相続法改正で変わる主なことと、相続に際して大切なこと

栗本 大介

2019.08.25.(日)

2018年に成立した相続に関する民法改正が、2019年より順次スタートします。

約40年ぶりとなる今回の改正では、関連する法律と併せ、(1)配偶者居住権の創設、(2)自筆証書遺言の要件緩和と保管制度の創設、(3)相続人以外の「貢献」に対する考慮、(4)故人の預貯金の仮払い制度の創設などが定められました。今回は、改正内容の主なポイントの確認とともに、それでも変わらない大切なことをお伝えいたします。

所有権とは別の「居住権」という概念

まず、(1)に関して、「所有権」とは別に「居住権」という概念が認められます。これにより、配偶者は自宅に住み続けることが可能になると同時に、自宅以外の財産をより多く取得できるようになります。
例えば、配偶者と2人の子が相続人となるケースで、自宅等の不動産の評価額が2,000万円あり、その他の預貯金が3,000万円だったとします。

話し合いがまとまれば財産の分け方は自由ですが、法定相続分を基準にすると、財産全体(5,000万円)の2分の1、すなわち2,500万円が配偶者の権利です。住んでいる自宅不動産を配偶者が引き継ぐと、それだけで2,000万円の財産を取得したことになるため、このままでは預貯金等は500万円しか受け取れないことになってしまいます。

自宅は財産価値こそあるものの、もとの家にそのまま住んでいる配偶者からすると、「預貯金等の大半を受け取れなかった」という感覚になるでしょうし、実際に生活の安定を脅かす可能性があります。

そこで、所有権は他の相続人に渡す一方で、配偶者は居住権だけを得るという選択ができるようになりました。仮に「居住権」の評価額が1,000万円とされた場合、実際に住み続けるのは配偶者であっても、取得した財産は1,000万円のため、預貯金等を1,500万円受け取れるのです。この配偶者居住権は、遺産分割協議による合意によって設定することができるほか、被相続人が遺言によって設定することも可能です。なお、配偶者居住権は登記できるため、所有者が変わったとしても、新たな所有者に対抗でき、原則として亡くなるまで住み続けることができます。

自筆証書遺言のデメリットの解消

遺言を確実に残すためには、公証役場で作成してもらう、公正証書遺言の活用が不可欠でしたが、手数料がかかるほか、作成時には2人以上の証人が必要であるため、ハードルが高いとされてきました。一方、自筆証書遺言は自分一人で費用もかけずに手軽に作れる反面、様式を間違えると法律上無効となる、紛失や改ざんの心配がある、発見されない可能性がある、検認手続きが必要である、というデメリットがありました。

今回の改正法では、自筆証書遺言の様式が緩和されました。これまでは遺言者が遺言の全文、日付、氏名等を自書し、押印しなければ、法的な効力がなかったのですが、財産の一覧表(財産目録)については、パソコン等で作成してもよいことになりました。

銀行口座や不動産が複数ある場合、高齢の方がそのすべてを一覧表として手書きすることは困難かもしれませんが、信頼のおける家族等にパソコンで作成してもらえるようになると、負担軽減になるでしょう。なお、財産一覧表は印刷し、そのすべてのページに自署が必要となる点は注意を要します。

また、自筆証書遺言を公的機関である全国の法務局で保管する制度が始まります。これは民法ではなく、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」という別の法律に規定されるものです。これによって、紛失や改ざんの心配がなくなるほか、遺言書が発見されない事態を防ぐことができるでしょう。なお、法務局に保管された自筆証書遺言については、検認手続きが不要となります。ようするに、これまで自筆証書遺言のデメリットとされていた大部分が、今回の改正によって無くなったのです。

相続に際して大切なことは変わらない

上記以外では、相続人以外の「貢献」に対する考慮が認められるようになります。これは「子の配偶者」のような「相続人ではない親族」が、亡くなった方(被相続人)の介護や看病に無償で貢献し、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をしたと認められる場合に、相続人に対し金銭を請求できるようになるというものです。
また、これまでは、相続人全員の話し合いがまとまらなければ引き出すことのできなかった被相続人の預貯金の払戻しを、一定額について認められるようになります。

ちなみに、今回の改正相続法の施行時期は2019年7月1日が原則ですが、一部は異なります。今回取り上げた中でも、自筆証書遺言などの要件緩和は2019年1月13日にすでに施行されていますが、配偶者の居住権については2020年4月1日の施行、自筆証書遺言の保管制度は2020年7月10日に施行となるので注意してください。

今回の改正では、実際の相続時に問題となっていたことがスムーズに行える可能性が高まっています。とはいえ、相続に際して一番大切なのは親族間のコミュニケーションであることに変わりはありません。相続の話題は切り出しにくいものですが、今回の改正を機に、情報共有の意味も込めて、お互いの考えを話し合ってみてはいかがでしょう。

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栗本 大介

株式会社エフピーオアシス代表取締役
CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、金融知力普及協会認定シニアインストラクター
1971年滋賀県生まれ。立命館大学卒業後、個人的な興味から、大手資格スクール在職中の1995年にFP資格を取得。生命保険会社を経て2001年にFPとして独立。
現在は、共済団体や労働組合、金融機関、大学等を中心に年間100回を超える講演を行うほか、コミュニケーション手法を取り入れた相談実務研修の講師も行っている。18年に及ぶFP講座の講師経験を生かした資格取得のための受験対策講座にも定評があり、「国民総FP化」を目指し、FP知識の普及、啓蒙活動に力を入れている。
また、専門家プロファイルの相談員やメールマガジンの配信を行うほか、テレビやラジオでも活躍中。FPの学習法を中心とした書籍も4冊出版。日経マネーDIGITAL等の専門誌・業界紙でのコラム執筆多数。2010年「金融知識普及功績者」として金融庁と日本銀行から表彰を受けている。
http://fpoasis.jp/

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