お金がない! 65歳まで待っていられない! 老齢年金の繰上げ受給とは?

浜田裕也

2017.09.19.(火)

読者の皆様の多くは、原則65歳から老齢年金を受け取ることになると思われます。

しかし、実際の相談現場では「65歳まで待っていられない。早く年金が欲しい」というご相談も見受けられます。そのような場合「老齢年金の繰上げ受給」という請求をすることによって、最も早くて60歳から老齢年金を受け取ることができます。繰上げ受給とはどのようなものなのか? 金額はどのくらいになるのか? モデルケースを使って学んでみましょう。

老齢年金を早くもらうことができる繰上げ受給とは?

現在50代の読者の皆様は、原則65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取ることができます。しかし中には次のような方もいらっしゃることでしょう。

・大きな病気をしてしまい、あまり長生きできそうもない
・親の介護で急にお金が必要になってしまった
・60歳以降ずっと失業しており、貯金もなくなりかけてきて生活に困っている、など。

このように「とてもじゃないけど65歳まで待っていられない! 」という方が、実際の相談現場ではたびたび見受けられます。
そのような場合、老齢年金の繰上げ受給の請求という手続きをすることによって、最も早くて60歳から老齢年金をもらうことができます。

ただし、老齢年金が早めにもらえるというメリットがある一方、デメリットもいくつかあります。
デメリットの中で一番影響の大きいものは「老齢年金が減額されてしまう。しかもその減額は一生変わらない」というものです。

繰上げ受給の減額率は1カ月当たり0.5%です。仮に60歳から繰上げ受給の請求をしたとすると、0.5%×60カ月=30%減額されます。なお、繰上げ受給の請求は月単位なので60歳からでなくてもできます。例えば61歳10カ月目でもよいし、63歳4カ月目などでもよく、希望した月から請求できます。61歳10カ月目なら減額率は19%になりますし、63歳4カ月目なら減額率は10%になります。

繰上げ受給をすると年金はどのくらい減額になるのか? モデルケースで比較。

繰上げ受給をした場合、年金はどのくらい減額になるのか? モデルケースで65歳の本来受給と60歳から繰上げ受給した場合で比べてみましょう。

65歳の本来受給の場合、老齢厚生年金が年額100万円、老齢基礎年金が年額60万円もらえるものとしています。
一方、60歳から繰上げ受給をした場合は、0.5%×60カ月=30%減額されてしまうので、老齢厚生年金は年額70万円、老齢基礎年金は年額42万円になってしまいます。しかもこの減額が一生続きます(図参照)。

●60歳繰上げ受給と65歳本来受給のイメージ図

※老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰上げになります。一方だけを繰上げ請求することはできません。
※共済組合等からの老齢厚生年金がある場合は同時に繰上げになります。

繰上げ受給と本来受給。結局どちらが有利なの?

繰上げ受給と65歳の本来受給、結局どちらが有利なのか? という問題は「どのくらい長生きできたか? 」という問に置きかえればわかりやすくなります。
それでは、先程のモデルケースで比較してみましょう(図参照)。
モデルケースでいうと、76歳の時に受取総額が逆転します。
つまり、76歳より前に亡くなってしまったのならば、繰上げ受給をした方が年金は多くもらえていた、ということになります。

一方、76歳より長生きしたのならば、65歳本来受給をした方が年金は多くもらえていた、ということになります。
逆転年齢は繰上げ請求時の年齢や受給できる年金額によって変わりますが、60歳で繰上げ受給の場合、大体76歳~78歳くらいで逆転するようになっています。

以前、相談現場で次のようなことをおっしゃった方がいました。「うちの母は『私は長生きできそうもない。だから繰上げ受給でいいんだ』といって60歳で繰上げ受給の請求をしました。しかし、まさか本人も100歳近くまで長生きするとは思ってもみなかったようでした…。母は亡くなるまでずっと損した、損した、と嘆いていました…」

繰上げ受給の請求は、法律上、手続き後に取り消すことができません。公的年金は老後の生活費の大部分を占めるので、安易な選択はしないようにしましょう。
繰上げ受給の請求をする前には、必ず年金事務所などで試算をしてもらい、その他の細かい注意点も確認するようにしてくださいね。

また、長生きの場合は医療費にも注意が必要です。詳しくは、『長生きすればするほど費用がかかる!? 定年後の医療費のリアル』をご覧ください。

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浜田裕也

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー。社会保険労務士会の業務委託で年金相談の実務にも携わるようになり、その相談件数は年間1,000件を超える。複雑な年金制度の解説や具体的な申請の仕方のアドバイスには定評がある。著書に「転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話」(SB新書 著・監修)、「日本でいちばん簡単な年金の本」(洋泉社 第3章監修)がある。

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