66歳年下の仲良し秘書が語る 瀬戸内寂聴さん的・若返る秘密の生き方

ナカセコ エミコ

2018.04.20.(金)

もう◯歳だから、と、誰に言われたわけでもないのに、自分で自分にブレーキをかけてしまうことは、どの世代でもあるのかもしれません。いくつになっても書き続けて、たくさん笑って、たくさん食べる96歳の瀬戸内寂聴さん。長く元気にイキイキと生きるコツを、瀬尾まなほ著『おちゃめに100歳! 寂聴さん』 より、ご紹介します。

どんなときも希望を忘れない

身を削って、命が燃え尽きるかの如く、書き続ける。小説の魅力とは。先生に聞いてみた。「小説家とは文章で表す芸術家」と教えてくれた。ないものを文字で表す。読み手を意識して書くことはなく、先生はいつも自分のために自分の好きなように書いてきたと言う。「先生って明るいよね。わたしはネガティブだから先生が羨ましい」と言うと、「確かにそうかもね。どんな状態であろうが、絶望って感じたことないのよね。基本楽観的なの。死ぬわけじゃないしって思うのよね」と先生は言う。確かに先生はいつも希望を忘れてはいなかった。<59ページより引用>

著者は、誰もが知る国民的作家であり、僧侶である瀬戸内寂聴さんの秘書。特筆すべきは、この二人の間柄。66歳も年が離れた女友達のような、祖母と孫のような、フランクで愛にあふれた関係であるということです。

著者は、初めて寂庵へ面接に訪れた頃、寂聴さんの仕事も著書も何も知らなかったのだとか。しかし、著者のまっすぐな内面性を見抜いて、寂聴さんは採用を決めたようです。現在の著者は、主に寂聴さんの作家としての活動のサポートをメインにしつつ、住まいの掃除から食事、そして体調と気持ちを汲んだマネメジメントを行っています。若い世代の流行りを臆することなく90代の寂聴さんにすすめる著者。そんな彼女の存在が、寂聴さんの背中を押し続け、毎日の笑いと若さを生んでいるようです。

明るく見える著者は、意外なナイーブさを心に抱えて生きています。今の若者に多い心のナイーブさは、ときにネガティブ思考に通じるものですが、著者は忌憚なく自分に自信が持てない苦しさを寂聴さんに相談します。それを聞いた寂聴さんは、楽観的に生きるあり方を著者に語ります。過去における壮絶な人生において、何度も自殺を考えたことがある寂聴さん。それでも、書くという道が人生を支えてくれて、今になって振り返れば、希望を忘れないでいることが大事であったということを。

一生、現役の作家として、飽きることなく書き、周りからも書くことを望まれる現在だからこそ分かることを、著者に語ってくれます。生きてきた時代背景がまったく違う、寂聴さんと著者は、率直に話し、理解しあうことで、お互いに知恵や若さを与えあっているようです。

お肉を食べないと書けない

2013年3月、それまで10年以上勤めていた事務所のスタッフが25歳のわたし一人を残して一斉に辞めた「春の革命」の後、先生のスケジュール管理から、食事作りまで一手に引き受けることになった。中略

二人で過ごす時間が増えて、先生の味覚がちょっとずつ変わっていることを感じる。周りの人からは、「先生、若返ったね」と言われる。わたしの若いエネルギーを吸収して、食べて、笑って、眠っているから? <86・89~90ページより引用>

2013年、寂庵では、長く寂聴さんに仕えていたスタッフ数人が、自分たちを食べさせるためにいつまでも寂聴さんを働かせて無理をさせてはいけないという配慮から、一気に退職するという事態がおきたのだとか。これを機に、大学を卒業してまだ数年の著者は、事務作業だけではなく、一手にいろいろな役割を担うことになります。

著者にいろいろな担当が変わってからの一番の変化は、食生活。高齢になってから二度の大病を経験している寂聴さんのために、一日二度の食事では、野菜をよく摂ってもらうように心掛けているのだとか。しかし、ただそれだけではなく、若者の食生活を寂聴さんに楽しんでもらうようにしているようです。たとえば、出会ったばかりの頃、寂聴さんの朝食はその年齢らしく、基本的に和食だったけれど、パンの朝食を提案してみたり。プレーンなものから、生地がチョコレート入りであったり、夏にはパイナップルの果肉やココナッツが織り込まれているパンにしてみたり。

僧侶とはいっても、輪袈裟を外せば肉を食べることも可能なので、寂聴さんにとって肉は食生活において欠かせないといいます。「肉を食べないと、書けない」というほどの肉食女子である寂聴さんは、もともと好きなものを今でもしっかり、たくさん食べる。そして、若い世代がすすめてくれるものも、拒否せずに好奇心を持ってチャレンジ。楽しく、美味しく、新しいものもたくさん食べる食生活が、元気の秘訣のようです。 

「若き日にバラを摘め」の精神で一生現役

寂聴さんは著書や講和においても、「若き日にバラを摘め」と、ことあるごとに語るのだとか。怪我をしても、若いときならばすぐに治る、失敗を恐れずに自分の思うままに生きなさいという教えであるといいます。「書きたいと思うことがある間は、ずっと書いていたい。最期も机に向かってペンを持って死んでいたい。まなほが起こしに来たら、死んでいる私を見つけて驚くの」このようにいう寂聴さんは、好奇心を持ち続けて、いつまでもワクワクしているからこそ、いまも輝いているのかもしれません。人はつい、その年齢らしく、そして、もう年だからと自分自身に暗示をかけて、チャレンジすることをやめてしまいがちです。しかし、どんどん新しいことに挑戦し続けることで、人生をいつまでも現役で送れるのかもしれません。

タイトル:おちゃめに100歳! 寂聴さん
著者:瀬尾まなほ
発行:光文社
定価:1,404円(税込)

【前回の記事はこちら】
ポイントは「4つのK」 定年後を楽園にする準備

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ナカセコ エミコ

(株)FILAGE(フィラージュ)代表。書評家&ブックコーディネーター。元・銀行員であり図書館司書。現在は、女性のキャリア・ライフスタイルを中心とした書評と絵本の執筆、選書を行っている。【女性限定】「働く女性のための選書サービス」“季節の本屋さん”を運営中。https://www.filage.co/

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