経済情報のファスティング・ダイエット

渋谷 豊

2019.05.17.(金)

GWが始まる前に資産運用で成功している富裕層の方にGW活用術を聞いてみたところ、「日々の経済動向を追わない」、「数年先に思いをめぐらせる」「歴史を振り返る」といったコメントが多くありました。それを信じて最新の経済情報に極力触れない情報ファスティング・ダイエットを試した結果、ある面白い気づきがありました。

日々の経済動向を追わないことで得られること

私が最初にトライしたのが、一番多くの方から教えてもらった「日々の経済動向を追わない」。連休の初日から実践してみることにしました。私自身、経済ニュースを日々追わないということをここ数十年経験したことがないため、楽しみでもあり不安であったため、新聞を精読せずに電子版のヘッドライン(見出し記事)を読む程度のソフトなファスティング(断食)でトライしてみました。

最初のうちは、ニュースを追わないことで何かあれば取り残されるのでは、市場の変調を見逃すのではないかという不安が頭をよぎったものの、慣れとは恐ろしいもので時間とともにその不安は徐々に薄れていき、なんとも不思議な感じでした。しかし、次第にFOMC後のパウエル議長コメント、英国の地方選挙結果、米国雇用統計の好結果、などいくつか気になるニュースを見かけるとヘッドラインニュースだけでは取り残されているのではという不安が再燃してきました。
それでも、頑張ってその状態を維持していたところ、少しずつですがある変化が生まれ始めました。それは、ヘッドラインだけ生活を送ると「その背景についていつも以上に想像したくなる」というものでした。

例えば、実際にあったBBCニュースのヘッドライン。「英与党、地方選で1,300議席以上失う 最大野党も後退」

英国の地方選挙の結果に関するものです。今回のファスティング前にこのニュースを見たとします。おそらく、「与党の保守党が負けるのは今のゴタゴタだと仕方ないかなぁ、でも、最大野党の労働党も苦戦したんだ。なぜだろうか?」という程度までは想像をしながら記事の本文を読んでいたのではないかと思います。そして、結果の詳細は本文を読み1次情報から3次情報すべてを案外素直に受け止めていたのではないかと思います。

しかし、ヘッドラインニュースだけ生活の結果、「選挙の事前予想からこの2政党の苦戦は指摘されていたけど、どの政党が躍進したんだろうか?」、「欧州議会選挙への影響は?」、「ブレグジットへの影響は?」など、いつも以上に事の背景に対して考えを巡らせてしまいました。そして、連休明け初日にこの選挙結果の詳細を調べ、自分の考えの正当化とズレを修正することができました。

このことから分かったことは、私も含め多くの人は、日頃のニュースや情報の背景をさほど深掘りをすることなく、人のコメントや記事に答えを求めているということでした。経済情報をファスティングすることは、思考を深くする作用があるので、これからはヘッドラインニュースを見る、すぐには本文を読まずに一息入れて自分で思考する、その上で詳細を確認する、自分の思考の修正というサイクルを取り入れることでインプットの質が上がると確信できました。

歴史と振り返り将来に思いを巡らせて得られたこと

さて、日々の情報収集に追われていた時間をファスティングしたことで、時間にゆとりができました。そこで、その空き時間を活用し「歴史を振り返る」という活用術を激動の平成株式市場に当てはめて振り返ってみました。

平成の株式市場といえば、日経平均が最高値を付けたという印象が強いのではないでしょうか。そして、株式市場にとっては暗黒の時代と思っている人も多いかもしれません。平成元年はまさにバブル経済の真っ只中で、日経平均を確認するとまさに一目瞭然。平成最初の1989年1月8日の日経平均株価は3万0,209円(当日休場なので前日の終値)でスタートし、平成最後の2019年4月26日は2万2,258円で終えています。30年で平均株価は約26%も下落し、失われた30年といわれる所以がまさにここにありました。

ただ、これはあくまでも日経平均という指数の数字だけのこと。これで平成の株式市場を暗黒の歴史と判断するのはあまりにも雑なので、少しだけ深掘りしてみると今後の参考になる事実に出会いました。

