定年後・シルバー起業は楽ちんでハッピー!《大江英樹インタビュー》

マネラボ編集部

2019.06.20.(木)

「アラ古希」を迎えて、テレビ出演や講演会、本執筆など精力的に活動を続ける大江英樹さん。定年退職後、きらめくキャリアを打ち立てた「シルバースター」だ。大江さんは定年後に起業したが、最初から順調だったわけではない。それでも、定年後起業がハッピーという。

揺れ動く定年前後の気持ちから、再雇用を選択

マネラボ編集部:大江さんは今おいくつですか。

大江英樹(以下大江):67です。アラ古希、あと3年で古希です。アラ還を通り越してアラ古希です。定年して7年経ちますからね。

マネラボ編集部:大江さんは、大手証券の確定拠出年金部長でした。定年後の展開は考えていたのですか。

大江:悩んでいましたね。54、5歳ぐらいまでは、定年になったら絶対に仕事なんかやらないぞと思っていたわけです。60歳になったら絶対辞めて好きなことをやると。ご存じのとおり、証券業界は日本でも有数の超ブラック業界でしたから、こんな状態で60過ぎまで働いたら死んじゃうぞと思ったから、絶対、働きたくなかったんですね。

だけど、だんだん定年が近づいてきて、57、8歳ぐらいになってくると、このままで定年迎えちゃって、あと何もしないというのはどうなのかな、と思いはじめたわけですよ。そこに再雇用制度というのができたので、じゃあ再雇用でとりあえず65歳まで働くかと。

ところが、2、3年前に定年になった先輩たちの動きを見ていると、あんまり覇気を感じられないんですよね。再雇用で、何かやっているんでしょうけど、だけど、ばりばりやっているという空気が伝わってこないんですね。

これはちょっとどうなのかな、やっぱり65歳まで再雇用でいくのは、まずいんじゃないの、1年か2年か、しばらく働いた後に、何か自分のやりたいことをやるか、仕事でも何でもいいからしようかと考え始めたところで定年を迎えたわけです。

シルバー起業は気負わず気楽がいいところ

大江:一応再雇用になったんです。予想していたとおりというか、予想以上につまらなかったわけですよ。まだ再雇用制度が始まったばかりで会社もどう扱ってよいかわからなかったんでしょうね。やっぱりこんなところにいても、つまらないなと思ったものですから、一刻も早く辞めたいと。一応半年間だけは残りました。その半年の間に自分で起業する準備をしたんですよ。起業と言っても、シニアの起業って楽ちんなんですよ。40代とか30代で起業する人は大変ですけど、60代の起業は、本当に楽ですよ。気持ちが全然違いますから。

マネラボ編集部:会社を大きくしなきゃいけないというプレッシャーがないからですか。

大江:規模を大きくしようとしたら、人を雇ったりとか、大変だと思いますけど、リタイアした後は無理せずに自分のやりたいことだけをやればいいんですよ。
サラリーマン時代はそれできない。サラリーマンというのは会社に自分の自由を売り渡す代わりに、身分の安定を買う職業ですから。私もずっと60歳までサラリーマンでしたからね。別にサラリーマンを否定するってことではないし、それはそれで立派な仕事なんですよ。ただ、おもしろくないことは事実なんです。だとすれば、もう60歳からはおもしろおかしく働く方がいいんじゃないかなということですね。

定年を迎え起業を決意。準備期間にしたことは?

マネラボ編集部:再雇用の半年の間にした準備というのは具体的にはどんなことですか。

大江:二つやりました。
一つは会社設立のためのいろんなことをちょっと勉強したということです。会計の基本的なことなどですね。実際には行政書士の方にお願いしてやってもらいましたから、自分がやったことはないんですけど、ただ、誰か人にやってもらうにしても、原理原則みたいなことは知っておかなきゃいけないなと思ったので、会社というものがどういうもので、会計というものはどんなふうになっているのか、財務のこと、そういうことをちょっと勉強したわけですよね。

もう一つは本を書いた。なぜ本を書いたのかというと、自分が会社を辞めて起業しますよね。株式会社を創ったわけですから、私の場合であれば株式会社オフィスリベルタスという名前の会社なんです。ところがこの会社の名前を世の中の人は誰も知らないわけですよ。

