【弁護士が伝えたい相続基礎】遺言書を残せば遺族の相続作業がこんなに楽

大山滋郎

2019.05.30.(木)

横浜パートナー法律事務所の大山慈朗です。「相続の基礎」ということで、本当に基礎的な相続について、弁護士としての目線からお伝えします。まずは、「遺言書」のお話です。遺言書は遺族の相続への負担を軽くします。いわば故人の優しさと聡明さの現れです。

子がいない夫婦や、子どもの相続放棄…遺言書があればよかったのにというケース

【例1】子どもがいない夫婦なのに配偶者がすべて財産を受け継げなかった

ある会社の社長さんが亡くなったのですが、その人には子供がいませんでした。亡くなった本人としても、奥さんだけに全ての財産を残すつもりでいたんでしょう。ところが、亡くなった人は兄弟が沢山いたんですね。全部で9人兄弟だそうです。奥さんのほかに、それら兄弟も相続人になりますから、遺産の分割などで、奥さんは大変苦労したそうです。

【例2】子どもが母親のために相続放棄した結果、母親の取り分が減る

この他にも、法律を知らないと、ついやってしまいそうな間違いはいろいろとあります。例えば、父親が亡くなったので、子供たちが母親に全てを相続させようとする場合です。こういうときに、子供達が「相続放棄」をしてしまうこともあります。子供たちが相続放棄をしますと、亡くなった父親の兄弟が相続人になってしまいます。母親に全てを残すことはできなくなるわけです。(こういう場合は、「遺産分割」の形をとる中で、子供達の取り分を事実上ゼロにする必要がありました。)

顧問弁護士でもアドバイスしそびれることも……

私がショックを受けたのは、例1の会社には、顧問弁護士がいたことを知ったときです。本人が亡くなる前に、遺言を作っておいて、遺産がすべて奥さんに行くようにしておいたなら、こんな大変な問題は起きなかったわけです。(兄弟には遺留分がありませんので、遺言で全て奥さんに相続させると決めておきさえすれば、亡くなった社長さんの兄弟は、何も請求できませんでした。)

例1のケースも例2のケースも、こんなことは、法律家にとっては当たり前すぎるほど当たり前で、ことさら話すのも恥ずかしいような内容です。その会社の顧問弁護士も、何となく、顧問先も当然知っているだろうと思いこんで、ことさら注意しようとしなかったのでしょう。
しかし考えてみますと、私自身顧問先の皆さんの相続問題など、特に注意してきておりませんでした。私自身、同じような失敗をしてしまっていたとしても、おかしくなかった気がします。

私は「遺言は作っておいた方が良いですよ。」と、沢山の方たちに勧めてきました。ただ、なかなか自分のこととして、納得してもらえないことが多いんですね。遺言というものを、相続人が仲が悪いときのために作るものと誤解している人も沢山いそうです。

遺言書があるだけで、遺族の相続の作業がぐっと楽に!

「うちは争うことなんかないよ!」「そもそもそんなに財産がないから大丈夫だよ。」なんて言われることもよくあります。確かにそういう場合もあるでしょう。
ただ、遺言というのは、必ずしも争いがなくても作っておいた方が良いのです。何故かというと、相続の手続きがかなり楽になる場合が多いからなんです。

相続の場合、戸籍などの関連書類を集めるのが非常に大変ですし、費用もかかります。亡くなった人の、子供を作れる頃の年齢(12歳頃)からの戸籍を全て取り寄せて、隠し子などいないことを、戸籍上示す必要があります。場合によっては、兄弟や甥姪など、関連する人達の戸籍を、全国から山のように取りよせることもあります。

また、相続人の一人がどこかに行っていて連絡がつかないような場合もあります。海外にいて、必要書類を取り寄せるのが大変なときもあるでしょう。そういう場合であっても、遺言さえあれば、必要書類がなくても相続手続きを進めることができるのです。遺言を作っておくほうが、費用的にも安いですし、簡単です。残された人の、手間暇時間と費用を考えても、遺言を作成しておくことはお勧めです。

争いの種を未然に防ぐために公正証書遺言を

さらに、遺言があることで、争いが起こらないという点も、間違いなくあります。少々不満でも、遺言の内容に逆らってまで争おうという人はそれほどいません。自分の死後に、遺産を巡っての醜い争いが起こらないようにするためにも、やはり遺言はあった方が良さそうです。

遺言には、自分で作るものと(自筆証書遺言)と、公証人に作成してもらうもの(公正証書遺言)とがあります。自分で作るものは、後から「偽造ではないか?」などと疑われ、かえって争いが大きくなる可能性もあります。遺言をする場合は、基本的に公正証書遺言にすると覚えておいた方が良さそうです。

お金の勉強をしたことがありますか?なにから始めたらいいか分からない人へ

最新記事・限定情報はTwitterで配信中♪

大山滋郎

横浜パートナー法律事務所代表弁護士(日本・ニューヨーク州弁護士)。日本企業に14年勤務した経験をもとに、会社の常識、一般人の見地で弁護士業務を行う。自らリスクをとる投資者の立場で不動産投資も積極的に行っている。月2回のメルマガ「企業の常識・弁護士の非常識」でも情報発信中。近著の「経営者の法律知識」はアマゾン音初心者向け法律書で売上1位。http://www.ypartner.com

  • オトクに買い物、「百貨店友の会」とは?

    詳細を見る
  • NISA口座を複数開くことができるってこと知ってた?

    詳細を見る
  • 増え続ける今どきコインランドリーでラク家事主婦が増えるのか

    詳細を見る

こんな記事も読まれています

知恵袋知恵袋 |  生活生活 |  考え方考え方

年金の振込みが6万円以上も減額。それは忘れた頃にやってくる

知恵袋知恵袋 |  生活生活 |  使い方使い方

あなたは時間とお金を無駄にしていませんか?現金派からキャッシュレス派へのすすめ

知恵袋知恵袋 |  生活生活 |  使い方使い方

使わないなんてもったいない!買い物は現金より「クレジットカード」がお得なワケ

節約・貯蓄節約・貯蓄 |  生活生活 |  貯め方貯め方

銀行口座は「2つ」で決まり!貯め上手さんの口座活用術

教室
知恵袋知恵袋 |  転職転職 |  稼ぎ方稼ぎ方

こんなものまで勉強できる?!ハローワークの職業訓練

知恵袋知恵袋 |  生活生活 |  増やし方増やし方

「貯蓄1,000万円」を目指すためにやるべき3つのこと