FRBの利下げが景気を押し上げ、株価の高水準を延命する

中原圭介

2019.06.11.(火)

FRBの年内「利下げ」の確率が急上昇

FRBが2019年に入り利上げを停止したことで、実際に米国の景気は大きく下支えされています。現在も過去も不動産(とくに住宅)は景気拡大のエンジン役を果たしていますが、利上げの停止によって米国の長期金利はいっそう下がり、住宅ローン金利も下がったので、下降の傾向にあった住宅関連指標が総じて持ち直してきているのです。

さらに米国の景気にとって大きな援軍となるのは、FRBが利下げを決断するのが近いといわれていることです。2018年の物価上昇率は目標の2%程度を維持していたものの、2019年以降はずっと2%から遠ざかっているからです。パウエル議長もクラリダ副議長も、「景気拡大を持続させるため、適切な行動を取る(=利下げをする)」と表明しています。

そのような状況下で注目されていた米国の5月の雇用統計では、非農業部門の雇用者数が7万5000人増と市場予想の18万5000人増の半分未満にとどまったため、年内の利下げを予想していた市場関係者たちは、利下げの予想時期の前倒しに傾いてきています。その結果、金利先物相場から計算される「フェドウオッチ」では、年内の利下げの確率が100%に接近したばかりか、7月の利下げ確率が84%と急上昇しているのです。

世界の中央銀行がFRBの金融緩和に追随する

FRBが利上げを停止しただけで、各国の中央銀行では政策の自由度が高まり、主要先進国以外では利下げが相次いでいます。今までは主要先進国以外の中央銀行は自国の通貨安を恐れるあまり、利下げの判断がなかなかできなかったわけですが、FRBがさらに踏み込んで利下げに転じれば、主要先進国の中央銀行も金融緩和の拡大を推し進めやすくなります。ECBはFRBに続き、実質的に利上げの停止に追い込まれていますし、日銀が追加緩和を余儀なくさせられるのも時間の問題であるのかもしれません。

6月4日のパウエル議長の「景気拡大を持続させるため、適切な行動を取る(=利下げをする)」という発言を受けて、利下げが強く意識されている今となっては、新しい投資のシナリオを考える段階に入ってきたといえるでしょう。FRBの利下げ(その後の各国の中央銀行の金融緩和も含めて)に加えて、米中貿易戦争の終結という好材料が追随するようになれば、米国株のトリプルトップのチャートは覆され、最高値を更新することが視野に入ってくるからです。

米国の長期金利は7日に一時2.05%まで低下し、2018年11月と比べると優に1.0%超も下落しています。債券利回りの大幅な低下は、景気を下支えするだけでなく、株式の相対的な魅力を高めることにもなります。FRBの利下げに過度に浮かれることはできないと思いながらも、多くの職業投資家は株式の比重を高めざるをえないというわけです。当然のことながら、上述の好材料が揃えば、日経平均も2018年の高値水準である2万4000円程度まで上昇することは十分に考えられます。

米中貿易戦争の行方によっては、米国株は高値を更新する

すべての株式投資家は良い意味でも悪い意味でも、「トランプ政権の不確実性」に向き合わなければなりません。2019年5月には米中貿易戦争の激化といった悪い意味での不確実性に多くの投資家が翻弄されたとは思いますが、私は2019年後半には良い意味での不確実性が株価を押し上げるのではないかと見ています。というのも、トランプ政権は次期大統領選に勝利するために、景気を吹かす政策を実行してくるだろうと予期しているからです。

そういった意味では、米中貿易戦争が続いているあいだは、強気にも弱気にもならず中立的な投資スタンスを保つ一方で、米中貿易戦争が収束するや否や、強気の投資スタンスに転換する柔軟さが求められています。また、「フェドウオッチ」から読み取れる年内の利下げ回数が1回になるのか、2回になるのか、その確率はどのように推移するのか、注意して見ておく必要があります。

世界的な金融緩和は景気減速の下支え役として機能しますが、債務の膨張が止まらないという副作用をもたらします。それに加えて、過去の景気拡大期には債務が減るのが当たり前だったのに対して、今回の景気拡大期には債務の拡大が続いているという異常事態にあります。世界的な債務拡大に歯止めがない状況を見ていると、「今後1年~2年は楽観、その先は総悲観」といった姿勢は変える必然性はないでしょう。

(お知らせ)私のブログ『経済を読む』においては、経済や投資の大事な局面ではその流れを分析していることがあるので、ぜひ参考にしてみてください。
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中原圭介

経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析しており、その予測の正確さには定評がある。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、ファンも多い。 主な著書に『AI×人口減少』『これから日本で起こること』(ともに東洋経済新報社)、『ビジネスで使える 経済予測入門』『シェール革命後の世界勢力図』(ともにダイヤモンド社)、『日本の国難』『お金の神様』(講談社)などがある。東洋経済オンラインで『中原圭介の未来予想図』、マネー現代で『経済ニュースの正しい読み方』、ヤフーで『経済の視点で日本の将来を考える』を好評連載中。

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