住宅ローン減税が延長! 住宅購入は消費税増税の前後どちらがいい?

森井じゅん

2019.05.10.(金)

2019年10月に控えた消費税増税。8%から10%になるということで、住宅購入を考えている人も多いことでしょう。そこにきて「住宅ローン減税」の延長が決定。結果、増税の前と後でどう変わるのでしょうか?日米で公認会計士の資格を持つ森井じゅんさんに詳しくお聞きしました。

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2019年度の税制改正大綱。住宅関連で変わったことは?

毎年様々な税制改正がありますが、2019年度の改正で大きな注目を集めているのが、住宅ローン控除の適用期間延長です。昨年から改正案として公表されていたものが今年2019年3月に法案として成立しました。

そもそも、住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合などに、税金を減らしてあげましょう、という制度です。具体的には、住宅ローンの年末残高に応じて所得税や住民税負担が減少します。会社員の方など給与所得等で源泉徴収されている場合には、確定申告や年末調整で税金が還付され得した気分になる方も多いでしょう。

この住宅ローン控除ですが、控除額の上限や控除をうけることのできる期間など、これまで何度も見直されてきましたが、2019年さらに改正され、適用期間が延長されることになったのです。実は、今回の住宅ローン控除にかかる税制改正には、消費税増税が大きく関係しています。というのも、2014年、消費税が5%から8%へと引き上げられましたが、それに先立ち、大きな駆け込み需要とそれに伴う価格変動が起きました。

2019年10月には消費税が8%から10%へと引き上げられる予定です。これにより需要や価格の混乱につながらないようにすることが今回の改正の目的となっています。具体的には、増税による消費者の負担増をカバーする形で、現在最大10年の控除期間が3年延長、つまり最大13年間控除を受けることが可能になるのです。

現在の住宅ローン減税の内容は?

上で触れましたが、住宅ローン控除はこれまでに何度も見直しが行われてきました。
そのため、取得・入居等のタイミングにより控除額や期間が異なります。現在2019年5月に、消費税率8%で住宅を取得し入居したケースを考えてみましょう。

この場合、床面積や借入金の返済期間等の要件を満たした場合には、2019年から2028年までの最大10年間控除を受けることができます。

控除額は、住宅借入金等の年末残高により異なりますが、消費税率8%適用の一般住宅では4,000万円を限度としてその残高の1%、一定の要件を満たす認定住宅であれば5,000万円を限度としてその残高の1%となります。

言い換えれば、各年一般住宅で最大440万円、認定住宅で最大50万円の減税になります。

実際に数字を使って見てみましょう。例えば今、2019年5月に、一般住宅を取得し入居します。物件は仮に、土地2,500万円・建物1,500万円の4,000万円としましょう。消費税は建物のみにかかりますので、1,500万円×8%で120万円、合計4,120万円ですね。一部に自己資金を充て、3,000万円の住宅ローンを組んだとします。

そして返済をスタートし、2019年年末の借入残高が2,900万円であったと考えてみましょう。この年末残高の1%、29万円の控除が可能です。お給料から所得税が29万円以上源泉徴収されていれば、確定申告によりこの分まるまる税金が返ってくることになります。

そして2020年の借入残高が2,800万円であれば28万円の控除が可能です。毎年年末の借入残高が100万円ずつ減っていったケースを考えると、2021年の借入残高が2,700万円と仮定し27万円の控除、2022年には借入残高2,600万円で26万円の控除が期待できます。このように2028年で20万円の控除まで、合計245万円の税負担の軽減が可能となります。

ただし、この控除は、実際に納めた所得税額や納めることになる住民税額の一部から控除できる仕組みです。つまり、納めた税額や納めるべき税額が少ない場合には、控除額が大きくても全て控除されるとは限りません。所得税で使い切れなかった控除額は住民税から控除されますが、上限がありますので注意が必要です。

また、個人等が売主である中古物件などを取得した場合には消費税はかかりませんが、住宅ローン控除の上限額が異なります。具体的には、各年最大20万円の10年間が上限です。

新しい住宅ローン減税の内容というのは?

改正後の住宅ローン減税では、2020年12月末までの消費税率10%が適用されるケースについて、その控除期間が10年の控除が13年に延長されます。そして、延長された期間については、消費税率の引き上げ分の影響を上限とした控除となります。

具体的に、今回お話している住宅ローン控除の改正は、控除額にどのような影響を与えるでしょうか。

上と同様、2019年10月に消費税率10%適用・4,000万円で住宅等を取得し入居をスタートしたとしましょう。上と同様、非課税の土地2,500万円と課税対象の建物1,500万円の想定です。増税後、1,500万円の10%、150万円の消費税で合計4,150万円です。駆け込み需要や、その他もろもろの価格変動をいったん度外視した場合、消費税引き上げにより30万円の負担増になりますね。

