元気なうちに親と話しておきたい介護のこと

村田くみ

2017.05.23.(火)

親にもしものことが起きたとき、なんでもお金で対処しようと思っていると、蓄えがなくなってしまいます。少ない支出で手厚いサービスを得るためにも、ニュースに敏感になり、面倒くさがらないで介護の情報を入手しましょう。

 

介護離職の”予備軍”はこんなにいる

ゴールデンウィークや年末年始、お盆に実家に帰るたびに、親の老いを感じ、「介護が必要になったらどうしよう」と、案じる人が多いと思います。5年に1度の調査、総務省の「平成24年就業構造基本調査」によると、会社勤めをしながら介護をしている人は約240万人で、介護・看護のために離職した人(2011年〜2012年9月)は、10・1万人でした。また、仕事を辞めようと思っている人のなかで、介護をしている人は約42万人。介護離職の“予備軍”です。予備軍が介護離職をしたら、大きな社会問題になります。

 

情報を入手した人とそうでない人とは大きな“差”が生じる

そこで、政府は「介護離職ゼロ」を打ち出しましたが、終の住処である「特別養護老人ホーム」(特養)への入所要件が厳しくなったり、月々支払う介護サービスの負担が増えたりして、介護しづらい状況になっています。介護や医療に関する情報に敏感になり、地元の自治体でどのようなサービスが使えるのかといった、情報を入手した人と、そうでない人とは大きな“差”が生じます。“差”とは、金銭的な負担に直結しますので、「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、介護がスタートする前から十分な知識を得ておくだけでなく、最新のニュースにも敏感になっておくことが大事です。

 

帰省したときに親と話しておきたいこと

介護がスタートしたときのために、色々と準備をしておくことがありますが、親が元気なうちに話しておきたいことのひとつに「お金の問題」があります。いきなり、親の資産を尋ねると「相続を狙っているのか」と思われてしまうので、聞くときのタイミングや聞き方が大事になってきますが、ここで知っておいてほしいことは、「公的年金などの収入が一定以上ある人は負担が増える」ということです。

 

3年に1度改正の度に“負担増”

3年に1度の介護保険制度の改正で、2015年8月から第1号被保険者(65歳以上)のうち、収入から控除などを引いた合計所得が単身世帯で280万円、2人以上の世帯346万円以上の場合、利用した介護保険サービスの自己負担は原則2割になりました。18年の改正では、さらに単身で年収383万円以上の人は、自己負担は3割になることが確実視されています。預貯金を含めた金融資産を持っている人にも、負担増が課せられています。単身で1,000万円以上、別々に暮らしていても夫婦で2,000万円以上持っていると、「減免措置」の対象から外れてしまいました。

 

1,000万円以上の資産を持っている人は注意

たとえば、特別養護老人ホーム(特養)のユニット型個室に入所した場合、1日あたりの食費の自己負担分は1,380円、光熱費などの居住費は1,970円で、これが住民税非課税世帯になると所得に応じて、食費300〜650円、居住費は820〜1,310円と安く済むように設定されています。そこで、妻が特養に入っていた場合、年金収入がある夫と妻が世帯分離をして、妻の住民票を特養に移すと、妻の年金収入で入所費用が計算されるので、介護の費用が少なく済んだのですが、新しい制度のもとでは、住民票を特養に移していても、夫の年金収入と合算して入所費用が計算されるので、思わぬ負担増に陥る人が相次いだのです。

 

負担増のしわ寄せは子どもに来る

負担増のしわ寄せは子どもに来ます。親の収入でまかなえなければ、子どもの収入から補填する、お金が足りなくなれば特養を出て自宅に戻り家族が世話をする、介護の人手が足りないので子どもは会社を辞めざるを得なくなったーーといった悪循環が起きています。子どもが親の介護のために会社を辞めてしまったら、親を看取った後、どうやって生きていったらよいのでしょうか。そもそも2000年に介護保険制度が施行された目的は、家族の負担を減らすためだったはずですが、17年が過ぎた今、サービスを使いたくても使えない、といったミスマッチな状況に陥っています。団塊の世代が後期高齢者になる2025年頃には、医療や介護など社会保障費が急増することを見据えて、政府はさらに負担を増やしてサービスをカットしてくることが予想されています。

 

帰省したときにやっておくこと

親だけでなく、将来自分が介護を受けるようになったとき、なすすべがないといった“介護難民”にならないためにも、元気なうちから、介護保険制度で使えるサービスや自治体で実施しているサービスなどの情報を、労を惜しまず入手する習慣をつけておきましょう。そこで、まず実家に帰ったときにやっておきたいことは、親の居住区の「地域包括支援センター」の場所を知っておくこと。地域包括支援センターとは、中学校区にひとつ設けられている介護のよろず相談所。相談は無料で、主任ケアマネジャーなど資格を持つ職員が、高齢者本人や家族の相談に対応してくれます。高齢者福祉のサービス内容は自治体によって異なりますので、ここで介護保険や高齢者サービスに関する「しおり」や事業者ガイドブックの「ハートページ」などの無料の小冊子をもらっておき、介護保険制度の仕組みを理解しておきましょう。

 

村田くみ

ジャーナリスト/ファイナンシャル・プランナー 1995年毎日新聞社入社。「サンデー毎日」所属。2011年よりフリーに。08年から母親の介護をしながら、ライター、ファイナンシャル・プランナー(AFP)として多くの週刊誌等で執筆。おもに経済、社会保障、マネー関連の記事を担当。16年1月一般社団法人介護離職防止対策促進機構(KABS)のアドバイザーに就任。著書に『介護破産』(KADOKAWA)、『書き込み式! 親の入院・介護・なくなった時に備えておく情報ノート』(翔泳社)、『おひとりさま介護』(河出書房新社)など。

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