前職の大手証券会社なら、世間的には知らない人はいないですね。だからその会社でこういう仕事をやっていますと言ったらそれだけで全部オッケーなんですね。

でも、株式会社オフィスリベルタスなんて言ったって、ただの怪しげな会社じゃないですか。だから、名刺が必要だと思ったんです。一番いい名刺は何かなと思ったら、本だと思ったんですね。ただそうは言っても本もそんなに簡単に出せるものじゃないんですよ。私みたいに60歳で会社を定年した普通の一介のサラリーマンで全く無名のおじさんの本を出してくれる出版社なんかどこもないわけです。もちろん何社かに自分で書いた原稿を持ち込んだりしましたけども、どこも読んですらくれませんでしたね。

本を出す方法は三つあるんですね。一つは商業出版、普通の本の出版ですよね。これが先程いったように非常に難しい。もう一つは自費出版ですね。だけど、自費出版は名刺にならないんですよ。なぜかと言うと、自費出版というのは、言わば「おじいちゃんの半生記」みたいなものですから、100冊か200冊印刷して、知り合いに配るだけのものなんです。物販コードも入っていないので、見た瞬間に自費出版だなと分かりますし。その人が単に道楽でやっているんだねという話なんですね。

三つめ。企画出版という方法なら、やろうと思ったらできるんですね。制作費を払う方法もありますが、初版で印刷する部数の半分を著者が買い取るという方法があります。いくらぐらいなのかなと思って計算してみたら、著者割引で購入したりすると、私が払うお金は75万円だったんですね。

75万円、これを高いか安いかというふうに考えたときに、私は安いと思ったんですよ。なぜなら、この75万円が私の名刺の印刷代だと思ったわけです。
というわけで企画出版で、確定拠出年金の本を出したんです。「確定拠出年金に関するいろんなことをちょっとやっていまして、これ私の書いた本なんですけども」と言ったらそれだけで、これがご専門なんですねってすぐわかるじゃないですか。当時のことですから、私はマスコミにも出ていないし、講演やっているわけでもないし、全くの無名ですよ。それでも本を出しているということは、それなりの人なんだなと思われるわけですね。これこそが私にとっての名刺なんですよ。

ということで、その本を書く、本を作るということをその半年間でやっていました。

起業後、1年。仕事が全く来ない…でも定年後なら平気だ

マネラボ編集部:その時に、講演をしたりとか、今のような未来は想定していたんですか。

大江:いや、全然想定してはないですね。
私は元々、キャリアを生かして確定拠出年金の投資教育の仕事をやりたかったんですよ。特に企業型確定拠出年金は、事業主が必ず従業員に対して投資教育をやらなきゃいけないということが、法律で義務づけられているんですね。多くの場合、それは運営管理機関という役割を果たしている金融機関がやっているんです。だけど、金融機関がやるということは、どうしても我田引水的な話になりますよね。自分のところの商品をもろに売り込むのは禁止されていますからだめですけど、それとなく保険会社は保険に誘導するでしょうし、証券会社は自社の投資信託に誘導しようとするのは当然ですよね。

だけど、私のように全くフリーの立場でそういうことをやるとなったら、それなりに中立性が担保できると思うし、たぶん、そういう要請はいくつかあるんじゃないなかなと思ったんですね。正直言いまして、確定拠出年金の投資教育のコンテンツということに関していうと、めちゃくちゃ自信がありました。

例えばある日本を代表する企業の投資教育のテキストは、私一人で作ったんですよ。いまだにそのテキストは使われていますからね。当時も、いろんなところに持って行っても、非常に高い評価を受けたわけです。だから自分としてはそういうコンテンツを作る自信はあったんですね。なおかつ、かつて自分が現役時代に取引のあった確定拠出年金のクライアントのところを回って、定年退職で今度独立して、投資教育の仕事をやろうと思うので、もし良かったら声をかけてくださいということで、営業して回ったわけです。皆すごく反応いいんですよ。そうですか、独立して投資教育やられるそれはいいですね、ぜひまたそのうちお願いしますわと言って7年経ちますけど、1件もありませんね、今日まで。

マネラボ編集部:意外と厳しいんですね。

大江:もう世の中厳しいですよ。向こうは会社対会社で付き合ってますから、辞めたら冷たいですよ。私は本を書いて、分かりやすく説明できる能力も自分ではあると思っていたんですが、ついにその仕事は1件もこなかったんです、今日まで。

