今、世界の投資家は一番何に気をつけているのか

渋谷 豊

2019.08.01.(木)

7月10日にパウエルFRB議長が議会証言を行いました。その内容が「7月利下げ」を強く示唆したことで、FRBが次回の7月末FOMCで利下げを行うと織り込んでいます。これを踏まえ代行業平均は2万7,000ドルの大台を超えました。決して危うく見えない市況において世界の投資家はどのようなことに気をつけているのでしょうか。

トランプ大統領自らドル安誘導を示唆

7月10日のパウエル議長の議会証言以降、リスクオンが強まっているようです。米ダウ工業平均は2万7,000ドルを突破、米国10年債利回りは2%割れ水準から反転。世界の主要国の長期金利も概ね上昇しました。まさに債券から株式へとリスク資産に資金が流入する典型的なリスクオフの様相となりました。これは、7月のFOMCで米国の政策金利の利下げを織り込んだ動きではないかとされていますが、少しだけ気になることがあります。それはドル円の動きです。ドル円は10日以降108.80円から107.80円まで約1円ほど円高が進んだことです。

FRBが利下げを行うことで日米の金利差が縮まるため教科書的にはドル安が進むということで説明が可能にはなりますが、一方、世界的なリスクオンということであれば、これも教科書的にはドル買いが進んでもおかしくない状況でした。結果は、円高になりました。このようにドル円がどちらにも転んでおかしくない状況でドル安が進んだのは、何か強い影響があったのではないかと思います。それは、徐々に現実味を帯び始めたトランプ大統領のドル安誘導スタンスを警戒し始めているからかもしれません。

私は、トランプ大統領のドル安示唆やドル売り介入に興味を示すなどの報道が、第一次情報として伝わってきていないため現段階で投資判断に利用するのは如何かと思いますが、それでも市場関係者がこの手の話に敏感になるのは無理のないことだと思います。米ドルと大統領についての話は、私が米国銀行勤務時代に外国為替の世界で名を馳せた方から何度も何度も「米ドルの行方は米国大統領が決める」と聞かされていました。金利差、リパトリエーション、購買力平価、実需など為替レートの決定要因はいろいろあれど、米大統領の意向は無視してはならないと何度も教えられたことを思い出します。すべての状況において大統領意向が相場を決めるわけではありませんが、あながち間違っていないこのことを為替取引の経験が長い人であれば理解できるのではないかと思います。今回は、大統領の意向を忖度した相場になったのではないかと思います。

では、今後仮に米大統領の意向にそったドル安が進んだ場合、世界の投資家は何に気をつけるべきなのでしょうか。

ドルへの投資家の期待が満たされるかどうかがポイント

再び始まる金融緩和モードを市場関係者は歓迎しているようです。一方で、米ドルの金利低下と大統領意向を受け仮にドル安が進行したとしましょう。その時、投資家は何を注意すべきでしょうか。

ここでは、ドル資産へ投資をしている投資家の目線から考えてみたいとおもいます。ドル資産へ投資をしている投資家は、何を期待しているのでしょうか。特に多くの資産を米国に振り分けている日欧の投資家はどうでしょうか。その多くの理由は、自国での運用よりも米国の高い期待利回りに対してを投資を行っているはずです。

日欧投資家は、リーマンショック以降、10年以上も低金利政策を継続している自国の投資環境に運用の限界を感じています。その結果、低金利の自国での運用なままならず米国へ大量の資金が向かっていました。とはいえ、米国での期待リターンもそこまで高くないため、多くの投資家はヘッジコストを避けドルヘッジをかけることなく米ドル資産を保有しているケースが多いとされています。つまり、今後ドル安が進めば自国通貨建てで損失が増える可能性が高っています。

このように投資通貨が減価すると外国投資家は何を求めるのでしょうか。それは、投資資産の益利回り上昇です。海外投資から得られる期待収益は、外貨損益+益利回りで構成されています。外貨の見通しが明るくない状況では、おのずといままで以上に高い益利回りを求めることは間違いありません。今の米国企業にその益利回りを上回る業績を実現することが可能でしょうか。債券でその益利回りを実現することは可能でしょうか。現状では、容易ではないように思いえます。

このように世界の投資家が今注目していることは、金融緩和の影響のもと通貨価値の下落価値を吸収できるだけの益利回りを米国企業や各投資先資産が実現できるかということです。一度、緩和から引き締めに移行していた金融政策を緩和策に巻き戻したときに益利回りを高めることができるのか。市場は注視しています。これまで以上に企業業績や経済指標に繊細に市場は反応するのではないかと思います。引き続ききちんと経済環境を確認していきましょう。

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渋谷 豊

ファイナンシャルアカデミー総研代表 、ファイナンシャルアカデミー取締役
シティバンク、ソシエテ・ジェネラルのプライベートバンク部門で約13年に渡り富裕層向けサービスを経験し、独立系の資産運用会社で約2年間、資産運用業務に携わる。現在は、ファイナンシャルアカデミーで取締役を務める傍ら、富裕層向けサービスと海外勤務の経験などを活かした、グルーバル経済に関する分析・情報の発信や様々なコンサルティング・アドバイスを行っている。慶応義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。
ファイナンシャルアカデミーグループ総研 http://fagri.jp/
ファイナンシャルアカデミー http://www.f-academy.jp/

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