まず、日本の株式市場の30年は、世界基準のまともな評価を受けるまっとうな市場になったということ。なぜそうかといえば、平成最後の2019年4月26日の日経平均のPERは約12.6倍。これは、世界の株式市場の平均16.1倍と比較すれば若干低いものの英国や香港と同じ水準でありまとも水準といえます。

しかし、1989年(平成元年)年末のPERはとんでもない異常値を記録していました。予想PERベースとはいえ日経平均のPERは約60倍を超えており、その結果史上最高値の38,915円87銭を記録しました。このような高水準のPERが継続するはずがないのは今となれば誰でもわかるのですが、当時は酔狂の最中で危機感はほぼなし。案の定この後バブルが崩壊し2003年4月28日にバブル後最安値7,603円76銭を記録し、13年間で約80%株価が下落しましたことは皆さんご存知のとおりです。

さて、平成30年でみると株価指数だけでみれば約26%も下落した残念な時期。しかし、バブル期の異常的なPERから30年を掛けて異常値的なPER60倍から正常な12.6倍へとまともな評価を受け入れつつ、各上場企業の努力により利益を積み上げてきた結果、日経平均の一株利益が1,762円という利益の伴った国際的な株式市場になったとも言えます。この30年のおかげでバブルの精算を終わらせることができ、そして、そのおかげで令和時代の投資家は、正当な評価を受けた株式市場でおもいぞんぶん取引ができるのだなぁと改めて感じました。

次に、私が思っていた平成に大躍進した企業のイメージと現実が少し異なったことに気づきました。GW前の日経ベリタス記事に平成の時価総額増加率トップ10が掲載されていました。失われた30年ということもあり、たぶん大企業が衰退し、小型企業やIT企業などが躍進しているだろうと思い込んでいましたが実際は異なりました。1位は、日本電産でなんと時価総額の増加率が69.4倍。2位はキーエンスで62.2倍だそうです。それ以外にも、トップテンにはシマノ、ユニ・チャーム、ダイキンなど国際的にも有名企業がランクインしていました。

失われた30年、円高時代の平成でもこれだけの成長企業が数多く存在し、世界的な名声を気づきあげたという事実を改めて再認識できました。今はまだあまり知名度はないけれど、これからのメガトレンドを捉え数多くの日本企業が世界に羽ばたくのだろうと確信が持てたGWになりました。

まったく株をやったことがない人にオススメ!

最新記事・限定情報はTwitterで配信中♪

渋谷 豊

ファイナンシャルアカデミー総研代表 、ファイナンシャルアカデミー取締役
シティバンク、ソシエテ・ジェネラルのプライベートバンク部門で約13年に渡り富裕層向けサービスを経験し、独立系の資産運用会社で約2年間、資産運用業務に携わる。現在は、ファイナンシャルアカデミーで取締役を務める傍ら、富裕層向けサービスと海外勤務の経験などを活かした、グルーバル経済に関する分析・情報の発信や様々なコンサルティング・アドバイスを行っている。慶応義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。
ファイナンシャルアカデミーグループ総研 http://fagri.jp/
ファイナンシャルアカデミー http://www.f-academy.jp/

  • 新しい手続きが必要!?交通系ICカードでポイント還元してもらうには

    詳細を見る
  • FXにおけるGDPと貿易

    詳細を見る
  • 被災した後にかかった医療費はどうなるの?

    詳細を見る

こんな記事も読まれています

株式投資株式投資 |  生活生活 |  考え方考え方

今年こそ株式投資をはじめよう、口座開設にどの証券会社を選んだらいい?

FXFX |  生活生活 |  増やし方増やし方

2018年の為替相場イベント

株式投資株式投資 |  教育・子育て教育・子育て |  増やし方増やし方

シングルマザーに株式投資をおすすめする理由

株式投資株式投資 |  生活生活 |  増やし方増やし方

5年で資産10倍に。株式投資初心者は、いつでも「今」が始めどき。

投資信託・NISA投資信託・NISA |  生活生活 |  考え方考え方

「はじめての人のための3000円投資生活」を読んで家計再生にチャレンジ

株式投資株式投資 |  生活生活 |  増やし方増やし方

株に強い人の日経新聞の読み方