「相続はお金持ちの人だけの問題」という認識は危険をまねく

「相続はお金持ちの人にしか関係のないこと」と思っていませんか?死があるところには相続あり。相続は遅かれ早かれ、すべての人に起こる問題です。 “その時”を迎えてから慌てることのないよう、しっかりと対策をしておきましょう。
相続はよく“争族”とも表現されます。それだけ、相続をきっかけにして親族間での争いが勃発することがめずらしくないということです。
このように聞くと、「ウチには奪い合うほどの資産もないからなぁ」と思うかもしれません。しかし実は、相続される財産がそれほど多くなくても“争続”が巻き起こる可能性は十分にあります。
相続をきっかけに、それまで先送りしていた問題が表面化する
例えば、亡くなった親の財産が築30年の自宅とわずかな預貯金のみ、というケース。
一人息子、一人娘であれば否応なしにそのまま相続することになるので問題ないですが、子どもが2人以上となるとそうはいきません。「マイホームも購入済みだし、田舎にある築30年の一軒家をもらっても固定資産税がかかるだけだからいらない」と互いに押し付けあいになるかもしれません。親名義の自宅に同居している場合、親の死後も当然そのまま住めるものと思うかもしれませんが、「預貯金より自宅のほうが資産価値は高いのだから、差額分を現金で欲しい」と兄弟から要求されるかもしれません。
介護の問題も相続と無縁ではありません。「最期を看取るまでに労力もお金も使ったし、妻はそのために仕事も辞めたのだから、その分多めに相続したい」「家賃なしで実家に同居していたのだから、むしろその分を差し引いて相続するのが当然だろう」などと、兄弟で言い分が異なって収拾がつかなくなる可能性は十分にあります。相続をきっかけにそれまで先送りしていた問題が表面化するケースはいくらでもあるのです。
相続税の問題も
もうひとつ、相続時に起こりやすいのが、相続税の問題です。
相続税はそもそも相続される資産の合計額が「基礎控除」を超えた場合にかかってくる仕組みになっていますが、この「基礎控除」が2015年1月から大幅に縮小されました。
それまで、「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」が基礎控除となっていたので、法定相続人が子ども2人の場合には、5,000万円+1,000万円×2人=7,000万円を超える資産がある場合に相続税がかかってきます。しかし、2015年1月以降、この基礎控除が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」へと縮小になりました。つまり、子ども2人が法定相続人の場合、3,000万円+600万円×2人=4,200万円を超えると原則として相続税が課税されるようになったというわけです。
増税前には、相続税が課税されていたのは全相続の4~5%程度にすぎませんでしたが、基礎控除が縮小されて課税対象者は増えました。国税庁の発表によると、2016年中の課税割合は8.1%となっています。
特にあおりを受けやすいのが、都心に自宅を所有しているケース。幸か不幸か、アベノミクスへの期待から都心の地価は上昇傾向にあります。さらに2020年の東京オリンピック開催が決まったことで、これからさらに人と資本が東京に集中してくることが予想されます。
資産が自宅と老後の生活費として貯めたり、退職金として受け取った数千万円の預貯金だけであったりしても相続税が課税される確率はますます高まっていくでしょう。今後の地価動向次第では救済措置が講じられるかもしれませんが、相続がいつやってくるかは誰にも予測できません。納税資金が準備できないために自宅を手放すことになった、親がコツコツと貯めたお金が税金で大きく目減りしたといった事態を避けるためにも、「相続税はお金持ちの人にしか関係のないこと」という考えを捨て、いまのうちから対策を講じておきましょう。
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マネラボ編集部
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