世界各国が傾斜する金融緩和と為替の関係

渋谷 豊

2019.07.20.(土)

最近の経済指標を見ていると世界的な景気の減速傾向が確認できます。そのため、各国の中央銀行より金融緩和を進める発言や、実際にいくつかの国においては緩和策(利下げなど)が採用されています。ところで、金融緩和策の打つ手が限られている日本円の今後の見通しはいかに。

今回のFOMCではハト派が台頭

6月18日、19日に開催された米国のFOMCでは、大方の予想通り政策金利は2.25%〜2.50%で維持されることが決定されました。ただし、パウエル議長の声明文は、経済活動の現状については「緩やかに上昇」と前回から明らかにトーンダウン、また、経済見通しについても「不確実性が増した」とし景気判断について非常に慎重な姿勢でした。また、物価についても、まだ2%を下回っているとして前回と同じ表現が維持されました。これらを総合的に捉えるとFRBのスタンスは、米国経済に対して強気でなくニュートラルに見ているということです。ごくごく簡単に言えばですが。

これに加え今回のFOMCでは、ハト派にはとても心強い文言が加わりました。今後の金融政策については「必要がに応じて適切に行動する」というもの。これにより、7月会合での利下げの可能性が高まったと市場関係者は受け止めています。

さらに、今回の会合ではドットチャートに注目が集まっていました。ドットチャートとは、FOMCの参加者が今後の政策金利の見通しを示したもなのですが、かなり面白い内容でした。たった3カ月前の3月の会合で利下げを予想した人はゼロでした。しかし今回、参加者のうち17名中8名がなんと年内の利下げを示唆し、そのうち7名は年2回の利下げ見通しだったことから、今回のFOMCの内容はさらにハト派的だったのだなぁと捉えられました。その結果、年内の利下げを見込む確率はほぼ100%まで上昇し、次回の7月FOMCで予防的な利下げが行われることが市場予想の中心になりました。

このように、いくら予防的な利下げが検討されているとはいえ、やはりここ1カ月の経済指標の内容次第ではまだまだ情勢が変わる可能性がゼロではありません。きちんと指標を確認して行く必要があると思います。このような大勢が決まったようにされている状況下で予断を持って市場に接していると、大やけどをすることがあります。もし、予防的な利下げ行われないとネガティブサプライズになるでしょう。まずは、米国6月雇用統計、米国6月CPI、6月住宅着工件数などは最低限確認していくことが大切です。

世界的にも緩和ムードが蔓延

さて、緩和ムードにシフトしたのは米国だけではありませんでした。約1カ月前の6月4日には、オーストラリアの中央銀行であるRBAがオフィシャルキャッシュレートの引き下げを決定しています。0.25%引き下げて過去最低の1.25%へ。高金利の代名詞で大変人気の高かった豪ドルのレートがまさかの1.25%にまで下がるとは、と多くの市場関係者は思ったに違いありません。この利下げは2016年から約3年ぶりで、雇用の伸びを支援し、インフレが中期目標に沿った水準に戻すためのものとコメント。また、貿易摩擦により、世界経済に対する下振れリスクが拡大しているとの見方も示していることから、豪州でも経済が減速する兆候が見られ、かつ、雇用もインフレ率も期待値を下回っているということを示しているわけです。

また、米国と並ぶ大経済圏の欧州中央銀行もフォワードガイダンスを変更し、低金利政策を一段と長期化する姿勢を示しました。ECBのドラギ総裁も、RBAと同じくインフレが中期目標に沿った水準でないとしさらなる追加緩和の必要性に言及しています。このようなことから、世界の中央銀行はグローバルな景気減速傾向に備え、予防的な金融緩和を行う流れが強まりそうです。

では、我らが日銀は同じように緩和策へ舵を切るのでしょうか。基本的には日銀も同じように必要に応じた追加緩和を行わざるを得ないのではないかと考えます。この時期に何もしないことで円高になることを避けなければなりません。ただでさえ、消費増税の導入を控え内需関連の株価が苦戦し、どうにか外需関連株で株価を維持できている日本において、円高が進行すれば再び2万円割れも起こりえる状況です。しかし、日銀はECBと同じで、金利の低下だけの施策で緩和を行うのは、そもそも現在の金利水準が低いことから効果が限定的であり、どのような手法を導入するか注目されています。

さて、このような世界的な緩和策の行き着く先の興味は、為替レートへの影響です。日銀の打つ手は限られていると市場関係者から判断されれば基本的には円高へのバイアスが強くなると考えられるでしょう。しかし、これだけでは決まらないのが為替レートの深いところです。世界的な緩和トレンドは、リスクオンを誘発し株価の下落を和らげる作用も併せ持っています。これが政府、中央銀行の目的ですから。緩和策で日米の金利差が縮まることだけを考えると円高シナリオが優勢になるものの、リスクオン作用によりドル投資への還流が起こりドル高もありえるのです。この綱引きの中で昨年よりベタ凪のようであった為替相場に、今後少しづつ動きが出る可能性があることを頭の片隅に置いておきましょう。

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渋谷 豊

ファイナンシャルアカデミー総研代表 、ファイナンシャルアカデミー取締役
シティバンク、ソシエテ・ジェネラルのプライベートバンク部門で約13年に渡り富裕層向けサービスを経験し、独立系の資産運用会社で約2年間、資産運用業務に携わる。現在は、ファイナンシャルアカデミーで取締役を務める傍ら、富裕層向けサービスと海外勤務の経験などを活かした、グルーバル経済に関する分析・情報の発信や様々なコンサルティング・アドバイスを行っている。慶応義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。
ファイナンシャルアカデミーグループ総研 http://fagri.jp/
ファイナンシャルアカデミー http://www.f-academy.jp/

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