マイホーム資金、親からの援助をどう受け取ったらお得?

木暮ゆい

2018.11.30.(金)

田中さんは、30代。今回自宅マンションを購入することにしました。すると60代の老父母から「このお金を住宅資金の足しにしなさい」と生前贈与を受けました。父から1,500万円、母からは500万円です。ここで発生するのが「贈与税」。受贈者である田中さんはどのような課税方法を選択したらよいのでしょうか?

贈与税の課税方法はどちらを選択する?

今回の田中さんの場合、「住宅取得資金」のため「住宅資金等資金の贈与」を利用できます。

ここでまず考えたいのが、「暦年贈与」を選択するか、「相続時精算課税」を選択するかです。以下にこの制度の主な特徴を記載します。

住宅取得等資金の贈与

・平成33年12月31日契約締結日までの時限的措置。
・贈与を受けた年分の受贈者の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下であること。
・直系尊属からの贈与。
・贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住することまたは同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること。

暦年贈与

基礎控除額は110万円。贈与財産の合計額が110万円をこえた場合に申告義務が生じる。
・贈与税額が10万円超で、納期限までに金銭で納付することが困難な場合に担保を提供することによって延納が可能。

相続時精算課税

・贈与者の年齢が贈与年の1月1日時点で満60歳以上。受贈者は満20歳以上の推定相続人である子(養子、代襲相続人を含むが養子縁組前の贈与は適用不可)と孫。
・贈与財産の累計2,500万円までは非課税。
・非課税分をこえた贈与税は一律20%が課税。
・課税された贈与税分は将来相続が発生したときに支払う贈与税から控除。
・特別控除額の制度を選択した場合、110万円の基礎控除は利用できない。
・一度選択したら、同一の贈与者からの贈与について暦年課税に変更することはできない。
・贈与税額が相続税額より上回っていたときは、差額が還付される。

田中さんはどちらの制度を選べば得になるのでしょうか?

ここが注意 住宅取得等資金の贈与、暦年課税、相続時精算課税

住宅取得等資金の贈与、暦年課税、相続時精算課税、どの選択にしても、注意点があります。

贈与者ごと、受贈者ごとに選べる

贈与者ごとに相続時精算課税、暦年課税を選べます。

田中さんの場合、父親受贈分は相続時精算課税、母親受贈分は暦年課税を選択して贈与税の申告をすることが可能です。

住宅取得等資金の贈与と併用可能

住宅取得等資金の贈与と相続時精算課税、暦年課税は併用可能です。

基礎控除が使えなくなる相続時精算課税

相続時精算課税制度を利用すると、基礎控除の110万円は利用できなくなります。

相続税の申告が必要

住宅取得等資金の贈与、相続時精算課税制度を選択した場合、納付額が0円でも申告が必要です。

相続時精算課税制度の選択の場合、相続した財産に生前贈与を受けた財産を加えて計算

贈与した人が亡くなり相続するときには、相続した財産に生前贈与を受けた財産を加えて相続税を計算します。この計算によっては、相続時精算課税制度を選択した場合、相続税が多額になる可能性もあります。贈与者の資産の相続税の基礎控除(計算式3,000万円+600万円×法定相続人の数)を目安にするとよいと言われています。ただし、暦年課税を選択した場合でも、相続開始前の3年以内に贈与を受けた場合は、相続財産に加算されます。

田中さんの場合はどちらが得か?

田中さんのケースを検討してみましょう。

本人の年収800万円、今回建設する予定の住宅は省エネ住宅です。父からの贈与1,500万円、母からの贈与500万円。財産は、父が田中さんに贈与後の土地建物の相続税評価額、現預金あわせて約1億円、母が田中さんに贈与後の現預金2,000万円です。田中さんのほかに兄弟は1人います。死亡保険金は父2,000万円、母500万円です(受取名義人は父死亡の場合は母、母死亡の場合は父)。特例税率を使用した場合の計算は下記のとおりです。

 

相続時精算課税では納付税額が0円、暦年課税では納付税額父親受贈分が19万円、母親受贈分が0万円という結果になりました。

ここで「相続時精算課税制度」を選択するのが得だ!と飛びついてしまうには問題があります。なぜなら、相続時精算課税制度には、相続した財産に生前贈与を受けた財産を加えて相続税を計算します。このため場合によっては相続税が高額になることもあるのです。

また、暦年課税制度は、毎年贈与をする場合、110万円の控除を利用できますが、相続税精算課税制度はこの方法が使えません。今回は「住宅取得等資金の贈与」のため一回で受け取りましたが、本来ならば数年に分けて暦年課税制度を利用した方が得なこともあります。ただ、贈与者に相続財産がそれほどない場合は相続税が発生しない可能性もあるので、相続税精算課税制度を利用した方が得です。

田中さんは住宅取得等資金の贈与と暦年課税を選択

田中さんの場合は、父母ともまだ60代、しかも両方に財産があり、資産もそこそこあり相続税発生も予測されることから、父母の受贈分ともに住宅取得等資金の非課税制度と暦年課税制度を選択することにしました。 もちろん、贈与税は19万円です 。しかし、父親が亡くなった場合、取得予定財産額1億円の法定相続分でおおまかに計算すると、相続時精算時課税制度を選択した場合の相続税額は201万2500円、暦年課税制度を選択した場合の相続税額は145万円です。贈与税のことを考えても、トータルでは暦年課税制度を選択した方が安くなります。 (贈与後3年以内に死亡した場合を除く)これで頭金が大分カバーされたと田中さんは大喜びで両親に感謝したことは言うまでもありません。

突然の住宅資金の贈与を受けたらどうする?

突然の贈与を受けた場合、自分でも税額をシミュレーションすることは可能です。ただ、税法は法改正が多い分野です。また親の所有する土地や建物の評価額、生命保険・死亡退職金の非課税限度額など相続税については面倒な計算が発生することも多めです。複雑になりそうな場合は、早めに税理士に相談することをおすすめいたします。

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木暮ゆい

株主優待中心の日本株、海外高配当株、債券、投資信託、純金、プラチナ、銀積立、ソーシャルレンディング等に投資中のライター。最近では優待クロスでの株主優待品を取得と、ふるさと納税に夢中です。

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