相続は対策の前に「計画」から始めよう

不動産を所有されている方は、一度、謄本を見直して持ち分の確認をしておきたいですね。この先にその不動産をどう活用するか、だれに相続するか、もしくは売却して整理しておく必要もあるかもしれません。子が複数いる、など相続人が複数いる場合は特に重要です。
今回は、会社を経営されている方の相続について、相続は計画が大事であることを実例をもとにお話しします。自分の父が亡くなり(相続が発生)、自分と兄弟は相続税が払えるのか?を心配されご相談にいらっしゃいました。
「相続計画書」作成依頼の事例
お父様の相続が発生した時点で、ご依頼があり、相続計画書を作成しました。資産の全体像と指針を確認できたことで、最善のルートで相続手続きを導くことができた例です。
<事例>
相談者Aさん(長女)は、お父様が経営している会社を譲り受けるにあたり、会社の株式と経営権を相続することになった。お父様は株式と自宅以外の不動産の8割以上を長女が受け継ぐという内容で、10年ほど前に公正証書による遺言を作成している。
【相続発生時の状況】
不動産を複数所有するお父様が他界(お母様はすでに死亡)され、長男、長女、次女の3人の子への相続が発生。
遺言に即して、長男と次女は、それぞれの居住する住宅を相続する。長男は父と同居していたため、小規模住宅減税制度を活用して自宅の評価を低くすることができるが、次女は不動産の価値がそのまま相続税に反映される。
【疑問発生】
長男と次女は、相続税が払えるかどうかが心配。相続税の全体像を把握したい。
公正証書遺言に、遺産分割について明記しているが、遺書の通りの相続により、自宅を相続した長男と次女が相続税が払えない場合は、遺産分割協議書を作成し、配分を変更する手続きを取らなければならない。
【税額試算】
相続計画書によって、相続税の総額を試算できた。
全部の不動産評価額と金融資産(銀行預金と株式)で税額を出す。今回は把握されていなかった銀行預金が出てきたことで、この額で長男と次女の相続税額が賄える算段がついたので、晴れて、遺書通りに分割することに。
・・・ここまで・・・
「相続計画書」の意義とは
「相続計画書」を作成する目的は、
1)所有する財産を把握して、相続税の納税資金を確保する計画を立てる。
2)資金が不足することが判明したら、対策を練る。
3)相続税額を下げるための対策も検討。
相続計画書によって、相続納税額に不足が予見されるときは、
・所有不動産の棚卸しを行い、不要分は売却しキャッシュへ変えておく。
・納税資金の準備のために、生命保険に入る。
など、今のうちから所有資産の組み換えも、検討すべきなのかもしれません。不動産は素晴らしい資産ではありますが、すぐに現金化できないため(流動性が低い資産といいます)、数人で期限内に分割する、というときに不便です。資産分割や納税のために現金を用意しておく対策が重要です。
あとに残る大事な人たちを困らせないために
今回のご相談は、被相続人の子どもの立場のものでしたが、立場を変えて、将来、自分の相続が発生したときに、受け継ぐ相続人が相続税を払えるのかを試算して把握しておくことは、残された相続人の苦労を思えば、最低限の必要なことではないでしょうか。これがしっかり準備できていれば、「相続が争族になる」ことは避けられるのだと思います。
「うちは財産がない」「自宅しかないから揉めることはない」というお声も聞かれますが、分ける財産が自宅だけという方が、争いのもとになりえることを考えてみましょう。被相続人が2人の兄弟で兄が自宅に住み続けるというと、弟は相続分を手にすることができません。現金など他に資産があればそれを弟への相続分とすることもできるでしょうが、自宅だけが財産であると、その自宅を売却し現金化して弟への相続分を分けるということになるケースもあります。親から引きついだ家もなくなり、兄弟間で揉めるようなこともあれば、とても悲しい相続となってしまいます。
終活とは芸能人にだけ必要なことでも、流行で持て囃されるべきものでもありません。ご自分から受け継ぐ人のために、自分の相続の「相続計画書」を作成してみませんか。
注:相続計画書作成については税理士、司法書士と連携し試算をお願いしております。FPの業務範囲を超えるものではありません。
定年後も生きがいを持って仕事や趣味に取り組みたい人にオススメ!
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高橋禎美
ファイナンシャルプランナー/ 一種証券外務員/ パーソナルカラーアドバイザー
大手アパレルメーカーを退職後、FPとして独立。個人FP相談や投資初心者の女性に向けた「はじめての投資」セミナーを開催中。お金とファッションに興味のある30代以上の女性に支持されている。
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