老後2,000万円不足?まずは現実を知ることが大事

松浦 建二

2019.08.05.(月)

6月に金融庁が発表した「高齢社会における資産形成・管理(金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書)」はニュースで頻繁に取り上げられました。報告書の中に老後の生活費が約2千万円不足していると書かれていることが大きなポイントになっていますが、私たちはこの内容をどのように受け止めれば良いのでしょうか?ファイナンシャルプランナーの立場から、貯蓄と負債に着目して考えてみました。

60歳以上の世帯では既に2千万円の貯蓄がある

私たちの平均的な貯蓄額を総務省「2018年家計調査」で確認し、世帯主の年齢階級別に分けてグラフにしてみました。

グラフは二人以上(単身以外)世帯の、世帯主年齢別の世帯貯蓄額で、調査対象の平均像は、世帯人員2.99人、有業人員1.38人、持家率84.7%、年間収入622万円です。貯蓄は金融機関への貯蓄(預金や株式等)や社内預金等の合計で、自宅の不動産やタンス預金等は含まれていません。

全世代の平均世帯貯蓄額は1,752万円となっています。意外と多いように感じる人もいるかもしれませんが、世代によって大きな差があり、60~69歳や70歳以上は平均で2千万円を超えていますが、40~49歳は1千万円程度、29歳以下は400万円弱しかありません。この数字を見る限りでは、若年祖はこれから頑張って貯めていく必要がありますが、60歳以上の世帯は2千万円以上あるので、生活費が不足する心配はあまりないように感じます。

しかし、この世帯貯蓄額はあくまで平均値であり、みんなが充足しているわけではありません。同資料では、二人以上世帯での貯蓄保有世帯の中央値は1,036万円となっています。これは平均値より716万円も低く、3分の2(67.7%)の世帯が平均値(1,752万円)を下回っています。つまり、一部の世帯が平均値を引き上げているという状況にあります。さらに、各世帯には貯蓄もあれば負債もあるので、貯蓄が2千万円を超えているだけでは全然安心てきません。

30歳代は住宅ローンで負債が他の世代より多い

世帯ごとの年齢階級別貯蓄額に続いて、負債額のグラフも作成してみました。負債なのでイメージしやすいようマイナス表記のグラフにしています。

全世代の平均世帯負債額は558万円となっています。30~39歳の負債額が1,329万円で最も多く、40~49歳の負債額が1,105万円で続いています。負債の中身は主に住宅ローンなので、60~69歳になると負債額は207万円まで減っており、返済をかなり終えたのではないかと推測できます。

負債額も中央値を確認してみると、二人以上世帯での負債保有世帯の中央値は1,147万円で、平均値の2倍以上もあります。これは負債を保有している世帯が全体の39.0%しかないからです。負債を保有している世帯だけで平均値をとると1,430万円に大きく膨らみます。つまり、住宅ローンを借りている人の多くは、平均値よりも負債額が大きいと推測できます。

30歳代は700万円弱の負債超過状態にある

貯蓄があっても負債があれば安心できないので、貯蓄から負債を引いた純貯蓄額を確認しておく必要があります。

年齢階級別純貯蓄額                          単位:万円

参照:総務省「2018年家計調査」

この数値もあくまで平均値ですが、純貯蓄額は40歳代までマイナス(負債超過)となっています。貯金を全て使っても住宅ローン等を全て返済できない状態です。負債がある人にとっては、あまり見たくない数字かもしれません。今後の収入から返済していくことで、負債が徐々に減り、50歳代になると負債超過状態が解消されます。そして、60歳代以上では純貯蓄額が2千万円を超えるようになります。

金融庁の報告書では老後2千万円不足するとなっていましたが、今の60歳代以上は平均で2千万円以上あるので、あまり悲観的な状態ではありません。ただ、あくまで平均値なので厳しい状況の世帯も一定割合あると推測できます。今の30歳代や40歳代は順調に返済が進んでいけば良いですが、収入状況が上の世代とは違うので、老後が安心と言える人はかなり少ないのではないでしょうか。

このような統計は平均値なので、個人的な状況を確認するには、その人の貯蓄や負債等をみてみないとわかりません。早期に現状を確認し、自助努力をする必要があるのかないのか、あるならどのくらい自助努力しなければならないのか理解しておくことはとても大事です。努力が沢山必要なら資産運用も含めて計画を立て、早期に行動を開始すると良いでしょう。

2,000万円貯める、資産運用のノウハウを学びたい人はこちら

最新記事・限定情報はTwitterで配信中♪

松浦 建二

CFP®認定者・1級ファイナンシャル・プランニング技能士。青山学院大学卒、大手住宅メーカーで戸建てやアパートの営業を経験後、外資系生命保険会社へ転職し生命保険と投資信託の営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する執筆や講演も多数おこなっている。青山学院大学非常勤講師。http://www.ifp.cc/

  • お金のトライアングル14話『恋もお金も信頼できる人に相談』

    詳細を見る
  • 購入する前に知っておきたい!J-REITの種類と特徴

    詳細を見る
  • 第一生命が販売開始!スマホで入れるレジャー保険とは

    詳細を見る

こんな記事も読まれています

資産運用資産運用 |  生活生活 |  増やし方増やし方

初心者必見!投資信託で失敗しない商品の選び方

経済トレンド経済トレンド |  定年後・老後定年後・老後 |  考え方考え方

「老後は2,000万円必要」金融庁報告書の波紋を新聞記者が解説

資産運用資産運用 |  生活生活 |  考え方考え方

年収350万でも500万でも。「NISA」を始めたい女子へ

資産運用資産運用 |  生活生活 |  増やし方増やし方

初心者必見!投資信託を始めるためのステップ

資産運用資産運用 |  生活生活 |  増やし方増やし方

投資信託をはじめる前に知っておきたい3大ルール

資産運用資産運用 |  生活生活 |  増やし方増やし方

今年こそ投資デビュー!つみたてNISAが投資初心者にいい理由