早く知っておきたい!正しい贈与のやり方

森井じゅん

2017.11.30.(木)

相続税・贈与税の仕組みが変わったことで特に注目されるようになった「生前贈与」。もしもの時になってからではもう遅い!元気なうちから考えておきたい賢い贈与のやり方を、日米で公認会計士の資格を持つ森井じゅんさんにお聞きしました。

2015年の贈与税の改正によって何が変わったのでしょうか?

平成27年1月1日施行の税制改正では、贈与税の税率区分が変更になり、税率構造が変わるとともに最高税率が引き上げられました。

一方、20歳以上の者が父母や祖父母から贈与を受けた財産を「特例贈与財産」とし、一般の贈与財産の税率よりも低い特例税率を適用することとなりました。(基礎控除後の課税価格が300万円超4500万以下の場合)

また、相続時精算課税の適用対象者が拡大されました。具体的には65歳以上とされていた贈与者は改正後60歳以上となりました。また、受益者は20歳以上の推定相続人(一般的には子)であったのに対し、改正後には20歳以上の孫も含める事となりました。

さらに、教育資金の一括贈与に係る非課税措置の期間延長も決定されました。

高額贈与に対しての最高税率は引き上げられたものの、全体としては日本の資産の多くを保有する高齢者が資産を現役世代へ移転すること促進する改正と言えるでしょう。

毎年、基礎控除の枠内で贈与していく方法とは?

毎年1月1日から12月31日までの暦年に、贈与を受けた財産の価額を合計し、その金額が基礎控除である110万円以下であれば贈与税はかかりません。
つまり、12月に110万円の贈与があり、翌月の1月に110万円の贈与があっても暦年贈与の基礎控除の範囲内であるため相続税はかかりません。これを暦年贈与と言います。暦年贈与で贈与税が発生しない場合には、基本的に申告書の提出も必要ありません。

暦年贈与についていくつか注意すべき点があります。

まず、一人一年110万円以内、と言いますが、110万円はもらった人単位で考えます。つまり、一人が祖父から110万円祖母から110万円の贈与を受けた場合には基礎控除を超えるため、贈与税の申告と納税が必要となります。

また、贈与にあたっては現金の手渡しも考えられますが、いつ、いくら贈与したのかがきちんと証明できるように銀行口座へ振り込む方が望ましいでしょう。
現金での暦年贈与を続けていると客観的な記録が残らないため、一括で贈与しているとみなされ、贈与税がかかってしまう事も。

問題となりやすいのが、子供名義の通帳に親が贈与として振込をおこなっているものの、贈与者が通帳や印鑑を管理しているケースです。
贈与契約では贈与者と受益者の合意により行うものです。そういった状況で親の自由にできる資産として、親が亡くなった時には相続財産として相続税がかかることもあります。

さらに、連年贈与、たとえば毎年100万円ずつ10年間決まった日に贈与するといったケースも注意が必要です。贈与者と受益者が10年間にわたって100万円ずつ贈与するという契約をしていた、つまり当初に1000万円の贈与契約があったものとして贈与税が課税されることもあります。

そういった税務署の判断を避けるために、贈与するごとに贈与契約書を残すことも有効です。また、あえて基礎控除を上回る贈与を行い贈与税の申告・納税を行う等の対策も考えられます。

新設された「結婚・子育て資金」の一括贈与のやり方は?

「結婚・子育て資金」の一括贈与とは、20歳から49歳までの受贈者の結婚・子育て資金に充てるため、直系尊属(父母・祖父母等)が金銭を拠出し、金融機関に信託等を行った場合には贈与税は非課税になる、というものです。結婚資金と出産資金・子育て資金では合計1000万円、結婚資金のみでは300万円までが非課税となります。

拠出時、受益者は「結婚・子育て資金非課税申告書」という書類を金融機関を経由して税務署に提出します。とはいえ、金融機関がすべて手続をおこなってくれるため、受益者本人が直接税務署に行く必要はありません。

拠出されたお金は金融機関に管理されています。お金を引き出す際には、結婚や子育て資金に使われた事が分かる領収書等を金融機関に提出する必要があります。

対象となる使途の範囲は、結婚資金については、婚礼・住居・引越に要する費用等です。子育て資金は、妊娠・出産に要する費用、育児(子どもの医療費、保育料等)に要する費用などが含まれます。

受益者が50歳になるまでに資金を使い切れなかった場合には、その時点で贈与税の課税価格に参入されます。また、受益者が50歳になる前だったとしても、贈与者が亡くなってしまえば、その時点で残っている額には相続税がかかってしまうので注意が必要です。

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期間延長になった「教育資金」の一括贈与のやり方は?

