サラリーマン遺族の生活保障としては不十分? ~遺族厚生年金~

益山真一

2017.08.03.(木)

会社員等が死亡した場合、遺族基礎年金のほか遺族厚生年金が支給されます。
遺族厚生年金は、遺族基礎年金よりも遺族の範囲は広いものの、死亡者と遺族によっては年齢制限があるために支給されない場合があったり、現役の会社員等が死亡した場合と以前会社員等であった者が死亡した場合では要件や支給額が異なります。

2017年8月から少し受給要件が変わるため、今回は遺族厚生年金について解説します。
(もう1つの遺族基礎年金については『子育て世代の万一のセーフティネット「遺族基礎年金」』をご覧ください)

現役会社員等の支給要件は緩いが、
以前会社員等の支給要件は厳しい

遺族厚生年金は厚生年金の被保険者である者が死亡した場合等(以下、短期要件)や老齢厚生年金の受給権者や老齢厚生年金の受給資格を満たしている者が死亡した場合等(以下、長期要件)に支給される、とされていました。

簡単に言えば、短期要件は主に現役会社員等が死亡した場合等、長期要件は以前会社員等であった者が死亡した場合をいいます。

2017年8月から老齢基礎年金、老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上から10年以上に短縮されましたが、遺族厚生年金における「老齢厚生年金の受給権者」「老齢厚生年金の受給資格を満たしている者」の受給資格期間は、従来と変わらず25年以上必要となります。

結果として、長期要件は「老齢厚生年金の受給権者であり、老齢基礎年金における受給資格期間が25年以上ある者」「老齢厚生年金の受給資格を満たす者のうち、老齢基礎年金における受給資格期間が25年以上ある者」となります(ややこしいですね……)。

ちなみに、筆者も以前会社員であり、老齢厚生年金の受給資格を満たし(厚生年金に1月以上加入等)、老齢基礎年金における受給資格期間が25年以上あることから、長期要件を満たしていますので、死亡すると、私の妻に少額ですが遺族厚生年金が支給されます。

受給できる遺族の範囲は広いが妻以外には年齢制限あり

遺族厚生年金を受給できる遺族は、死亡した者に生計を維持されていた者(遺族の収入が850万円未満)のうち、以下の優先順位の高い者に支給されます。

第1順位 妻・子・夫
第2順位 父母
第3順位 孫
第4順位 祖父母

つまり、遺族厚生年金は死亡した者の兄弟姉妹には支給されません。
また、先順位の遺族が受給権を取得した場合、後順位の者は受給権を取得できません。

また、支給期間については以下のような制限が設けられています。
・死亡当時、子のない30歳未満の妻の場合は5年の有期給付(30歳以上の場合や子がいる場合は終身給付)
・夫や祖父母は死亡当時に55歳以上であることが要件とされ、支給開始は60歳から
(夫が遺族厚生年金を受給できる場合は、60歳未満でも支給される例外あり)
・子や孫は原則18歳到達年度末まで

支給額は老齢厚生年金の4分の3
短期要件の場合は300月保証

遺族厚生年金は、老齢厚生年金(報酬比例部分)を基に計算され、原則として死亡時点で計算した報酬比例部分の年金額の4分の3となります。
50歳未満の人に毎年誕生月に送られる「ねんきん定期便」の場合、報酬比例部分の年金額に4分の3を乗じることで求められます。

一方、50歳以上の人に毎年誕生月に送られる「ねんきん定期便」は、現状が60歳まで継続した場合の数値で記載されていますので、現時点の加入月数や平均報酬に割り戻して計算する必要があります。

なお、現役会社員等が死亡した場合で、厚生年金の被保険者月数が300月に満たない場合は300月働いていたものとして年金額が計算されます。

例えば、厚生年金の被保険者月数が200月である50歳未満の現役会社員(短期要件)が死亡した場合の遺族厚生年金はおおむね
「ねんきん定期便記載の報酬比例部分の年金額×3/4×300月/200月」となります。
言い換えると、長期要件に該当する者が死亡し、遺族に支給される遺族厚生年金には300月の最低保証はなく、実際の加入月数で計算されます。

例えば、厚生年金の被保険者月数が200月である50歳未満の元会社員・現自営業である者(長期要件)が死亡した場合の遺族厚生年金はおおむね
「ねんきん定期便記載の報酬比例部分の年金額×3/4」となります。

実際に計算してみると、遺族厚生年金の金額は生活費として決して十分ではありません。「遺族が仕事をする」「生命保険に加入する」「貯蓄や投資で準備する」等の手当てが必要です。

遺族の生活費の確保は、世帯主にとって大きな「リスクマネジメント」の1つ。まずは、遺族厚生年金の受給要件を満たすのか、遺族厚生年金を受給できる遺族がいるのかを確認し、毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」で遺族厚生年金の金額を試算することから始めてみてはいかがでしょうか?

 

益山真一

ファイナンシャルアカデミー認定講師。「お金の教養スクール」で教壇にたつ。家計改善を得意とするファイナンシャルプランナー。國學院大學経済学部の非常勤講師も勤め、研修・セミナーの実績も多数。経済、景気等への感度が高く、株式投資では18ヶ月連続増益の経験もある。

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