レイ・クロックがマクドナルドを不動産業といった理由 〜映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」より〜

ルウ・ハイアン

2017.07.25.(火)

前回の『マクドナルドを世界一大きく成長させた男の話①〜映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」より〜』では、マクドナルドの創業者(ファウンダー)であるレイ・クロックがどのようにして、一大ハンバーガー帝国を作り上げたかを途中までお話しました。今回はその続きです。

さて、レイ・クロックが最初に行なっていた商売の本質は仲介ビジネスで、マクドナルド兄弟が開発したノウハウをフランチャイジー(出店者)に提供し、その見返りに売り上げから一定の割合をマクドナルド兄弟に支払い、その残りがレイの取り分でした。このビジネスモデルでレイ・クロックが利益を増やしていくためには、店舗数を拡大し、売り上げを向上させていくしかありません。全体のパイを大きくすれば、自分が食べる比率は小さくても、食べる量は増えるという考え方です。

キャッシュフローは常にギリギリ……

しかし、このような拡大路線はちょっとしたことでつまづきやすいものです。ビジネス拡大に資金繰りが間に合わないこともよくあります。もともと、レイ・クロックがマクドナルドのフランチャイズビジネスを行うようになったのは52歳の頃で、成功を確信していたレイ・クロックは、生き急ぐような猛スピードでマクドナルドをアメリカの西海岸に次々と開店させていきました。

そうして新たに開店したマクドナルドの評判は上々でしたが、キャッシュフローは常にギリギリで、あるとき、担保の不足により銀行から融資を断られピンチに陥ってしまいました。(ある年のマクドナルドの売り上げは7500万ドルもあったのに、レイ・クロックの利益は13万9000ドルだったそうです。比率としては0.2%もありません。これはこの規模の売り上げを誇る企業の経営者としては、とても低い水準です)

崖っぷちのレイを救った一言

このピンチに見舞われたとき、しょぼくれて銀行から出たレイに話しかける人物がいました。
彼は、レイに助言をします。
「あなたは成功の鍵を握っているのに、それに気づいていない。あなたが売っているのは実はハンバーガーじゃありませんよ。成功の鍵を握っているのは美味しいハンバーガーでもアツアツのポテトじゃない」
ピンチに陥っていたレイは藁にもすがる思いで彼にその答えを問いただしましす。

すると彼は「君の資産は店そのもの」と答えました。

その男が注目したのは、マクドナルドの不動産としての価値でした。
まず、マクドナルドハンバーガーのビジネスとしての価値は申し分ない。1店舗平均年間150万ドルを稼ぐビジネスは、他にはそうそうない。もし、ある土地があって、そこにマクドナルドがオープンすると知っていて融資しない銀行はない。
つまり、最初に土地を購入する資金を銀行に融資をしてもらえば、担保はその土地をあてがえばよいのだから、実質必要なくなる、というコペルニクス的発想の転換を提案してきたのでした。そして、さらにこのアイデアの画期的なポイントは、その土地にレイ・クロック自身がマクドナルドを建設し、フランチャイジーにリースしろ、というのだ。

この画期的な方法は、マクドナルドというアメリカ西海岸の一企業チェーンが世界で一番の食品企業チェーンに成長する過程には必要なレバレッジでした。レイ・クロックはそれを時間のレバレッジと名付けました。

本来なら、開業資金を貯めるのには、それなりの時間がかかるのに、このやり方を選択すれば、良い場所と良いマネージャーがいさえすれば、時間のロスなく、銀行が資金を用意してくれて、次々とお店を開店することができます。銀行へのローンは、貸し付けたリースの返済費用からまかなえば、レイの懐は一切痛みません。このアイデアはレイ・クロックに利益の安定と富の増大をもたらしました。このビジネスの方法は、レイ・クロック自身にも発見が大きかったらしく、次のように振り返っています。

マクドナルドの候補地を探すのは、創造欲が満たされる最も楽しい行為だ。候補地に初めて訪れた時点では、そこには何もない。ただ平地しかなく、誰の役にも立っていない。そこに、我々が店を建て、オペレーターがビジネスを始める。そして、50人から100人のスタッフを雇い、ゴミ収集人、造園技師、肉やパンやジャガイモを供給する人々に新しい仕事が生まれる。こうして何もない平地から、1年に100万ドルを生み出すビジネスができるのだ。それが現実するのを目の当たりにするたびに、非常に喜ばしい気持ちになる。
(レイ・クロック自伝 「成功はゴミ箱のなかに」より引用)

マクドナルドは、ハンバーガーを売っているのではない、ということに気づいたことで、レイ・クロックは大きな富を築くことに成功しました。マクドナルドはレストランではなく不動産業であるというレイ・クロックの言葉は、こうした意味があるのです。

レイが見つけた「ビジネスで成功する秘訣」とは

フランチャイズが大部分であっても、自らの会社とリース契約を結べば、店舗ごとの売り上げを徹底的に管理できます。マニュアル通りに行いさえすれば、必ず成功すると確信していたレイ・クロックは「どこに行っても同じ味、同じサービスを受けられる」マクドナルドビジネスを世界中に広げられるビジネスだと確信して、死ぬまで拡大路線を突き進みました。

ビジネスで成功する秘訣とは、自分の仕事の長所を正確に見極め、それを飽きるほど正確にやり続けることにあるといいます。レイ・クロックは晩年にして、忠実にそれを行い世界一の成功を手に収めたのです。

映画「ザ・ファウンダー」は、毀誉褒貶の激しい独裁者であるレイ・クロックの光と陰を正確に描写した傑作伝記映画です。日本では7/29より角川シネマ系で公開予定です。

ルウ・ハイアン

文筆家・歴史家として各メディアに寄稿。投資家としての側面も持ち、投資界隈の話題には事欠かない。また経済のトピックを誰にでもわかるように話す技術には定評がある。映画や書籍、または海外ゴシップにも精通している。日本語の他に、中国語・英語も堪能。

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