年金に上乗せで全員から徴収ーー『こども保険』が制度化したら

森井じゅん

2017.11.08.(水)

3月末に発表された新しい社会保障制度「こども保険」。一体どのような制度なのでしょうか?年金・医療・介護などとの違いとは一体?
日米で公認会計士の資格を持つ森井じゅんさんに詳しくお聞きしました。

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「こども保険」とはどのようなものなのでしょうか?

「こども保険」とは、今年3月末に政府が提言した仕組みです。働く人や企業などから保険料を徴収し、社会全体で子育て世代を支援する新たな仕組みとして創設が議論されています。

年金、医療、介護には社会保険があります。つまり、老後や病気や介護といったリスクに対して社会全体で支える仕組みがあります。一方、喫緊の課題であるとされる子育てについては、子供子どもが必要な保育や教育等を受けられないリスクに対応する仕組みが十分に整っていませんいないと考えられています。そういった子育てに対するリスクを社会全体で支えるという観点から「こども保険」の創設が提言されているのです。

現在議論されている「こども保険」は、健康保険料や公的年金保険料のように保険料を徴収し、子育て世帯の負担の軽減に充てることが想定されています。具体的には、今の厚生年金や国民年金の保険料にこども保険料のような形で上乗せすることで、加入者と事業主から広く保険料を徴収し財源を確保します。こうして徴収した財源は、小学校入学前の子どもに対する児童手当を増額したり、待機児童解消のための保育料整備などに利用されるとしています。今の厚生年金や国民年金の保険料に上乗せする形で、働く人と企業などから幅広く保険料を徴収します。徴収した財源は、小学校入学前の子どもがいる世帯に対し、児童手当に上乗せして支給したり、待機児童の解消に向けて保育所の整備に充てたりするとしています。

保育園や幼稚園の平均保育料は月1万~3万円程度のため、現行の児童手当と合わせて、幼児教育の実質無償化が実現するとも考えられています。

具体的に徴収される額、支給される額というのは?

具体的に想定されている「こども保険」は、厚生年金及び国民年金の保険料に0.1%上乗せし、3,400億円を確保しようとしています。0.1%上乗せというと、いくらくらいの負担があるでしょうか。

たとえば、厚生年金の場合、30代の年収400万円程度の世帯では月240円、自営業者が加入する国民年金の保険料では月160円程度が加算されることになります。その予算では、未就学の児童への手当てとして月5,000円の支給が可能になると考えられています。

この保険料率は、段階的に各0.5%まで引き上げられることも検討されています。
各家庭の負担は、年収400万円の世帯で月1200円程度、自営業者は月830円程度になります。上乗せ料率が0.5%となれば1兆7,000億円程度が確保できることが想定されており、未就学児への手当は1人当たり月2万5千円まで増額できると考えられています。

こども保険の対象となる世帯と言いますと?

こども保険の保険料を納めることになるのは、厚生年金や国民年金の保険料を納める人、つまり働いている人や企業などの雇用主です。

一方、こども保険として徴収した財源は、小学校入学前の子どもがいる世帯に支給すると想定されています。

「こども保険」は、まだ構想段階であり、使いみちなど制度の詳細が決まったわけではありません。今後検討されていくことになります。

改めて現在の社会保障制度をまとめると?

日本の現在の社会保険には、公的年金、医療保険、介護保険等があります。

社会保険の特徴として、国民は加入が義務付けられていることが挙げられます。
国や自治体が、加入者である国民から保険料を徴収し、老後や病気や介護について金銭やサービスなど一定の給付を行うことで個々のリスクに対応する制度です。

例えば、医療保険の枠組みのなかでは、病気やケガをしたとき健康保険証を提示し医療サービスをうけた際には7割から10割の公的負担があります。また、医療費が高額となった場合には一定の自己負担限度を超えた分、つまり高額療養費の払い戻しを受ける事ができます。さらに、傷病手当金や出産育児一時金、出産手当金、埋葬料や葬祭費などの支給もあります。

公的年金の枠組みでは、積み立てた金額に応じて老後に年金が受け取れるほか、病気やケガで障害を負った場合に受け取れる障害年金や、加入者本人が死亡した時に遺族が年金を受け取れる遺族年金などがあります。

介護保険は、介護が必要と認定された人が介護を受ける場合、実際の介護サービスや自己負担の軽減があります。

社会保険の制度は、みんなで保険料としてを拠出した財源をにより個人のリスクに対応するに利用するものです。そして、徴収する保険料は支払い能力により負担が増減し、給付額は必要に応じて決まるあると同時に、保険料は支払い能力により保険料や給付額がかわるといという所得の再配分機能 もあるのです。

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こども保険の課題

こども保険は、現在の想定として小学校入学前の児童がいる家庭が給付の対象と考えられています。つまり、誰でも給付が受けられるわけではなく、保険料の負担者と受益者が一致しません。また、子育て自体がリスクなのか、といった認識の曖昧さもあり、保険という枠組みが適切なのか考えていく必要があります。

また、こども保険という提言の背景として、現在の社会保障制度が高齢者への給付に偏っているという認識があります。提言において、こども保険は「世代間公平のための新たなフレームワーク」とされていますが、こども保険の保険料は働き盛りの世代に負担が集中し、公的年金の負担をしない高齢者の負担はありません。

さらに、厚生年金保険料は上限が決まっていますので、富裕層は相対的に保険料の負担が軽くなります。つまり、所得の再配分機能についても疑問が残ります。

少子化問題が深刻化する日本においては、子どもを社会で育てていくという考え方は重要になってくるでしょう。教育国債か税金か保険か、という財源の議論が先行していますが、これから日本という国がどのように子育てをしてくか、という観点から社会の仕組みを考えて直していく時期に来ているのではないでしょうか。

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森井じゅん

公認会計士/米国ワシントン州公認会計士/税理士/FP/明治大学専門職大学院教育補助講師
高校を中退後、大検を取得。レイクランド大学ジャパンキャンパスを経てネバダ州立リノ大学に留学。留学中はカジノの経理部で日常経理を担当。一女を出産し帰国後、シングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得。平成26年に森井会計事務所を開設し、税務申告業務及びコンサル業務を行っている。http://www.horipro.co.jp/moriijun/

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