お金を預けた相手が逮捕! なのにお金は戻らない? (刑事と民事の壁)

波戸岡光太

2017.09.27.(水)
taiho

Tさんは、いつものようにスマホの画面をスクロールしていました。
何気なく眺めるニュース記事。注目記事とか、なんか面白いのあるかな…

「!!M氏が逮捕??」

Tさんの指が止まりました。ゆっくり記事の全文を読み進めます。

ーーM氏って、あのM氏か? 僕が30万円預けてるあの彼か? 彼が捕まったって? 投資メンバー募集を装って、被害金額1000万円だって? 僕が預けた30万円はどうなるんだ? あのメンバー募集の話は嘘だったのか!

じわっと嫌な汗が出てくるのを、Tさんは感じていました。
それでも自分を落ち着かせ、Tさんは考え直します。

ーーいや待てよ、捕まったってことは、警察が全て押さえたってことだから、あとでちゃんと被害弁償はされるよな。それが法治国家ってもんだろ…。警察からきっと連絡くるんだろうな。

しかし、何日待っても、だれからも連絡はきません。

ーーこれはどうなってるんだ。何も進まないぞ。そういえば、民事と刑事は別だとかいう話を聞いたことがある。今回でいうと、どういうことなんだろう?

Tさんのようなご相談を受けることはよくあります。
「悪いことをして警察に捕まったんだから、あとはお金が返ってくるのを待つだけだ」とか、「相手がお金を返さないんだったら警察に何とかしてもらおう」というご相談者の考え方は、たしかにごく自然な発想ともいえます。
ところが、現実ではそうすんなりといかないのが悩みどころです。

今回、皆様に知っていただきたいのは「民事と刑事の壁」です。「民事事件と刑事事件は別モノ」ということです。

民事事件は、民間人同士のトラブルをどう解決するかという、「横」の関係の問題です。
刑事事件は、国が民間人をどう処罰するかという、「縦」の関係の問題です。
民事事件は、お互いの「公平性」とか「権利の実現」を目的としています。
刑事事件は、国が民間人を適切に「処罰」して、「社会秩序を回復」することを目的としています。

警察が民間人を逮捕したところで、それは処罰を目的とするので(刑事)、被害者が自分の権利をどう回復するかについて(民事)、警察が積極的に動くことはありません。これを、警察の「民事不介入」といいます。

ですから、相手が逮捕されても、自動的にお金が返ってくるわけではなく、被害者は引き続き自分の努力でお金の返還を求めていかなければなりません。また、返還を求めたところで相手がお金を使って持っていなければ、「ない袖は振れない」という言葉のとおり、回収できない危険が大きいと言わざるをえません。

こんな踏んだり蹴ったりなんて、被害者にとってはほんとに理不尽です…。
ただ、相手が捕まった場合、その人に「弁護人」がつく場合があります。

これはひとつのチャンスととらえることができます。

というのは、捕まった相手にとっては、処罰が決まる前に被害弁償をすませた方が処罰が軽くなる可能性が高いので、できるだけ早く被害弁償をすませたいという動機が働きます。弁護人を務める弁護士も、その努力をすることで刑を軽くしたい思っています。

ですので、もし弁護人から連絡があり、被害弁償の提案があった場合には、ぜひ交渉に臨んでみることをお勧めします。そして、最大限の金額提示を求めてみることをお勧めします。

ただ、相手がお金を持っていない場合などは、あまり無理を要求して話を決裂させないようにすることも大切です。というのは、弁護人は処罰が決まるまでの任務であることがほとんどで、処罰が決まってしまった後は任務を終え、対応してくれないことが多いからです。そうすると、お金は戻らず怒りも収まらずという事態も起きてしまいます。

ですので、どのくらいの金額や内容で交渉し折り合いをつければよいかについては、慎重に検討することをお勧めします。弁護士に相談することで大きな手助けを得られることもあるでしょう。

このように、刑事と民事は別モノであり、お金を回収する面での被害回復はあくまでご自身の努力で行わなければなりません。そして、相手が刑罰を軽くしたいと思っているうちに交渉を進めるなど、刑事とうまくリンクさせながら民事の解決を目指すことも大切です。

民事と刑事の壁をどう乗り越えるか、被害者にとって大変な現実は続きます。また、そこをお力添えできるのが弁護士の強みともいえます。

波戸岡光太

弁護士。アクト法律事務所。
「困っている人を助けたい」-少年時代からの熱い思いを胸に、2007年に弁護士となる。経営者とビジネスパーソンをもりたてるパートナーとして、契約トラブルや債権回収問題の予防・解決を中心に取り組む。
経営者向けコーチングスキルも兼ね備え、依頼者と伴走しつねに最高の解決を目指す。
東京都港区赤坂3-9-18赤坂見附KITAYAMAビル3階
http://www.hatooka.jp

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