保険会社で活躍する専門家 「アクチュアリー」の仕事とは?

添田享

2017.08.30.(水)

「アクチュアリー」とは、どんな仕事?

「アクチュアリー」という言葉を耳にする機会はあると思いますが、具体的に何かと聞かれると、知っている人の方が少ないでしょう。

簡単に申しますと、将来の不確実性を分析、評価する専門家のことを言います。

例えば、最も身近に感じるのものとして、生命保険商品があげられます。将来起こりうる「死」という不確実な事象があり、その事象について、例えば、

・男性の死亡率は、女性の死亡率より高い
・高齢の死亡率は、若齢の死亡率より高い

などを適確に把握し、それに基づき、将来の給付に必要な保険料を評価(決定)するわけです。

このような業務に従事している人たちのことをアクチュアリーというわけですが、一般的には、公益社団法人日本アクチュアリー会(以下「日本アクチュアリー会」)の実施する試験に合格し、正会員になった人のことを「アクチュアリー」といいます。
試験については次回詳しくお話しさせて頂きます。

活躍の場は保険会社や信託銀行、監査法人などさまざま

アクチュアリーは、おもに生命保険会社損害保険会社信託銀行に所属しています(下表参照)。

出典:日本アクチュアリー会ホームページ http://www.actuaries.jp/actuary/fields.html

「信託銀行は保険と関係ないのでは」と思う方もいらっしゃると思いますが、信託銀行では年金信託という形で企業年金や国民年金基金の年金資産を管理・運用等を受託しております。企業年金や国民年金基金の掛金の算定にアクチュアリーの知識が必要であるため、信託銀行においてもアクチュアリーが活躍しているわけです。

多くはありませんが、その他にも、再保険会社、コンサルティング会社、監査法人などにもアクチュアリーは所属しています。

アクチュアリーは大きく3つに分かれる

アクチュアリーは、大きくは「生保アクチュアリー」「損保アクチュアリー」「年金アクチュアリー」に分かれます。次回お話しさせて頂く日本アクチュアリー会の試験では、専門知識を問う2次試験において「生保」「損保」「年金」の3コースに分かれています。

「生保アクチュアリー」は、定期保険や医療保険などの保険料を、被保険者の方の死亡率や入院の発生率などを適正に評価して、それらに基づき保険料を決定したり、責任準備金を評価したりします。最近では、死亡以外の保障、例えば、特定の疾病(例えば悪性新生物)に診断されたときに給付されるような商品も多く販売されており、将来の不確実性を分析する能力がより求められています。というのは、死亡と比べて、このような疾病の発生は、医療技術の革新や生活習慣の変化などにより発生の傾向が変わってくると考えられるためです。また、生命保険会社の商品は保険期間が終身であるものも少なくなく、極端な話、100年後におけるこれらの発生率も合理的に予測する必要があるわけです。

最近は「人生100年時代」と言われており、生涯の医療にかかるお金はシビアに考えなければならない時代です。詳しくは『長生きすればするほど費用がかかる!?定年後の医療費のリアル』をあわせてご覧ください。

「損保アクチュアリー」は、自動車保険や火災保険など、交通事故や自然災害などを対象として、その発生率を適正に評価して保険料を決定したりします。ただし、生保と異なり、実際に自然災害が発生した場合、その支払保険金額の規模が大きくなることもあり、そのリスク管理も重要な任務となっています。

「年金アクチュアリー」は、従業員の方の退職率や昇給率を適正に評価して、企業年金の掛金を決定したりします。また、退職給付会計導入後は、企業年金のみでなく、企業の退職一時金制度を含めた退職給付制度全体について、退職給付債務や退職給付費用の計算も行っています。その他には、人事制度の改訂に合わせて退職給付制度を変更される企業に対して、退職給付制度の設計のコンサルティングを行うこともあります。

このように、「生保アクチュアリー」「損保アクチュアリー」「年金アクチュアリー」とも、種類は違えど、将来の不確実性を分析するということは共通しています。このような分析には専門的な知識が必要であり、日本アクチュアリー会では、アクチュアリーに必要な専門知識および問題解決能力を有しているかを判定することを目的として、毎年試験を実施しています。

【次回の記事はこちら】
合格ラインは何点!?難関アクチュアリー試験について

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添田享

日本アクチュアリー会正会員、日本証券アナリスト協会検定会員。アクチュアリー・ゼミナール講師。大学、大学院で数学を専攻し、大学院修了後、アクチュアリー候補生として信託銀行に入行。その後、証券会社、生命保険会社などで一貫してアクチュアリー業務に従事。
アクチュアリーの中でも、生保アクチュアリー、年金アクチュアリー双方で業務経験が豊富である数少ないアクチュアリー。現在は、アクチュアリーの業務経験を活かして、アクチュアリー試験などの金融関連資格の講師、数学の講師など幅広い分野で活躍。

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