お子さんが年金で不利益を被らないために親が知っておくべきこと

浜田裕也

2019.03.09.(土)

20歳を過ぎた学生のお子さんが国民年金の保険料を毎月支払うのは大変だと思います。そのため多くの学生が利用するのが学生納付特例制度。原則、手続きは4月以降に毎年する必要があります。ただ、この手続きの時効は2年1カ月。つまり後になってまとめて手続きをすることもできるのです。「毎年手続きするのは面倒だし、後でまとめてすればいいや」そう思うお子さんもいるかもしれませんね。しかしその考え方は危険です。速やかに手続きをしていなかったために不利益を被ってしまうこともあるからです。

学生納付特例の手続きは、毎年速やかにすることが原則

学生の方でも20歳を過ぎると国民年金に加入し、毎月国民年金の保険料を支払うことになります。国民年金の保険料は月額16,340円(2018年度の金額)。学生の方にとって決して安いとは言えない金額だと思います。
そのため、学生の方は国民年金の保険料が猶予される学生納付特例の手続きをするケースが多いです。猶予とは、毎月の保険料が0円になり、しかも未納状態にならない、ということです。学生納付特例、いわゆる学特(ガクトク)の猶予される期間は4月から翌年3月までの1年間。そのため、原則として毎年4月以降に申請書を市区町村役場や年金事務所へ提出することになります。

しかし、中にはうっかり申請書を提出し忘れた、そもそも制度を知らなくて手続きをしていなかった、というような方もいることでしょう。そのような方を救済するため、学特は2年1カ月前までさかのぼって申請することができます。例えば2019年5月に20歳になった方の場合、2年1カ月後の2021年6月までに申請書を提出すれば何とか間に合う、ということです。こう書くと、次のように考える方も出てくるかもしれませんね。「毎年申請するのも面倒だし、後でまとめてすればいいや」確かに2年1カ月を過ぎなければ時効にかからないので、毎年速やかに申請するのと結果は同じになるでしょう。

ですが、後でまとめて学特の申請をしようとする場合、ちょっと覚えておいて欲しいことがあります。それは、学特の申請書を提出するまでは「未納状態になっている」ということです。2年1カ月後にまとめて提出すればいいや、ということであれば、提出するまでの2年1カ月の間は未納のままになっている、ということです。未納のままの状態が長く続いていると、思わぬ不利益を被ることがあるので注意が必要です。

未納期間が多いと障害年金が受け取れないことも

年金の未納期間が多すぎると思わぬ不利益を被ることがあります。その代表的なものとしては、障害年金が受け取れない、というものです。障害年金とは、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方でも受け取ることができる年金です。もちろん、障害年金は誰でももらえるものではなく、様々な条件を満たす必要があります。その条件のひとつに「納付要件」というものがあります。

簡単に言うと、年金の未納が多すぎると障害年金の権利が発生しないこともありますよ、ということです。権利が発生しないということは障害年金がもらえない、ということです。学特を後でまとめて申請しようとした場合、申請するまでは未納状態になっています。未納が多すぎて納付要件ではじかれてしまった、というケースは実際の相談現場でも見受けられます。「学特をさかのぼって申請したら未納状態から猶予に切り替わるんでしょ? 未納にならなくなるから納付要件は大丈夫なんじゃないの? 」と考える方もいるかもしれませんね。しかし、速やかに申請する場合と後でまとめて申請する場合では大きな違いがあるのです。

後出しはダメ! 手続きは速やかにしておく方が望ましい

障害年金の納付要件は「いつの時点で見るのか? 」ということがポイントになります。

いつの時点かというと、その障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師等の診療を受けた日の前日になります。初めて医師等の診察を受けた日が2019年3月20日であれば、その前日の2019年3月19日の時点で未納が多すぎやしないか? を見るのです。ここからは事例でご説明します。仮に21歳の大学生のお子さんがいるとします。学特の申請を毎年するのが面倒なので、20歳から手続きをすることなく22歳になった時に2年分まとめてしようと考えていました。

このお子さんは不運なことにドライブ中に事故にあってしまい、2019年3月20日に病院に運ばれました。手術をしましたが、下半身に障害が残ってしまいました。退院後、親子で役所に行って障害年金の相談をしましたが、未納が多すぎたため権利が発生しません、手続きは出来ません、と言われてしまいました。親御さんは慌てて言いました。「今から学特の手続きをさかのぼってします。なんなら未納部分を今からさかのぼって全部支払います。だから何とかしてください! 」

しかし、それでも駄目でした。初めて診察を受けた日の前日は2019年3月19日。この時点で未納が多いかどうかを見るので、今からさかのぼって学特の申請をしたり、未納部分を支払ったりしても、もう遅い、ということになるのです。厳しいようですが、法律でそうなっています。仮にこのお子さんが障害年金(障害基礎年金)をもらえたとすると、障害等級1級なら年額974,125円、2級なら年額779,300円になりました(いずれも2018年度の金額)。実際に納付要件が足りなかったご相談者からは「まさかこんなことになるとは。

きちんと手続きをしておけばよかった…」というような後悔の言葉を聞くことが多いです。たった1枚の申請書を速やかに提出していなかったために、思わぬ不利益を被ってしまうこともあります。学特の手続きに限ったことではありませんが、行政手続きは速やかにしておく方が無難でしょう。

まとめ

学特の手続きは後でまとめてやろうとせず、面倒でも毎年4月以降になったら速やかに手続きをするようにしましょう。学特の手続きは、できればお子さんご自身でやってもらいたいところです。お子さんももう成人ですから、親御さんが何でもかんでもやってあげるのではなく、お子さんが少しずつ行政手続きの経験を積んでもらう方が望ましいと思われるからです。

ただし、お子さんに任せっきりにしてしまうのもちょっと怖いので、手続きのし忘れがないかどうか、お子さんに一声かけるくらいはしてあげてもよいかもしれませんね。

今の家計にプラス5万の余裕を生む方法を学ぶ

最新記事・限定情報はTwitterで配信中♪

浜田裕也

社会保険労務士
ファイナンシャルプランナー
社会保険労務士会の業務委託で年金相談の実務にも携わるようになり、その相談件数は年間1,000件を超える。複雑な年金制度の解説や具体的な申請の仕方のアドバイスには定評がある。
日本でいちばん簡単な年金の本(洋泉社 第3章監修)
転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話(SB新書 監修)がある。

  • 公的年金だけじゃ足りない? 老後生活の不足分は何でカバーする?

    詳細を見る
  • 株は本当に安全?コツコツと資産運用するなら株がいい理由

    詳細を見る
  • 「老後資金2,000万円貯金」はお金と向き合うことから始めよう

    詳細を見る

こんな記事も読まれています

知恵袋知恵袋 |  生活生活 |  考え方考え方

年金の振込みが6万円以上も減額。それは忘れた頃にやってくる

知恵袋知恵袋 |  生活生活 |  使い方使い方

あなたは時間とお金を無駄にしていませんか?現金派からキャッシュレス派へのすすめ

知恵袋知恵袋 |  生活生活 |  使い方使い方

使わないなんてもったいない!買い物は現金より「クレジットカード」がお得なワケ

節約・貯蓄節約・貯蓄 |  生活生活 |  貯め方貯め方

銀行口座は「2つ」で決まり!貯め上手さんの口座活用術

教室
知恵袋知恵袋 |  転職転職 |  稼ぎ方稼ぎ方

こんなものまで勉強できる?!ハローワークの職業訓練

知恵袋知恵袋 |  生活生活 |  増やし方増やし方

「貯蓄1,000万円」を目指すためにやるべき3つのこと