マネラボ編集部:ではどこで軌道修正したんですか。

大江:途方に暮れました。最初の1年ぐらいは、そんなことで何にも仕事は来ないです。だけど、そこが定年退職者のありがたいところで、定年退職したら、みんな仕事をしないわけですから、年金やそういうものをもらって生活をしているわけでしょう。私も別に仕事が何もなくても一応食べるだけは食べられるわけですよ、そんなに贅沢しなければね。普通に電気代払って食費払ってご飯を食べるぐらいのことは、普通にできます。暇なときは図書館に行って本を読んでいればいいし、時間なんていくらでもつぶせますから、仕事が来なければ来ないでもしょうがないかなとか思っていたわけですよ。

趣味のつながり、仕事以外のつながりを大切にする

大江:ただ、一つ心がけたのは、自分の能力とか、キャリアとか、自分がこういう経験を持っていて、こんなことができるんだということを、いろんな人に知ってもらわないと話にならないなと。何のために本を75万円をかけて作って700冊も持っているんだと、もっといろんなところに出ていって、PRしなきゃいかんだろうというふうに自分で思ったものですから、できるだけいろんな会合には出るようにしたんですよ。

会合と言っても、別に仕事の集まりじゃないんですよ。SNSをやっていると、オフ会みたいなのがありますよね。例えば映画を楽しむ会とか、私はフランス語を定年と同時に勉強し始めたので勉強仲間や、京都がすごく好きで京都検定の1級も取ったので、その仲間の集まりとか、いろんな集まりに顔を出すようにしたわけですね。

単に集まっておしゃべりして、飲んで、共通の趣味の人たちの集まりなので、話題も趣味のことです。そうすると、まあ親しくなるじゃないですか。ぽつんとですね「ところで、大江さんは前はどちらにお勤めだったんですか」と、「証券会社ですよ」「そうですか、じゃあ投資のこととか分かりますよね」、「まあまあ分かりますね」。「別のグループで勉強会をやっているんだけど、そこで講師をやってくれませんか」「いいですよ」。「ただね、講師料は払えないんですよ、会場費をみんなで割り勘でやっているだけの自主的な勉強会だから、後の飲み代ぐらいはごちそうしますけど、講師料出せない」「そんなもの別に全然いりませんよ」という話が出てきたんです。これは、いいなと思ったわけですよ。

とにかくギブ・オンリー。その努力は財産(ストック)に変わる

大江:とにかく相手の期待値をはるかに上回る成果を出せば、絶対仕事が来ると思ったわけですよ。だからよし、やってやろうと思って、たった2時間のセミナーのために100時間以上時間をかけて資料を作ったんですね。今ファイナンシャルアカデミーの講義で使用している資料もベースはその頃に作ったものなんですよ。

当時はこういうテーマでやってくれと言われたら、自分ができると思う範囲内であれば、何でも受けていました。そのときの貯金が山ほどあるんですよ。貯金っていうのはお金じゃなくて、コンテンツの貯金が。その後にこんな本出しませんかというお話が、いろんな出版社から来ましたけれども、ジャンルだけでも老後のマネーの話でしょう、起業の話でしょう、それから行動経済学でしょう、確定拠出年金、一般の投資の話、若い人たち向けのお金の話、もういろんなジャンルのものが来るんですよ。そういうものが全部、当時作ったコンテンツが土台になっているんです。私、思ったんですけども、ギブアンドテイクというのは明らかに間違いで、とにかくギブオンリーでいくべきなんですよ。

マネラボ編集部:与え続けるわけですね。

大江:相手は自分のことなんか何も知らないんですから、とにかく知ってもらわなきゃいけないでしょう。知ってもらうためには見返りを求めないで、相手に何か提供しないことには、理解してもらえないじゃないですか。価値を認めてくれたら、初めてお金を出してくれますよ、ということだと思うんですね。

〈後半へ続く〉

その後の大江さんの活躍は、ご存知の通り。マスコミにもコメンテーターとして登場し、各地の講演は引きも切らさない。「キラキラ老後」とも言える原点は、ギブオンリー。定年後のゆとりある時間を使ってこそ可能な戦術と言える。

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出版:総合法令出版
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大江英樹プロフィール
経済コラムニスト、株式会社オフィス・リベルタス代表取締役。ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)、1級FP 技能士、日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員ほか。企業年金、行動経済学、資産運用、セカンドライフ支援の専門家として各種講演や執筆活動等を行う。日経電子版にコラム執筆中。

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