また、先の例と同様3,000万円の住宅ローンを組み、今年を含め、毎年100万円ずつ借入額の年末残高が減少していくと考えてみましょう。10年間の控除額は現行の控除と同様です。上と同様、245万円の控除額となります。

11年目以降ですが、
借入年末残高の1%
② 住宅取得価額の2%の1/3
のいずれか小さい方、が控除額になります。

つまり、今回のケースで言えば、
2029年は
1900万円×1%=19万円
1500×2%の3分の1=10万円
のいずれか小さい方、つまり②の10万円

2030年は
1800万円×1%=18万円
1500×2%の3分の1=10万円
のいずれか小さい方、②の10万円

2031年は
1700万円×1%=17万円
1500×2%の3分の1=10万円
のいずれか小さい方、②の10万円

延長の3年間で最大30万円の控除を受けることができます。
これは、ちょうど消費税引き上げによる負担増の金額です。

消費税増税により負担が増えてしまった部分は住宅ローン控除として最終的に調整するので、増税後の取得でも損にはなりませんよ、というメッセージともいえるでしょう。新しい税制により控除が大きくなりすぎて既に住宅を購入し住宅ローン控除を受けている方々にも不公平感を与えないような形で、増税による混乱を和らげる方策として設計されています。

ちなみに、消費税のかからない住宅の取得については期間の延長はありません。

その他、住宅購入に関する支援策は?

今回の消費税率引き上げに伴う住宅関連の景気対策として、住宅ローン減税期間延長以外にも、すまい給付金制度や次世代住宅エコポイント制度などがあります。

まず、検討されているのがすまい給付金制度の拡充です。上で触れたように、住宅ローン控除は所得が多く納税額が大きい場合にはメリットになりますが、所得や納税額が少ない場合にはメリットを感じにくい制度です。住宅ローン控除のメリットを感じにくい方へのサポートとしてすまい給付金制度があります。現在のすまい給付金制度は、年収510万円以下等を要件として最大30万円の給付を受けることができるものです。

この制度が、消費税率引き上げに伴い、対象を年収775万円以下へと拡大し、支給額も最大50万円に引き上げる予定です。

一方、住宅エコポイント制度はこれまでも増税時の景気対策として採用されてきたもので、一定の基準を満たす住宅の新築やリフォーム工事等を行った場合にポイントを受け取ることができる制度です。受け取ったポイントは、省エネ商品や商品券等と交換できます。

今回の住宅エコポイント制度は、次世代住宅ポイント制度として公表されており、対象となるのは、2019年10月以降の引き渡しとなり消費税率10%が適用される住宅の新築やリフォームです。

具体的には、一定の基準を満たす住宅の新築では最大35万円相当、リフォームで最大30万円相当のポイントを受け取ることができるようになります。さらに、より高い性能を有する新築住宅や、既存住宅の購入に伴うリフォームではポイントが加算されることになっています。また、40歳未満の若者世帯や子育て世帯にはポイント上限が引き上げられます。

結局、増税前と増税後どっちで住宅を購入すべき?

消費税率引き上げ後は税負担が大きくなるから、増税前に買わないと、と焦っている方もいらっしゃいますし、そういった言葉で住宅の売り込みが行われているのも見聞きします。また、税制や給付金の期限を提示し、この期間に買わないと優遇がうけられませんよ!と煽る広告もあります。

実際、上でご説明したように、2020年12月末までに購入・入居した部分について、住宅ローン控除の延長が決まりました。しかし、その後に購入した場合の制度については発表されていませんし、どうなるかは分かりません。全く控除がなくなる可能性もありますが、逆にもっと手厚い制度になるかもしれません。

いずれにしても、多くの場合住宅の購入は長期にわたる借入を伴うもので、人生で一番大きな買い物にもなり得るものです。また、不動産はのちのち相続等でも問題になったりする部分です。現在の減税や給付金は金額として小さくありませんが、長期的な物件価格の上昇や下落・その後の税金を考えればそう大きいものとも言えません。

焦って売り言葉に惑わされずに、しっかりリスクを検討し、納得してから購入していただきたいと思います。駆け込み需要等で価格が高騰している物件を高値掴みしてしまい、後で後悔することになれば泣くに泣けませんね。

住宅を購入することでどんな制度が利用できるのか、様々な制度を知っておくことは重要ですが、それだけで判断することがないようご注意いただきたいと思います。こうした制度は、人生設計の中で数えきれないほどの要素の中の、あくまでも判断材料の一つとして考えて下さいね。

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森井じゅん

公認会計士/米国ワシントン州公認会計士/税理士/FP。高校を中退後、大検を取得。レイクランド大学ジャパンキャンパスを経てネバダ州立リノ大学に留学。留学中はカジノの経理部で日常経理を担当。一女を出産し帰国後、シングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得。平成26年に森井会計事務所を開設し、税務申告業務及びコンサル業務を行っている。
http://www.horipro.co.jp/moriijun/

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