子のいない夫婦の財産。残された配偶者は遺産の全てを受け取れない?!      

高橋禎美

2017.11.10.(金)

望む望まぬは別として、子のいない夫婦も多くいらっしゃいます。仮にご主人が先立たれたときに、子を持たない場合はすべての財産は妻が受け取ると思っていませんか?

ご主人にご兄弟がいた場合は(亡くなっていれば、その子がいた場合)、ご兄弟にも財産を受け取る権利があるのです。

俳優の唐沢寿明さんと山口智子さんは、とても仲の良い夫婦として有名ですが、お子さんがおりません。唐沢さんが40代になったとき、山口さんからの希望で遺言を書いたと、対談番組で話していたのを見たことがあります。

財産分与で親族が揉めることのないよう、若いうちからお互いに将来について、話し合い、遺言に残しているのは、本当に素晴らしいなと、感心したのを覚えています。

お二人ともに、現在も第一線でご活躍されている俳優ですので、配偶者の遺産がなくとも、それぞれの稼ぎで悠々自適な生活が送れるのは想像しやすいのですが、子のない夫婦はどちらかに相続が発生すると、親が存命の場合、ご兄弟、あるいはその子(甥と姪)が存命の場合などで、遺産の相続人が変わるのです。

今回は「子のない夫婦の財産の遺し方」について記載します。

妻以外の相続人について

子のいない夫婦で、どちらかが先立たれた場合、すべての財産を配偶者が自動的に相続できると勘違いされている方が多いようです。実は子がいない夫婦こそ、きちんとした相続対策が必要なのです。

子のいない夫婦に相続が発生した場合、民法の定める法定相続人及び相続分は、次のようになります。(夫が死亡した場合でみてみます。)

①被相続人の父母などの直系尊属がいる場合は、妻(2/3)と夫の直系尊属(1/3)
②直系尊属がいない場合には、妻(3/4)と夫の兄弟姉妹(1/4)
③直系尊属、兄弟姉妹、姪甥もいない場合は、妻
が、すべての遺産を引き継ぐ。

相続人の死亡により、次の世代である子にその相続分を引き継ぐことを『代襲相続』といいます。既に亡くなっている兄弟姉妹への相続については、一代に限りの代襲相続が発生します。

つまり、夫が亡くなると、妻は夫の遺産を夫の兄弟姉妹と、そして場合によっては甥・姪と分割することもあるのです。

国税庁HP「相続人の範囲と法定相続分」
https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4132.htm  

妻はマイホームに住むことが出来ない?

うちには財産がないから相続で揉めることはないだろう、とは良く聞く話ですが、夫の残す主な財産が自宅だ、という場合は、特に注意が必要です。

遺産が、預貯金のように流動性の高い金融資産であれば、相続分の分割がスムーズに進みますが、マイホームのような不動産は分割が難しく、他の相続人の相続分に対応できずに、揉めるようなことがあります。

2017年現在の税法のもとでは、相続人の協議がまとまらなければ、換価分割といって、妻は残された財産であるマイホームを売却し、現金化して、他の相続人の相続分に対応しなければならないのです。実際、不動産の売却手続きは、必要書類への署名捺印、売却当日の決済立ち会い等、大変な手間がかかる作業で、実行することは大きな負担となります。

誰が相続人になるのかを確認しないでうっかりしていると、妻は住み慣れた家の売却することになり、結果として住み続けることができない、ということにもなりかねません。

では、どのようにすれば妻が財産を得て将来に渡り、住み慣れたマイホームで暮らすことができるのでしょうか。

【この記事を読んだ人におすすめの記事】
終わらない不動産相続問題
気持ちを綴る「エンディングノート」で、親の気持ちを知ろう!

遺言書を使った対処方法

夫が先に亡くなった場合、「妻にすべての財産を相続させる」と遺言書に残すことで妻だけに財産を遺すことが出来て、住み慣れたマイホームは確保されます。

亡くなった人の財産処分の意思が書かれた遺言書で定める指定相続分は、民法の定める法定相続分に優先します。

ただし、配偶者・直系卑属(子、孫、、)・直系尊属(父母、祖父母、、、)には、最低限守られる相続分があり、これを『遺留分』といいますが、たとえば「財産をすべて○○に寄付をする」という遺言があったとしても、配偶者・直系卑属・直系尊属は遺留分を請求することで一定の割合で相続分を取り戻すことができます。

これに対して、民法1028条にあるように、兄弟姉妹(もしくは代襲で甥姪まで)には遺留分が認められていないので、法定相続分で定められた相続分が、遺言により「0」になったとしても文句は言えないのです。

このように、子のいないご夫婦の場合、遺言書で妻にすべての財産を相続させると記載しておくことで、妻の財産を守り、妻が財産を安心して暮らしていくことができるようになります。遺言書の効力で、親族間で余計なトラブルを引き起こすことを回避できるのです。

50代の今から、しっかりと配偶者との話し合った上で、忘れずに遺言を残しておくようにしましょう。

50代のための定年後設計スクールはこちら

最新記事・限定情報はTwitterで配信中♪

高橋禎美

ファイナンシャルプランナー/ 一種証券外務員/ パーソナルカラーアドバイザー。大手アパレルメーカーを退職後、FPとして独立。無料相続もやもや相談会を開催中。

  • お金の学校の社員がガチで100円投資に挑戦したらこうなった。~第51話~

    詳細を見る
  • それって会社都合になるかも! 知らないと損をする失業保険についてのあれこれ

    詳細を見る
  • 投資信託のはじめ方!口座開設から利益が入金されるまでの6ステップ

    詳細を見る