米FRBの決断はいかに

渋谷 豊

2019.07.01.(月)

この記事が出ているときには、6月18~19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され結果は公表されているであろう。今回、政策金利引下げは見送られ、もし利下げになるとサプライズとされるであろう。7月以降のFRBの政策と米国経済の見通しを考えてみたい。

低インフレが利下げを促すか

6月18日時点における6月以降のFOMCでの利下げ、フェデラルファンドレート(FF金利先物市場)の見通しは、現在の2.25%〜2.50%から年3回、各0.25%ずつ引き下げられることを織り込んでいる。ちなみに、7月、9月、12月に引き下げられることを想定している。

しかし、この見通しには確固たる根拠はなく、今後の経済、金融情勢次第であることは間違いない。

実体経済は、5月の米国非農業部門就業者数が7万5,000人増と予想を大きく下回ったが、6月8日終了分の失業保険申請者数は、222,000人と今までとほぼ変わらずなので、6月以降の雇用統計にも大きなマイナスは想定しにくい。また、米国5月の小売売上は、前月比プラス0.5%、前年同月比でプラス3.2%と順調。さらに、アトランタ連銀が発表するGDPナウは、今四半期のGDP成長率を+1.4%から+2.1%と上方修正と経済指標は好調を維持しているようにみえる。

一方、米中の関税問題、中東情勢などの地政学リスクの高まりによる原油価格上昇など引き続き不確実要素が数多い。というよりも実は徐々に増えている。この不確実性は、インフレ率の上昇可能性を高めているが、需要サイドのマインド悪化も引き起こすことから政策運営をより難しくしている。

つまり、FRBはインフレ懸念とデフレ懸念の双方をにらみながら今後の政策決定を行う必要があるわけだが、現時点では低インフレを主眼において対応する可能性が高いとされている。それは、FRBがインフレ率の適正水準を+2%(年)と想定し、その判断基準とされているPCEコア指数が+1.5%にとどまり目標の2%を下回っているからである。このインフレ率の低さは、景気減速の兆候を示すインディケーターとされているため、FRBは何としてでも2%に近づけたいと考えていることはほぼ間違いない。そのために金利引き下げを行い物価の上昇を目指すであろう。さらに、パウエル議長も物価が上がりにくい状況を認めているいるため、早めの対応を行う可能性が高そうである。

FRBは政策カードをどこで切るのか

そもそも、現在の政策金利が2.25%〜2.50%であることからFRBの保有する政策カードは限られている。パウエル議長としては、出来れば今回の景気回復局面で4%まで持ち上げたかったのが本音であろう。しかし、2018年末の株価急落を受けて、というか、市場からの催促に負けてハト派になってしまったパウエル議長は、今後もハト派を継続する可能性が高そうである。それは、利上げを見送ったことで市場の信認を得た経験が作用していることと、政策のカードは限られていても前回のように後手にならずに先手として今後利下げするカードを切る可能性が高いと考えられる。

前述の通りFRBが低インフレに対して懸念していることが利下げの一番の理由ではあるが、それ以外にも理由はある。それは、トランプ大統領からのプレッシャーである。大統領は、ことあるごとにいFRBの政策を批判し、政策金利の引き下げを要求している。また、トランプ大統領は自ら指名したパウエル議長についても、経済のてこ入れに十分取り組んでいないと批判している。もし、トランプ大統領は2020年に再選しても、パウエル議長の継続はないと噂されている。

興味深いデータがある。英国バークレイズ銀行の報告によると、FRBが経済減速に対するヘッジ目的で先んじて利下げを行った場合、株価は大幅に二桁程度の上昇をするとしている。一方、景気後退に突入し追いかけるように利下げを実施した場合、株価は大幅に下落すると見ている。この報告は、2001年、2007年の利下げが、景気後退を受けて後追い的に行った結果、株式市場は大幅下落相場になったことを根拠に説明されている。

現在、3カ月物と10年物の米国債利回のイールドカーブが長短が逆転している、逆イールド状態にある。これは、景気後退への可能性についての示唆でしかないものの、それでもFRBの行動を促すには十分である。金融市場における金利示唆に対するFRBの対応が遅れること、つまり今後利下げを行わないことで、景気後退を招くことは現役のセントラルバンカーとして容認するとは到底考えにくく、先んじて利下げを行う可能性が高いと考える。

以上のような状況を踏まえ、冷静に景気見通しと株価見通しの再確認が正しい投資判断につながると考え、政策金利の引き下げ効果と、貿易戦争のマイナス部分で綱引きを行うような相場になることを想定する必要がある。

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渋谷 豊

ファイナンシャルアカデミー総研代表 、ファイナンシャルアカデミー取締役
シティバンク、ソシエテ・ジェネラルのプライベートバンク部門で約13年に渡り富裕層向けサービスを経験し、独立系の資産運用会社で約2年間、資産運用業務に携わる。現在は、ファイナンシャルアカデミーで取締役を務める傍ら、富裕層向けサービスと海外勤務の経験などを活かした、グルーバル経済に関する分析・情報の発信や様々なコンサルティング・アドバイスを行っている。慶応義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。
ファイナンシャルアカデミーグループ総研 http://fagri.jp/
ファイナンシャルアカデミー http://www.f-academy.jp/

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