体に対する保障だけを考えがちですが、最近では自然災害による住まいの損害も多くなっています。ご自身の加入している保険や共済をチェックする際は、生命保険や医療保険だけでなく、火災保険等の損害保険も忘れないように確認しましょう。

こうしたイベント費用の中で、おひとり様が特に気をつけておきたいのは医療や介護にかかる費用です。配偶者や子どもなど、支えてくれる家族が身近にいる場合と違い、おひとり様だと、事業者のサービス等に頼る必要が出てくるかもしれません。また、お買い物やお金の管理など、若い時には当たり前のように自分で行っていたことができなくなった時についても、誰に、どのように頼むのかを考えておくことはとても大切なのです。

人とのつながりを大切に

ここまでの話をまとめますと、おひとり様は、生活のコストがかかりがちであるという資金面の課題と、思うように動けなくなった際にどうするかという人的なサポート面の課題があることがわかります。

実際、これまで携わってきた相談者を振り返ると、高齢おひとり様は、経済的な不安よりも、生活全般の管理やサポートに不安を覚える人が多いと感じます。教育費とも住宅ローンとも無縁で、現役時代も経済的には余裕のあった方が、仕事以外にあまり社会と交流を持たず、家事や身の回りのことさえ満足にできない場合、たとえ資金面のゆとりはあっても自宅に引きこもりがちなのです。

その結果、体を壊したり、認知症を患ったりしても、身近に頼る人がいないため、ますます厳しい状況に陥ります。入院や介護施設への入所を検討した場合も、保証人欄にサインをしてくれる人がいないと手続きが困難となります。
高齢期には経済的な準備だけでは対応し切れない様々な問題が生じます。健康の維持はもちろん、学生時代の仲間や仕事を通じた知り合い、親族との関係やご近所付き合い、趣味を通じたつながりなど、人とのつながりを大切にすることが、いざという時の大きなセーフティネットとなる点を忘れないようにしましょう。

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栗本 大介

株式会社エフピーオアシス代表取締役
CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、金融知力普及協会認定シニアインストラクター
1971年滋賀県生まれ。立命館大学卒業後、個人的な興味から、大手資格スクール在職中の1995年にFP資格を取得。生命保険会社を経て2001年にFPとして独立。
現在は、共済団体や労働組合、金融機関、大学等を中心に年間100回を超える講演を行うほか、コミュニケーション手法を取り入れた相談実務研修の講師も行っている。18年に及ぶFP講座の講師経験を生かした資格取得のための受験対策講座にも定評があり、「国民総FP化」を目指し、FP知識の普及、啓蒙活動に力を入れている。
また、専門家プロファイルの相談員やメールマガジンの配信を行うほか、テレビやラジオでも活躍中。FPの学習法を中心とした書籍も4冊出版。日経マネーDIGITAL等の専門誌・業界紙でのコラム執筆多数。2010年「金融知識普及功績者」として金融庁と日本銀行から表彰を受けている。
http://fpoasis.jp/

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