年金支給開始年齢繰り下げで長生きリスクの備えを

皆さん、「長生きリスク」というワードをご存知でしょうか。一般的に、「長生きリスク」とは、想定していたものより長生きをすることにより、老後に備えた蓄えを使い果たしてしまうことを言います。
日本の平均寿命は男性81.09歳、女性87.26歳です。この平均寿命は、下表のとおり増加し続けており、1990年の調査と比べると男性では約6歳、女性では約5歳も増加しており、これは今後も増加する可能性が高いと考えられます。
【出典】平成 29 年簡易生命表
平均寿命とは、現在0歳の人の理論的な平均生存期間ですので、現在0歳でない人、例えば現在40歳の人などは、更に平均寿命(厳密には、この場合は「平均余命」と言います)は長くなるわけです。
もちろん、平均寿命が長くなることは良いことなのですが、生き続けるということは、それだけ生活費が必要であり、それをまかなうための収入が必要となるわけです。その収入のメインは社会保障の1つである公的年金なのですが、これだけでは足りていないというのが実情なのです。
世帯主が60歳以上の無職世帯(2人以上の世帯)の1ヵ月間の収入と支出は、
・可処分所得 約17.7万円
・消費支出 約23.8万円
と、1ヵ月間に約6.1万円が不足しているわけです。
【出典】家計調査報告(家計収支編)平成29年(2017年)平均速報結果の概要
これを年換算すると6.1×12=73.2万円となり、これが10年間ですと732万円になるわけです。
このように、長生きをすればするほどその不足額は大きくなるわけで、それが「長生きリスク」となるわけです。この老後の収支の不足を事前に認識して、なるべく若い時期からこの「長生きリスク」に備えておく必要があります。
では、このリスクにどうやって備えるか。
1つの方法は、公的年金の支給開始年齢の繰り下げです。
原則的に、公的年金の支給開始年齢は65歳です。この支給開始年齢を最大で70歳まで繰り下げることができます。もちろん、その間は年金を受け取れないのですが、繰り下げ後の年金額は増額されます。ちなみに、65歳から70歳まで5年間繰り下げた場合、1ヵ月あたり0.7%増額されますので、0.7%×12×5=42%も増額されます。
例えば、65歳から公的年金を年間200万円受け取れる人が支給開始年齢を70歳に繰り下げると、70歳から受け取れる年金額は200万円+200万円×0.42=284万円と、年間84万円も増えるわけです。
以下の表は受取年金額の累積額です。
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添田享
日本アクチュアリー会正会員、日本証券アナリスト協会検定会員。1級DCプランナー。アクチュアリー・ゼミナール講師。大学、大学院で数学を専攻し、大学院修了後、アクチュアリー候補生として信託銀行に入行。その後、証券会社、生命保険会社などで一貫してアクチュアリー業務に従事。
アクチュアリーの中でも、生保アクチュアリー、年金アクチュアリー双方で業務経験が豊富である数少ないアクチュアリー。現在は、アクチュアリーの業務経験を活かして、アクチュアリー試験などの金融関連資格の講師、数学の講師など幅広い分野で活躍。
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