長生きすればするほど費用がかかる!? 定年後の医療費のリアル

黒田尚子

2017.08.21.(月)

定年間近になると、リタイア後の生活費や子どもや孫の将来のこと、親の介護のことなど、さまざまな心配事が出てくるものです。
なかでも、多くの人が不安に感じているのが、自分や家族の健康や病気のこと。
年代的に、周囲で大病を患ったという人の話を聞くと他人事とは思えません。さらに、どれくらい医療費がかかるのかも気になりますよね?

今回は、そんな定年後の医療費のリアルな現実についてお伝えしたいと思います。

定年前に比べると医療費は約2.6~3.3倍にも増える!

まず定年後の医療費はどれくらいかかるのでしょうか?
厚生労働省の発表によると、一人当たりの国民医療費は、45~65歳未満が約28万円に対し、65歳以上では約72万円、2.57倍もアップします。
さらに70歳以上が約82万円、75歳以上が約91万円と確実に増加し、定年前の医療費と比較すると、75歳以降は、3.25倍にも膨れ上がることがわかります。
病院でたくさんのお年寄りをお見かけすると、きっと医療費もかかるんだろうなと想像はつきますが、これほど費用負担がアップするとは驚きですね。

<参考>
厚生労働省「平成26年度 国民医療費の概況」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/14/dl/kekka.pdf

生涯医療費2,600万円の半分以上が70歳以上でかかっている

また7月に発表された「平成28年簡易生命表」によると、平均寿命が男性80.98歳、女性87.14歳となり、前年に比べて男性は0.23 年、女性は0.15 年上回りました。
平成2年の平均寿命は男性75.92歳、女性81.90歳でしたので、今と比較すると、男女とも5年以上も寿命が延びていることがわかります。
今や「人生100年」時代。これから老後を迎える私たちは、さらに長生きする可能性がありそうです。
一人あたりの生涯医療費2,600万円のうち、半分以上が70歳以上でかかるというデータもあり、長生きすればするほど、医療費がかさむのは避けられそうにありません。

<参考>
厚生労働省「平成28年簡易生命表の概況」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life16/dl/life16-02.pdf
厚生労働省「生涯医療費(平成26年度)」
https://goo.gl/qCsVHm

定年後の医療費等は自己負担1~3割で受けられる

高齢者の医療費がかさむといっても、現役時代と同じく病院で健康保険証を提示して、保険適用の治療を受けた場合、自己負担は、かかった医療費や薬剤費の1~3割負担で済みます。自己負担の割合は、以下の通りです。
・70歳未満の人は3割
・70歳から74歳までの人は2割(平成26年4月1日以降満70歳となる人が対象。それ以前は1割)、現役並み所得者は3割
・75歳以上の人は1割、現役並み所得者は3割

現役世代と負担が変わらない「現役並み所得者」とは?

ここで、是非とも覚えておきたいのが「現役並み所得者」というキーワードです。
これは、公的な医療保険や介護保険などを利用する上で、良く出てくる用語のひとつ。70歳以上で、年金やそれ以外の収入など、現役世代と同じくらいの所得のある被保険者およびその被扶養者を指します。
具体的な目安は、「課税所得145万円以上、かつ単身世帯の場合が年収383万円以上、二人世帯で年収520万円以上」です。
もともと、70歳以上の高齢者の自己負担はすべて定額負担でした。それが平成13年1月から1割負担→平成14年10月から現役並み所得者2割負担→平成18年10月から現役並み所得者3割負担→平成20年4月から現行制度と、徐々に高齢者へ負担を求める範囲が広がってきています。

70歳以上の「高額療養費制度」改正で、住民税課税世帯は負担増に

高額な医療費といえば、忘れてならないのは、高額療養費制度(1ヵ月の医療費が一定の限度額を超えた場合、超過分が戻ってくる公的制度)です。
ところが、改正によって、今年と来年の二段階で、70歳以上の高額療養費にかかる負担限度額が引き上げられることになっています。
対象となるのは、一般や現役並み所得者といった住民税非課税世帯以外で、約1,400万人が負担増となるようです。
例えば、年収370万円未満で住民税を支払っている人の場合、今年8月から、現行では外来12,000円が14,000円に引き上げられ、この金額を超えないと、医療費は戻ってきません。ただし、慢性疾患などで頻繁に通院する方に配慮し、新たに年144,000円の年間上限が設けられます。
来年8月には月額上限がさらにアップ。現役並み所得者は、年収によって3区分に細分化された上、外来の優遇措置が廃止され、現役世代と同じようなしくみに変わります。

負担が増えそうなら、将来の医療費に備える準備を

いずれも、「高齢者といえども、経済的余裕があるのであれば、それ相応の負担をしてもらいましょう」という世帯間格差を解消するための措置といえますが、住民税を支払っている世帯を中心に、医療費が増えていくにも関わらず、定年後も現役時代と同じような自己負担が求められています。
どれくらい年金がもらえるかは、「ねんきん定期便」などで確認することができますので、まずはチェックしてみてください。将来の医療費に備えて、民間保険に加入するなり、預貯金に励むなり、早めの準備をお勧めします。


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黒田尚子

ファイナンシャル・プランナー/消費生活専門相談員資格/乳がん体験者コーディネーター。1998年FPとして独立。2009年末に乳がん告知を受け、「がんとお金の本」(Bkc)を上梓。自らの体験から、がんなど病気に対するおカネ・ココロ・カラダの備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力している。著書に「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実」(セールス手帖社)など多数。黒田尚子FP事務所 http://www.naoko-kuroda.com/

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