「教育資金」の一括贈与とは、30歳未満の受贈者の教育資金に充てるため、直系尊属(父母・祖父母等)が金銭を拠出し、金融機関に信託等を行った場合には贈与税は非課税になる、というものです。非課税の枠は1500万円です。

拠出時の手続は「結婚・子育て資金」の一括贈与と同様、金融機関が行ってくれます。

「結婚・子育て資金」の一括贈与と同じように、拠出されたお金は金融機関に管理されており、教育資金に使ったという領収書等を提出することでお金を引き出すことができます。先に利用目的を示しお金を引き出すことができる金融機関もありますが、いずれにしても教育資金にその資金を利用したことが分かる領収書等を提出しなければなりません。

ちなみに、学校等に直接支払うものについては1500万円が非課税となりますが、学校等以外に支払うものについては500万円が限度となります。

しかし、入学検定料や入学金は対象になるものの願書についての費用は対象外であったり、健康診断は対象になるものの予防接種は原則として対象にならないなど、対象になるものとならないものが細かく分かれており注意が必要です。また、奨学金の返還金は非課税の対象外になります。

「教育資金」の一括贈与後、教育資金を使い切る前に贈与者が亡くなっても相続税がかかることはありません。しかし、受益者が30歳になっても使い切れなかった部分については贈与税の課税価格に参入されます。

そもそも教育資金を必要な都度贈与する場合は非課税というのは本当?

相続税法では、扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与は、通常必要と認められるものについては、贈与税の対象外としています。

つまり、結婚資金であれ、子育てのための生活費であれ、教育資金であれ、教育費を支払いの都度贈与するのであれば、贈与税の対象外。つまり、一括で贈与しなくても必要に応じてその都度贈与しても非課税です。税はかかりません。

祖父母が孫の学費のために息子に贈与しても非課税ですか?

上記と同様、祖父母からのお金が、孫の生活や学校の入学金・授業料などに充てられる場合には数百万円であっても贈与税の対象にはなりません。(贈与税が非課税になるのは、夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者で扶養義務者には直系の祖父母も含まれます)

ちなみに、入学祝い等の金品は、社交上の必要によるもので贈与をした者と贈与を受けた者との関係等に照らして、社会通念上相当と認められるものについては、贈与税の課税対象となりません。

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教育資金の贈与はどこまで報告の義務がある?

上の回答にもありますが、扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち、通常必要と認められるものについては、扶養の対象として、贈与税はかかりません。

つまり、配偶者や直系親族、兄弟姉妹、その他一定の親族の間において、生活に必要な金銭をその都度やり取りすることに関して、贈与税に関する問題はありません。また、そういった生活資金等のやり取りについて、報告や申告の義務もありません。

ただし、受け取った金銭が預貯金となっていたり、株式や家屋の購入費用に充てられた場合などには、贈与税の課税対象となりますのでご注意ください。

税務署が個人の少額の現金の受け渡しまで全て把握できるか、といえば正直できないでしょう。ただし、税務署は税務調査の対象となった納税者の預金口座を調査する権限を持っていますし、住宅の購入などに伴う登記変更などの情報は税務署に連絡されます。

その他資産の取得や売買なども然りです。そのため、現金以外の取引から現金の流れを推測することはある程度可能であると思われます。

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森井じゅん

公認会計士/米国ワシントン州公認会計士/税理士/FP。高校を中退後、大検を取得。レイクランド大学ジャパンキャンパスを経てネバダ州立リノ大学に留学。留学中はカジノの経理部で日常経理を担当。一女を出産し帰国後、シングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得。平成26年に森井会計事務所を開設し、税務申告業務及びコンサル業務を行っている。http://www.horipro.co.jp/moriijun/

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